マルセイバターサンド
レーズンがキライだ。去年の秋ごろの『ぶらサンチェ』、茶島さんがラムレーズンの入ったアイスクリームを食べてたのですら気に入らない。それくらいキライ。
あの、ぐにぅ、っていうブキミな食感。突拍子のない角度からちょっかいかけてくる酸味ともいいきれない酸味。黒くぶつぶつとしたきたならしい見た目。レーズンほどの異物感を発揮する食材には、いままでお目にかかったことがない。比類なき異端。だというのに、なぜかみんな、安易にお菓子やパンにまぜこんでしまう。だれがはじめたのかは知らないけれど、ほんとうによくない習慣だ。食べ物に対するボウトクではないか。六花亭のマルセイバターサンドとかまさに。もはや正気の沙汰ではない。
要は、レーズンのなにがゆるせないかといえば、あの異物感なのだ。ぼくが想定する食感や味のイメージをいつもジャマしやがる。フユカイきわまりない。ただでさえ世の中おもいどおりにならないことばかりだというのに、なんで食べたモンにまでうらぎられなきゃならないんだ。せめてクチに入れるもんくらいはおもいどおりにあってくれてもいいじゃないか。あとついでに、自分のスキなもんも。
だけどもまあやっぱり、おもいどおりにならないことには定評のあるこの現世は、ぼくのそんなガキくさい願いを的確にうちくだく。茶島雄介さんは、去年の後半戦、ベンチにしのびこむことすらかなわなかった。
スキッベ監督はつくづく優秀だ。かれはぼくのその幼稚さを見抜いていたのだ。おもいどおりにならないくらいでふてくされるようなヤツに、茶島雄介をみせてやる道理はない。だいたいレーズンくらいでなにつべこべいってんだ……かのドイツ人はそう宣言し、ぼくのイチ推しを緞帳のむこうにかくしてしまったのだ。
今シーズンは、だから分水嶺だとおもっている。
先日クラブからことしの背番号が発表された。25番はことしも無事、茶島雄介さんだ。仙台や千葉方面から、イヤな引力を勝手に察知はしていたけれど、なんとかこらえられた。これはスキッベ監督からあたえられたお情け、泣きの1回、ラストチャンスなのだろう。成長しなければ生き残れない、とつきつけられた。食わずぎらいなどせずことし1年をすごさなくては。ぼくは決意するしかなかった。
とはいえ、いきなりすぐにスキ・キライやめまーす! は性格上ムリ。すこしずつすこしずつやっていこうとおもう。手始めに、六花亭のマルセイバターサンドでも食べてみますかね。
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