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外出禁止のカリフォルニアより 休校中の子供たちの学びの継続について

休校と外出禁止も7週目に入ろうとしています。

主人は仕事柄出勤し続けられていて、買い物も1人で引き受けてくれているので、本当にどこにも行かず息子と2人引きこもる毎日です。

合言葉は、フレキシビリティーとハピネス。
今私たちにできることは、家にいること。よく食べよく寝てよく笑って、体を動かして免疫力を上げること。

とはいえ、ずっと家にいて同居の家族以外との接触を避けなければならないというのは、そう簡単なことではありません。
先日は、散歩の途中でキンダーガーテンの時の担任の先生に会いました。普段だったら大喜びでハグしに行くところですが、当然そうもいかず。道のあっち側とこっち側に離れたまま「元気にしてる?」としばらく話しただけで、なんだか切なくなりました。
また、息子の友達のママから、「母の具合が悪くて看病しなければならず、息子たちを2人で留守番させている」という話を聞きました。「だったら子供たち預かるよ!」と言いたいのに、それもできないのです...。とても悲しいことです。

こういう時、アメリカには、家の前の道にチョークで、もしくは窓に絵を描いたり装飾をしたり、前庭にプラカードを掲げたりして、最前線で戦っている方々への感謝を示したり、みんなで力を合わせて乗り越えて行こうというメッセージを発信したりする習慣があります。
SNSなどでは #NapaStrong などのハッシュタグを使ったりして一体感を高めていこうとします。
もしかして、アメリカ人は有事が好きなのかな?と思ってしまうくらい、こういう時、さっとまとまって力を合わせる雰囲気があるように感じます。

とはいえやはり、近くの空き地に、家賃が払えなくなった人たちがホームレスとなってテントの町を作り始めているという話も聞きました。
地域によっては、トランプ大統領支持派によるデモも始まっています。
この先さらに治安の悪化やヘイトクライムが心配されます。
いろいろ気をつけていかねばなりません。

さて、そんな私たちの日々の中で、ここからは、学校に行けなくなってからの子供たちの学びの継続について書いていきたいと思います。

もしよろしければ、前回書いたこちらの記事もご覧下さい。

これまでの経緯

前回と重なるところもありますが、これまでの流れを書いておきます。

金曜日夕方の通知により、翌3月16日(月)から休校が始りました。
同じ週の後半、カリフォルニア州全域が外出禁止となりました。
外出禁止は当初4月7日までの予定でしたが、その後4月30日まで延長されました。

休校は、当初春休みを含む4週間の予定でしたが、3週目になって5月1日まで延期と決まりました。
さらにその翌日には、州知事の意向を受けて、夏休みに入る6月まで、つまり今年度はもう学校には行けないことが決まりました。

学校に関するこうした決定は、ナパと周辺の市にある公立のキンダーガーテンから高校までを統括するNapa Valley Unified School Districtという組織(ここでは仮に教育委員会と呼んでみます)によってなされ、各学校はその方針に従っています。

教育委員会は、コロナウィルスの流行が広がりつつあった頃から休校の可能性も考えてはいましたが、すぐにオンラインで授業ができるように準備を整えていたわけではありませんでした。それでも、学びは継続させるということは繰り返していました。
ひとまず、最初の週の水曜日、当面の学び継続のためのカリキュラムが配られました。紙ベースのものと普段から使っているオンラインプログラムを組み合わせたものでした。

これは結構きつかったです。
最初は調子よくやっていましたが、だんだん苦しくなっていくのがよくわかりました。
一応一定のカリキュラムに沿って勉強するとはいえ、基本的には自習なのです。
先生や他の友達との定期的な相互のやり取りのない中でモチベーションを保つのは難しいことだということがよくわかりました。
このままではそろそろまずいな、なんとかしてあげなくちゃと思っていた頃、担任の先生から、「当初から春休みの予定だった4週目は好きに過ごしていいよ」との連絡が入りました。
よかったー!ここはもう思いっきりストレスを発散させようと思い、好きなだけ遊ばせました。私もなるべく時間を作って一緒に映画を観たりしました。

