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初期衝動そのもの

 最前線におかれてるFWは、ボールが相手にわたると、いちばんはじめに守備をするひとに変身する。世にいうファーストDFというやつだ(ファーストじゃないときもあるけど、できればそこはスルーしてほしい)。

 なにごとも”ファースト”というのはだいじなもの。たとえばミュージシャンのファーストアルバム。そのミュージシャンが、なんで音楽をやりだしたのかとか、どんな音楽がスキなのかといった、いわゆる初期衝動みたいなのがこめられてる。ここがへぼいと音楽家としてのさきはない。ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトさんも「ファーストアルバムに青春が全部詰まってる(『KAMINOGE』 vol.34より)」なんていいかたをしていた。

 ファーストDFもおんなじだ。しぬほどだいじ。どこで、どういうふうにボールをうばいたいかっていう、チームのディフェンスの初期衝動がつまってる。そこがぼんやりしてたらあらタイヘン、とたんにディフェンスがどうしようもないものになる。ボールなんてうばえっこない。

 そこでFW永井龍だ。彼はいい。チームの初期衝動に忠実にうごいてくれる。

 しきりに首をふり、ボールの位置、味方との位置関係をつかんで、相手のパスコースもイメージ、ボールによせたりよせなかったりを根拠をもってやる。チームの衝動がブレないよう、こまやかに気をくばってくれるのだ。アンロペやペレイラ、ジュニオールではこうはいかない。「永井がいてくれたらなー」って城福さんもずっとおもっていたはず。

 そんな永井も、広島にきてからはかわいそうに、ケガつづき。やっと今シーズン終盤、足のいたみもなくなって、練習に参加したなんてハナシがでてたくらい。ぜひこのオフで足を万全にして、来年、おなじく優秀なファーストDFの鮎川峻と二枚看板で、チームのディフェンスをひっぱってほしい。

 そして来年こそ、そろそろ、FW永井龍の攻撃のハナシもさせてほしい。そっちが本職なんだから。軸がぜんぜんブレないシュートフォームのうつくしさとか、マークをはずすたのしさだとか。そういうディフェンス以外のことをかたりたくて、こっちはウズウズしているのだ。たのんますほんとに。

 ……まあディフェンス以外でっていうと、ことしはこんなシーンもありましたけどね。


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