よりみち通信15ブックカウンセリング「働く」―上手に働いて生き延びるために―
働かなければ暮らせない。
でも、恐ろしいのは、働いても暮らせない、あるいは一生懸命に働いているせいで暮らせなくなってしまう、という現実があるということ。
「ブラック企業」という言葉が定着して久しいけれど、一向に解決されないどころか常態化してしまっている日本。
汐街コナ『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』(あさ出版)は、日本の労働者たちがいつの間にか身につけてしまっている価値観を緩やかに溶かしてくれるコミックエッセイです。
仕事よりも自分の身体が大事、未来は自分だけのもの・・・そんな当たり前のことをすっかり忘れて、働くことに価値を置きすぎていないですか?
朝、布団から出るのが辛いと感じる人、そしてそんな家族や友人が近くにいる人に届けたい本です。
でも、どうして私たちはそんな辛い働き方しかできないのか。頑張って働いても、あまり報われない気がするのはなぜなのか。
そんな根本的な疑問をかの有名なマルクス「資本論」をヒントに読み解くのが、小暮太一『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)。
そもそも、私たちの給料はどうやって決められているのか。イノベーションが起きても仕事が楽にならないのはどうしてなのか。
意外と知っているようで知らない「労働」の基本あれこれ。
「資本主義経済の中で働くということは、(法律の範囲内で)ギリギリまで働かされることを意味しています。」という一文には絶望しかありませんが、それを理解したうえで上手に稼いで働く術を教授してくれるのがこの本です。
資本主義が大前提の世の中だけど、その中でうまく泳げるようになることもできるし、そこから離脱して自分の価値観で生活することもできる。
本来、働き方はもっと自由でよいはず。会社の理論に絡めとられないよう、「知恵」を身につけることは自分を守る第一歩かもしれません。
(小笠原千秋)