そうして幸せな一週間を過ごさせて元気を復活させ、春休みが明けた4月13日から、本格的なディスタンスラーニングが始りました。

この4週間(春休みをのんびり過ごした先生にとっては3週間)の間に、先生方は急いでディスタンスラーニングに関するトレーニングを受けて準備を進めたそうです。
同時に、教育委員会は全家庭にアンケートをとり、Wi-Fiの環境があるか?コンピューターを持っているか?を確認しました。そして、コンピューターの足りない家庭にはChromebookを配りました。コンピューターは持っているけど親が仕事で使うとか、兄弟が多くて全員分はないとかいろいろな事情があると思いますが、基本的には全てのニーズに応えるとありました。何千台ものChromebookを用意したそうです。
その予算はどこから出たのか?全体のことは定かではないのですが、一部は各学校が集めている寄付金から出たとありました。おそらく、コンピューターを持っている家庭が多い学校の方が多くの寄付を集めていて多くのお金を拠出できただろうと思われますが、こういう時自然に助け合うのが寄付文化の浸透したアメリカならではです。
Wi-Fiはどうしても各家庭で整備しなければならないので、問題はまだ解決していないと言っています。でも、モバイルWi-Fiを配り始めていて、もっと増やしたいと言っていました。一度は、息子のクラスメイトが学校のWi-Fiを使ってzoomに参加してきたことがありました。校舎には入れないので外にあるテーブルから。個別の事情を相談すれば、それなりに対応してもらえるのだろうと感じたできごとでした。

もうひとつ、休校が始まった当初から教育委員会が取り組んでいるのはEmergency Food Programです。
キンダーから高校生まで、学区内の学校に通っている子供たちに無償で食事を配ってくれるのです。事前登録も申請も必要ありません。指定された時間に指定された場所へ子供と一緒に行くだけです。
そもそも学校には、収入に応じて、朝食や昼食を非常に安価または無料でもらえるという制度があります。家庭の状況に関わらず、子供たちにはきちんとした食事をとらせる必要があるという考えに基づいてのことです。
それに頼っている家庭は、急に学校がお休みになってしまったら子供たちをお腹いっぱいにしてあげることができなくなってしまうのです。さらに、今回のことで失業したりして収入が大きく減った家庭も多々あります。別に収入が減っていなくても、子供が毎日家にいて昼食が大変だーということもあるでしょう。そんな場合でも、もらいに行くことができるのです。
このサービスは、休校の翌日から始まり今も続いています。週の後半には週末用に少し多めの食事が配布されるそうです。

ディスタンスラーニング

それでは、4月13日から始まったディスタンスラーニングについて書いていきます。

息子の学校では、入学すると個別のメールアドレスが割り当てられます。これがGoogleアカウントに紐づいていて、日頃からGoogle Educationのツールを活用しています。
また、息子のクラスでは、休校が始まった2週目から、週3日1回1時間くらいのペースでzoomによるクラスミーティングが始まっていました。
先生も子供たちも、zoomにもすっかり慣れてきたところだったので、ディスタンスラーニングはとてもスムーズに始りました。

スケジュールや内容は、基本的には教育委員会の決めたものに沿っていますが、詳しい中身は各学校、各先生の裁量によるようです。
息子のクラスの一日の流れはこんな風です。

子供たちは、まず朝一番にGoogle Classroomへ行きます。
そこに先生からのメッセージと今日やることが用意されています。
zoomミーティングのリンクも置いてあるので、9時に集合します。

zoomでは、全員ミュートにして発言する人だけアンミュートにするというルールになっていますが、朝の数分間と終わりの数分間はマイクをオンにしておしゃべりしてもいい時間です。
それぞれに話をしながらみんなが揃うのを待ち、さてというところでまずはThe Pledge of Allegianceです。
The Pledge of Allegianceとは、アメリカ国旗に向かって帽子をとって起立し、右手を左胸にあてて忠誠の誓いを唱えるというものです。普段から毎朝やっていることです。
先生が画面上に表示させた国旗に向かって全員立ってこれを唱えた後、授業に入ります。

授業は、先生のコンピューターの画面を表示させたり、紙に書いたものを見せてくれたりなどしながら進んでいきます。
今日の課題についての説明もあり、前日のフィードバックもあり。新しいツールを使う必要があるときには、それについての説明もあり。
一度は校長先生が参加してくださったこともありました。
それから、みんなで絵を描いたり工作をする時もあります。

小一時間のzoom授業が終わると、それぞれが課題に取り組みます。
ビデオを見たり本を読んだりということも含み、Google Classroomに用意されているものを順にやっていきます。
プリント類はスキャンしてあって、テキストボックスを置いて書き込めるようになっています。そこに解答を入力してそのまま提出できます。
提出したものは先生がチェックして、問題があれば戻されます。戻されたものは直して再提出します。それらもすべてGoogle Classroomの中でできます。
おもしろいのは、普通なら手書きでやるものもコンピューター上でしなければならないので、図形などのツールを使ってやりこなしていることです。円の中の1/3に色を塗ってとか、文章の中で短いgの音のある単語を丸で囲ってなど。思いがけずこうした操作の練習にもなっていいなと思いながら見ています。

