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【患者さま家族の声】娘のてんかん経験から、てんかん患者さんとご家族のための希望を追い求めて

河田 宏一さんの娘さんは現在中学生。生後8か月ではじめててんかん発作。今も抗てんかん薬を飲みながら病気と付き合っています。河田さんは、娘さんの病気と向き合う中で抱いた苦悩や後悔を元に、シミックホールディングスのグループ会社であるノックオンザドア株式会社が展開するてんかん患者さんの発作や服薬記録を管理するためのアプリ「nanacara(ナナカラ)」のサービス作りに携わっています。
今回は、ご自身が患者さんのご家族である経験談や今のお仕事に対する熱い思いをお聞きしました。

<河田 宏一さん>

―――娘さんはいつ頃てんかんを発症したのですか?そのときの状況についてもお聞かせください

娘がてんかんを発症したのは、生後8か月のときです。すぐに救急車を呼び、治療をしてもらいましたが当日はとても慌ててしまったのを今でもよく覚えています。

―――突然発症したのですね。とても驚かれたと思いますが、治療をしたら症状は治まったのでしょうか?
 
娘の場合は1~2か月に一度はてんかん発作を起こしていました。生後8か月くらいからその状態が続いて、5歳の夏を過ぎた頃になると1日10~20回くらいの発作が起こるようになったんです。
10~20回と言っても、もっと多かった可能性もあります。というのも、てんかんのけいれん発作にはいろいろなパターンがあるんです。5分以内に収まるてんかん発作が1日に10~20回はありましたが、実際は10秒や30秒で治まったてんかん発作も起きていたと思います。

―――1日に10~20回もけいれん発作が起きるのは娘さんもご家族も大変な思いをされたと思います。治療はやはり抗てんかん薬の投与だったのですか?

そうですね。基本的には抗てんかん薬の投与を行いました。半年間は入退院を繰り返しまして、その間にお薬の調節をしてもらって何とかてんかん発作をコントロールできるようになりました。てんかんは発作がコントロールできれば通常の生活を送ることができます

 
―――娘さんの治療に寄り添っていく中で父親として困難を感じたことはありますか?逆に何か糧になったことはありますか?
 
5歳の頃に1日10~20回のけいれん発作が起こるようになって…入退院を繰り返しましたが、ちょうどその頃に軽度な知的障がいの可能性があると指摘を受けました。検査も受けて、軽度知的障がいがあることが分かったんです。
てんかん発作の一部は脳にダメージを与える可能性があります。発作を繰り返してしまったせいで娘が軽度知的障がいになったのではないかと自分を責めましたね。

実はそれまで、生活基盤を作ることを言い訳にして仕事に逃げていた部分があったんです。もっと娘の病気や薬のことについて真面目に勉強して治療に向き合っていればよかったなと後悔しました。
今はてんかん患者さんを支える家族の会などに積極的に参加して、さまざまな情報共有をすることで、ネガティブな感情を少しは乗り越えることができるようになりました
とはいえ、私もそうですが、今もお子さんのてんかんや知的障がいを受け入れられなかったり、治療に向き合えなかったりして苦しんでいるご家族は多いのではないかと感じています。

―――貴重なお話をしていただきありがとうございます。娘さんを支える一方で、色々な葛藤や苦しみを乗り越えて来られたんですね。河田さんは今現在、てんかんのお子さんを持つご家族向けの、てんかん発作を記録できるアプリ「nanacara」を立ち上げたメンバーのうちの1人なんですよね。
やはり、ご自身がてんかん患者さんのご家族であるという経験からこのサービスを創ろうと考えられたのですか?

