第三次原政権のトレード戦略を考察する
まえがき
第三次原政権が始まり三年目に突入した2021シーズン。三連覇を目指すチームの中で活躍している選手は生え抜きに留まらない。今回はトレードで他球団から巨人に移籍してきた選手を取り上げて第三次原政権のトレード戦略について考察してみたいなと思う。
1.目の前の勝利を掴み取る"即戦力型トレード"
第三次原政権に入ってから行われたトレードを大きく2つに分類すると"即戦力型トレード"と"素材型トレード"に分かれる。
まずは前述の"即戦力型トレード"だが、鍵谷陽平、高梨雄平、ウィーラーを獲得したトレードをここでは指す。実績はあるものの直近の成績が奮わない選手やチーム事情も重なり出番が少なくなっている選手を獲得するトレードである。
このトレードは見出しにも書いた通り"目の前の勝利を掴み取ること"を目的としている。具体的に1人ずつ見ていこう。
①鍵谷陽平
2019シーズンの巨人は開幕前に勝ちパターンを期待されていたクックや吉川光夫が開幕直後にノックアウト。不安が残る中継ぎ陣の中に現れた救世主の一人が鍵谷陽平であった。巨人には少ない右のパワー系ピッチャーで主に僅差や火消しで活躍した。新たにカットボールを習得するなど現在は勝ちパターンでの登板も増えている。
②高梨雄平
2020シーズンの巨人は高木が24試合で15登板をするなど左の中継ぎ陣のバリエーションに課題を残しており、解決策の一つとしてを講じられたのが高梨雄平の獲得であった。獲得時は制球難と謳われていたが15試合連続無失点や東京ドームで圧巻の防御率0.52を記録するなど大活躍。サイド転向でブレイクした大江が弟子入りをするなど思わぬ副産物も生まれた。
③ウィーラー
2020シーズンの巨人は外国人野手が手薄であり、その中でスポットライトが当たったのがウィーラーであった。最終成績は一概に良いとは言い難いかもしれないが、複数ポジションを守れるUT性やチームの士気をあげる陽気な性格は唯一無二に近かった。最近だと日本シリーズでの孤軍奮闘やコロナ罹患前の大活躍が記憶に新しい。
この3選手に加え敗戦処理やロングリリーフ等で役割を果たした藤岡なども含めれば即戦力を期待されて移籍してきた殆どの選手が最低限以上の結果を残している事が分かり概ね成功だと言えるだろう。
2.数年後の勝ちへと繋げる"素材型トレード"
続いて紹介するのは"素材型トレード"であるが、香月一也、廣岡大志を獲得したトレードをここでは指す。自球団のデプスチャートを見て不足している箇所を他球団のプロスペクトで補充する形だ。
これは"即戦力型トレード"に比べると即効性は低いものの獲得した選手がモノになった時のリターンは大きい。ここでもそれぞれの選手をピックアップして見ていこう。
①香月一也
昨年交わされたこのトレードは香月を獲得したという事実よりも澤村が放出された事実に注目が集まった。実績のある澤村の交換相手であった事から高い期待をされた移籍後の香月は阿部二軍監督のマンツーマン指導もあり成績が大幅に良化。
二軍では二年連続のOPS1.000越えを記録し、
一軍では3HRを放つ活躍を見せて数少ないチャンスを掴みつつある。
②廣岡大志
先発として二年連続のニ桁勝利を達成し、中継ぎとして2019巨人を大車輪の活躍で支えた田口麗斗を放出。その対価として獲得したのは未完の大器と持て囃されていた廣岡大志であった。こちらも大野雄大から値千金の決勝弾を放つなど一軍で爪痕を残している。
このように巨人は実績のある選手の放出と引き換えに不足しているスラッガータイプのプロスペクトを獲得している。"即戦力型トレード"と違って現時点で成功か否かを判断する事は出来ないが、通常時この両選手を下位打線に置いて経験を積まさせられる巨人打線は2人を良い方向に導いてくれると信じている。
3.まとめ
今回の記事では複数のトレードをリターンがもたらされるまでのスパンで分類して考察してみた。
この記事を通して一番伝えたい事は巨人の編成陣が短期的な視点と中長期的な視点の両方を持ってトレードを敢行しているということである。
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