白目の代償

書店の店頭、平台に所狭しと並んでいる、
級数がデカい題字に、キャッチーなデザイン、
『ビジネスパーソン、必携!』の帯と共に
腕を組んだ分かりやすい成功者のアイコン写真…

私にとってジャンルは曖昧なので、
俗に言うビジネス書・自己啓発本だと仮定して、
話を進めていこうと思います。

その全てが憎らしいと思った
そんな一時期があったという、そんなお話です。

息子の出産後、産休明け、
2歳児と乳児、2人の育児と仕事の両立で
白目のまま生きていたあの頃…。
日常家事がやっとで、
元々のどんぶり勘定に輪をかけて
家計のチェックが疎かに。
元々クレジットカード恐怖症だった旦那に、
念の為…と渡していたクレジットの明細など
全くのノーチェックでした。

1年程経過したある時、増えるどころか
減っているように見える預金額…
でもこんなもんだと言われれば
こんなもんのような気がする…
と悶々としていたある日、
久々に足を踏み入れた物置兼旦那の部屋に
堆く積んである、やたらキャッチーなタイトルの
ハードカバーの本の山…目視でざっと、200冊…

一気に怒りが脳天を突き抜け、喉元を噛みちぎらん勢いで旦那に掴みかかりました。

今にして思えば、仕事と育児、常に一触即発の嫁…
元々、コミュニケーションが苦手な旦那は、
旦那なりに、家族や仕事について、
悩んでいたんだと思います。
ただその時の私には、そんなことは関係ない!
思いつく限りの罵詈雑言を浴びせかけ、
完膚なきまでに200冊を罵倒しました。

読了後、あなたの中に何が残っているのか?
残っていないのならば、それが答えだろ!
第二弾!…て…ただ題名と装丁を
ちょっとイジっただけで
著者も同一なら、内容も同一なんだろうが!
そもそも題名8割みたいな本の対価として
この価格が妥当だと思っているのか!
云々…

今にして思えば、過激派だと反省していますし、
この手の本を一概に悪いと言ってる訳では
ありません。
坊主が憎いので、当然、袈裟も憎いです、
という話です。

ギャンブルや浮気よりはマシじゃない?
…等の旦那容認派な意見も散見しましたが、
乱暴に言えば私にとっては同義だし、
何だったらこっちの方がタチが悪い…

決して多くない家計から1冊ニ千円近くもする本を
景気良く、じゃんじゃん購入されては、
たまったもんじゃない…!

マインドフルな
一流のビジネスパーソンになる前に
一家諸共、路頭に迷いかねない由々しき事態です。

私だってわかっています。
本を恨むは、筋違い…どんな本でも五分の魂…
しかしあの時の私は、それほどに余裕がなく、
そんなにも精神を消耗していました。

数年後、文庫・新書を含め300冊、
まとめてブッ○オフにて三千円と数百円の小銭に
換金されましたとさ、
                めでたしめでたし。

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