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待ってますまってますマッテマス

 ハナシがちがうじゃんか。いっしょにいまの(どういう経緯でそうなったのかは不明だが)いきあたりばったりなサッカーで泥にまみれようって約束した仲じゃないか。え、そんな約束したつもりはない? バカだなあ。ユースから昇格するってそういうことだよキミ。とっくにぼくたちは運命共同体だったんだよ。なのにキミだけ下平監督のもと、キモチもあらたにサッカーしようという。そんなムシのいいハナシあっていいわけないじゃないか。

 正直いうと、キミが、あまりいい精神状態でサッカーにむきあえてないことは、うすうす気づいてた。ケガした足のこと、ブランクによる感覚の変化、コーチ陣からの評価、そういった意識上のバグにひっぱられて、ゴールゲッターとしてのリソースがガッツリけずられてることは、予想がついてたんだ。だから環境をかえて心機一転というのは、キミのサッカー人生においてかぎりなくベストにちかい選択肢なのかもしれない。

 ――が、そんなことはぼくの知ったことではない。「試合に出てない選手が出場機会をもとめて移籍するのをひきとめるのは、ファンとしていかがなものか」という言い分は、いかにも選手ファーストでうつくしい。ただザンネンなことに、ぼくのような利己的で、わが身かわいさに他者への目がきびしくなりがちなニンゲンが、そんなの考慮にいれるわけない。ぼくの、キミという選手にたいするスキは、そんな選手ファーストのうつくしさなんて、小指のさきだけで台無しにできるくらい、凶悪に独善的で、粘着質で、汚濁している。

 それだけスキなんだ。どこかふてぶてしく、感情の起伏もひかえめで、底知れぬ。シュートにさまざまないたずらをしかける茶目っ気。そんなキミのFWとしてのプレーが大スキなんだ。ながいことキミのゴールシーンをくりかえし再生しながら、復活と活躍を待ちわびてたんだ。

 それなのに大分で武者修行? そりゃないじゃないか。このすっかり熟成発酵されたぼくの、悪臭ただよう想いはどこへおいておけばいいのか。たのむ、どうかどうかおねがいだ、いかないでおくれ……!

 ……といったところで、すでにキミはあちらさんのトレーニングに参加していた。観たよ、写真。しょうがない。まったくわりきれてはいないが、もうアタマをきりかえるしかない。

 だからぼくはきめたよ。下平監督と大分トリニータを徹底的に監視してやろうと。うすぐらい、じっとりした心もちで決意した。ちゃんとFWの一角としてつかってくれるかどうか、ずっと監視してやる。

 キミは意外とディフェンダー背負えるので、FWの役割がいちばんむいてる。なんなら9番にすえてこそその真価を発揮できるぐらい。なので「まさかサイドハーフなんてハンパな位置で起用しませんよね」と監視の目を光らせることにしたんだ。今日から。ずっと。

 この点についてはホントに安心してほしい。なにせぼくは、ファジアーノ岡山をきびしく監視しつづけ、ときにプレッシャーをかけることにより、木山監督に仙波大志さんをスタートから起用させることに成功してる。だから安心して大分の地でぞんぶんにFWとしてチャレンジしてほしい。

 そしてもちろん、早いうちに、ぜったいに、帰ってきてね。

 マッテマスヨ?

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