絵を描いたり何かを作ったりした場合には、Screencastifyを使って短い動画の中で自分の作品を説明しつつ見せます。
今度は先生がそれを編集してみんなで一緒に見て、画面上に拍手マークやいいねマークを表示させたり、実際に拍手したりして評価していました。
子供たち、何も習わなくてもこうした操作が自然にできてしまって、さすがデジタルネイティブだなと思います。

11時から1時間の昼休みをはさんで、12〜1時はOffice Hoursといって、先生が質問に答えるべく待機している時間です。
わからないことがあれば、emailまたはzoomを使って、この時間に先生と個別に話すことができます。

それ以降から3時まで、課題をやり終えたら、いくつかのコンピュータープログラムの中からそれぞれ自由に取り組む時間です。
PEと言われる体育的なものの代わりになるライブビデオもあり、それを見ながら体を動かすこともできます。
音楽も準備したいと言っていましたが、どんな風にするのでしょう?今のところまだありません。
他には、オンライン図書館的な本を自由に読めるもの、計算の練習をするもの、コーディングの勉強をするものなどがあり、スペルや算数を絡めつつ子供たちが自らやりたくなってしまうようなゲームは様々な種類が用意されています。
普段からやっているものも多いので、息子も気分に合わせて好きなものをやっています。

サンフランシスコやシリコンバレーの学校では、休校が始まった直後からこうしたオンライン教育が始まっていたと聞きました。
これも格差でしょう。アメリカでも有数の生活費の高い土地に住める家庭は、それなりにこうしたことに対応できる諸々が整っているということだと思われます。

ディスタンスラーニングを成功させている要因

一番は、子供たちがコンピューターに慣れているということです。
普段学校でもやっていることに少しずつ変化が加わっているだけなので、とても自然にこなしています。
これが、コンピューターの電源をオンにして。わかるかな?…なんてところから教える必要があるのだったら、いきなりオンラインでというのはとても無理な話です。

もう一つは、学校側と保護者との関係がフラットであるということです。
こういう時ですから、何もかもが整ってうまくまわるようになっているわけはありません。走りながら準備して、走りながら修正していく必要があります。そんな中、文句ばっかり言って協力してくれない家庭が多かったらなんともなりません。
一番大切なのは生徒とスタッフとその家族たちの安全であるというプライオリティがはっきりしていて、そのために、学校側も保護者も、フレキシブルに協力し合って成り立っていると感じます。

普段からそうなのですが、教育委員会も学校も担任の先生も、連絡がとてもマメです。
こんなことを考えている、今こんな取り組みをしているというのを逐一送ってくれるので、この状況の中で最善を尽くそうとしている様子がよくわかります。
質問や意見もいつでも受け付けてくれて、精一杯応えようとしてくれます。
何もない時でも、定期的に校長先生とコーヒーを飲みながら話をする会というのがあるのですが、それもzoomで行われました。教育委員会の長にあたる先生も、さすがに人数が多すぎるのでzoomではなくLiveでしたが、保護者からの意見に直接答えていました。

そうした中で出てくる話が、とても正直だなと私には映ります。はっきりものを言うというべきかもしれません。
これはうまくいき始めているけれどここはまだまだですなど、よくない話は日本の場合隠したがる人が出てきそうな気がしますが、そうではないのです。
だからこそ、保護者の側も、うまくいくようにできることをしなければと思えるのではないかという気がします。

一度は、教育委員会の上の方の人からの連絡の中に、「母としては、家で子供の勉強のこともチェックしながら仕事もしなければならないのはとても大変。でも私もがんばる。一緒にがんばりましょう」 といったことが書かれていました。
校長先生も、「自分も自分の奥さんも家から教えていて、自分の息子は大学生だけど家で授業に参加している。みんな同じだね」といったことを書いていました。

担任の先生は、新しいツールを使うとき、新しい機能を見つけたとき、いつも「初めてだから素敵にできないところもあるけど、新しいことをやるのはわくわくするわ!」という感じに連絡をくれます。
子供たちにも、「初めてのことに取り組んで、がんばってやっていて素晴らしいわ!」といつもほめて励ましています。

