公務員と劇団員の2足の草鞋を履いている。
新年早々の1月8日・9日の2日間にわたり、対馬島内でミュージカル「対馬物語」を公演しました。
そこで、今回は、ぼく自身が劇団員の草鞋を履いている経緯とミュージカルの内容をお伝えしながら、離島での演劇活動について綴っていきます。
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離島公務員の草鞋=劇団員!?
対馬に移り住んて4年目。
実は2年目辺りから対馬市民劇団いさり火に所属する劇団員として活動に参加してきた。
劇団員となった理由は単純なもので、
高校演劇をしていた経験からまたお芝居に出たいなと思ったから。
そして、離島に生きる公務員として、対馬の歴史や文化を知って伝える活動に魅力を感じたからだ。
今回の公演後に、ある方から
「公務員と劇団員の2足の草鞋だね。」
と言っていただいた。
公務員が演劇をすることで周囲の方々に与える影響は大いにあると思っているし、持続可能な文化芸術活動にしていくためにも大きなことなのかもしれない。
練習は毎週火曜日の夜。
ほとんどの劇団員は、日中仕事や学校に出かけ、身体の疲れを抱えて練習にやってくる。
ぼくのような公務員も同じく、日頃の業務や市民対応の疲れを引き攣ってやってくる。
一時期は残業に追われて練習どころではなかったし、お芝居や練習へのモチベーションが低下していた時期があった。
けれども、いざ劇団で活動していると、
「お前らみたいな公務員が、劇団とか外部で地域のために動いているなんて、すごいことだ。」
「この姿を若手の公務員に見せて、少しはこういう活動に顔出すことを考えてもらいたいね。」
そんなお言葉をいただいて、改めて2足の草鞋を履く意味を考えていく。
それに対馬島内の各地からやってくる劇団員の多様さにも惹かれる。
ぼくのような公務員がいれば、自営業で大工などの職を持つ者、日中は小中学校に通う子どもたちがいる。
公演後からは車で1時半以上はかかる上対馬の方も劇団に参加することになった。
そんな地域に生きる様々な立場の人たちと1つのお芝居を作っていくなんて、魅力に溢れる活動だと思うのだ。
対馬物語とは??
対馬物語は、対馬藩主・宗 義智(そう よしとし)公が板挟みにあいながらも朝鮮通信使の来島を実現させるまでの波乱の人生を描いた物語だ。
戦国時代の終わりに起こった朝鮮出兵から江戸幕府に朝鮮通信使が来島するまでの時代背景を描いている。
朝鮮出兵で日本と朝鮮半島との板挟みにあった対馬。
そして朝鮮との和睦を得てから朝鮮通信使の来島を実現させた対馬。
対馬がいかに朝鮮半島と日本の架け橋であったのかを伝えてくれる。
そして、これまで10年ほどの期間で計13回の公演を積み重ねてきた。
対馬島内ではもちろんのこと、東京や福岡、佐賀や長崎といった島外で公演をし、多くの方々に感動を呼んできた。
また、作者はジェームス三木さんであり、非常に思い入れの深い劇材であるのだ。
ラストシーンで感動の涙を流す観客は多く、毎回の公演で何かを伝えることができたという実感が持てやすい。
だから、これまで10年以上もこの題材を演じつづけているのだと思う。
演劇は、頭の切り替えができるもの
ぼくが演劇が好きな理由として、非日常の世界に入り浸ることができることを挙げたい。
劇を作っている役者は日常生活でも関わる者たちなのだが、いざ劇になると登場人物へとなり変わる。
そして、劇の世界に入り込むと日常の出来事を忘れていく。
そう、日常生活から抜け出せるのだ。
日常生活で抱えている悩みやストレスを感じることなくいられる場所が演劇の世界なのだと思う。
その演劇の世界で日常生活の出来事を忘れることで頭の切り替えができ、「さて、明日の頑張りますか!」という気持ちになれるのだ。
だから、ぼくは対馬に移り住んでからも演劇がやめられない。
いや、やめない方が多くの方々や周囲の環境に揉まれる公務員としても生きていけるのだと思うのだ。
文化と歴史を伝えていく役割がある。
ぼくが劇団員として演劇を続けているのは、単に演じるのが好きで、頭の切り替えができるからだ。
でも、それ以外にも対馬で演劇を続ける大事な意味がある。
それは、演劇を通じて対馬の文化や歴史を伝えていくこと。
対馬は古来何百年もの間、朝鮮半島やユーラシア大陸と日本の架け橋になってきた。
ゴーストオブツシマの題材になった元寇や対馬物語で取り上げる朝鮮出兵や国書改ざん、あるいは明治時代以降に起こった日露戦争・日清戦争・太平洋戦争などなど、諸外国と日本の間に立ってきた歴史がある。
また、対馬独特の方言や民謡があるのだが、それらを次世代に継承していく語り手が年々減ってきている。
歴史に加えて、なかなか継承していくのが難しい文化を、演劇を通じて伝えていく。
これが、対馬で演劇を続ける意味であり、大事な役割なのだ。
そして、この演劇活動を続けることが、対馬の地域おこし・地域づくりへとつながっていくのだと信じている。
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2022年の幕開けを飾ってくれたのは演劇でした。
ぼくが演劇にのめり込んでいたのは高校時代の3年間。
今年は、高校演劇部を思い出すような1年にもなりそうです。
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