立ち上げメンバーの1人と言われるとおこがましいです。約6年前の当時、ボランティア仲間の医師と患者家族で「てんかん治療の生活を少しでも楽にできるアプリがあったら」と、話していました。しかし、私たち患者家族にはアプリを開発する能力もお金もなく(自分たちでは実現できない)と感じていました。

そんな時に、現在のノックオンザドアの林社長と高山さん、堀口さんが相談に乗ってくれて、自分達で起業してくれました。それから共同して、てんかん当事者やご家族250組以上の皆さまから話を聞き、「てんかん患者や家族にとってどんな機能が必要か」を共に悩み・考えていた。私がしたのはそれだけです。
今は、引き続きてんかん患者さんのご家族と積極的に交流し、より良い生活を支援するための仕組みづくりに取り組んでいます。
 
てんかん患者さんは、100人に1人の割合で発症する病気です。私たちはすでに2年かけて、てんかん発作のデータを90万件以上集めています。このデータを創薬や今後の医学研究などに活かしてほしいというのが今の私の願いです。
将来、親が死んだ後に娘がいきれる環境や場所を作りたい…との思いで今の仕事に邁進しています。そういった意味では、娘のおかげで今の私があるんです。

<nanacaraアプリ>

―――娘さんを支えている経験から全国のてんかん患者さんとそのご家族が生きやすい仕組み作りをしているだけではなく、てんかん治療の発展も視野に入れた活動をされているのですね。ご自身や娘さんの困難を経験してこそ今のモチベーションがあることがよくわかりました。

―――娘さんは今後もお薬を飲み続けていかれる予定ですか?
 
てんかんは幼少期に発症することが多く、子ども場合は6、7歳でけいれん発作が消失する可能性が高いといわれています。ですが、全体の3分の1は発作のコントロールが難しい難治性てんかんとなります。もちろん年齢を重ねてから脳梗塞などの病気をきっかけに発症するケースもあるのですが、基本的にてんかん発作が起きる可能性がある限りは治療を止めることはできません。
娘も難治性のてんかんです。幸い、お薬を調節してもらっててんかん発作をある程度コントロールできているので通常の生活が可能ですし、地域の学校の支援学級に通っています。
最近はてんかん発作の回数が増えているので学校に通えない日もあります。

―――お薬は5歳の頃からずっと変わっていないのですか?今後、調整する予定はあるのでしょうか?

娘は5歳から6歳の頃にかけてお薬の調節をしました。3種類の抗てんかん薬で発作が抑えられたので、その後は怖くてお薬の種類は変えていませんでした。一時は様子を見てお薬の種類を減らそうという話もありましたが、最近はてんかん発作が増えお薬の調整をしています。

―――今、nanacaraのアプリでは、てんかん患者さんや、ご家族に対してどのようなサポートができますか?

てんかん発作を記録するための機能があります。てんかん発作が起きたときは動画で記録できるようになっています。アプリの画面をタップするだけで簡単に発作の状況や持続時間を記録することができるんです。動画の記録を見返すこともできるので、家族や医師にも共有することが可能です。
将来的には、このようなデータを積み重ねることでお薬とてんかん発作の相関を分析することもできますし、ビックデータ化すれば先ほどもお話ししましたが創薬や医学研究にも役立つのではないかと思っています。

―――harmo株式会社も電子版おくすり手帳サービス「harmoおくすり手帳」を展開していますが、「harmoおくすり手帳」のアプリはてんかん患者さんの生活にも役立つと思いますか?
 
そうですね。難治性てんかんの患者さんは抗てんかん薬を毎日欠かさず飲まなければなりません。そういった意味では、飲み忘れの管理などもできるお薬手帳アプリは非常に有用だと思います。


さいごに

今回は、てんかんの娘さんがいる河田さんからご自身の経験も踏まえた貴重なお話を聞くことができました。娘さんの闘病をきっかけに、てんかん患者さんとご家族を取り巻く状況を少しでも改善したい…そんな熱い思いが伝わってきました。
てんかんのように毎日お薬を欠かさず飲まなければならない病気の方にとって、お薬の管理をしていくアプリは有用とのお声をいただいています。これからもお薬管理を簡便にして患者さんとご家族がより快適な生活を送ることができるよう尽力していきたいと思います。

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