そのようにして、共感して助け合って前向きに進んでいこうという雰囲気は素晴らしいと思って見ています。

問題点

概ねスムーズにスタートしたディスタンスラーニングですが、問題は山積みです。

一番には、各家庭、担任の先生、子供自身によって生じる格差はもう埋めようがないということです。

例えば、インターネット環境。
未だWi-Fiを得られていない家庭もあるわけですから、全員が学校が用意してくれているプログラムに参加するまでにはまだ時間がかかりそうです。

息子のクラスでも、未だに一度もzoomに登場してこない子が3人います。その子たちも含めて、毎日4~5人は少ない状態で授業しています。
学校全体では約85%の参加率だというように言っていました。
環境は整っていても参加してこない生徒もいることでしょう。それぞれにどういった事情があるのかはわかりません。先生もどこまで追いかけていくべきなのか、難しいところだろうと思います。

また、zoomには毎日時間通りに出てくるけれど、カメラをオフにしている子というのもいるのです。先生に注意されたり答えを求められたりすると数秒の間をおいてオンにして、しばらくするとまたオフにしているそうです。
そして、どうしてもしゃべりたい子というのは必ずいて、ミュートにしてと言ってもすぐアンミュートしてしまったり、家の中でやっていますから、おもちゃやペットや家族の誰かが出す音などに気をとられてしまうといったこともおこっているようです。
どこまできちんとさせなければならないのか、先生にとっては悩みの種だろうと思います。

息子は小学校3年生というほどよい年齢なのでまだよかったです。ある程度のことは自分でやってくれるし、勉強は私でも容易にサポートしてあげられます。
でも、例えば、ずっと手伝ってあげないと自分では何もできないような年齢だったら?家族にかかってくる負担は相当なものになるでしょうし、それをどの家庭もこなせるのかといったらわかりません。
さらに、中学生、高校生と年齢が上がって行ったら、どこまで家族がサポートできるか?どこまで介入すべきなのか?本人は一体どこまでやるのか?というのもとても難しい問題になってくると思います。

そもそもオンラインで学習するつもりで学校に入っていたならいいのです。でもそうではありません。親の言うことなどまったく聞かず、学校に行かせてなんとかなっている家庭もあることでしょう。そんな場合、この状況での家族全員のストレスを考えると恐ろしくなってしまいます。

決められたスケジュールも、どのくらいの人がどのくらい守っているでしょう?
終了時間の3時少し前に再びzoomで集合となればまた違ってきますが、そこまで縛る必要があるのか、先生も難しい判断になるだろうと思います。
現に、息子の友達たちとzoomプレイデイトを計画していて、1人のママの出してきた候補のひとつは、息子はまだがっつり課題に取り組んでいる時間でした。というか、3時以降じゃなきゃいけないのでは??と思ったり。
家庭によって、ちゃんとやる家と全然適当な家があるだろうなというのは明らかです。

さらには、保護者がコンピューターなんて使ったことがないという家庭もあります。
保護者が英語を理解していない、勉強なんて全然わからないという家庭もあります。
どうしても保護者に頼らなければならない中、各家庭の状況によって差が出てしまうのは避けられそうにありません。

もうひとつ、担任の先生のやり方も大きく影響しそうです。
息子の担任の先生はきっちりやってくださる方なので、息子は生活にリズムもできたし、間違って戻されてまたやらなくてもいいように課題もきっちりやるという風に取り組めています。
でも、例えば、提出した課題をチェックしてくれなかったら?毎日やることにあまり変化がなかったら?zoomもただの出席確認程度の扱いだったら?などなど、先生のやる気と子供たちのやる気は直結してきそうな気がします。

オンライン教育は意外とうまくいくからこの先もっとこれを取り入れたらいいというような簡単な話ではないだろうなというのが、今のところの私の感触です。


息子たちは、結局半年近く学校に行けないことが決まってしまいました。
卒業式はどうなるのか?例えば、高校生たちの卒業を控えての一番のイベントプロムといわれるパーティーはどうするのか?まだ検討していて決まっていないと言っていました。
この半年の間、ディスタンスラーニングに一切参加せず、何も勉強しないで過ごしてしまった子供たちはどうなるのか?
不安なことは山ほどあります。
でも、とりあえず、今はできることをやっていくしかありません。

息子は、「ディスタンスラーニングは、キライとは言わないけど好きとも言わない」と言っています。やはり、友達と直接話したり、一緒に走り回ったりするのは楽しいと。
少しでも早くこの事態が収束して、また子供たちが一緒に楽しく遊ぶ声が聞けるようになることを祈るばかりです。

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