かえるがチルっていた。
疲れた体を露天風呂に沈める。
じんわりあったまって解れていく。
水面から出た頭に冷たい夜風が吹く。
濡れた髪を揺らすくらいの少し強い風だった。
今日もあの子のことを考えている。
特別だったから、特別になりたかった。
だけど結局、なれなかった。
あの子の「元恋人一覧」の
ひとりになっただけだった。
ため息をひとつついて横を見ると、
岩風呂の岩の上でかえるがチルっていた。
ぼくは上がってベンチに横になった。
あったまった体を冷たい夜風にさらす。
夜空はどこまでも真っ暗だった。
ピントを合わせられるのは星の明かりくらいだ。
そしてまた、
あの子のことを考える。
一生物になれるくらい確かだったものが、
あっけなく消費されてしまったようだった。
ふと顔を横に向けると、
あったかい光に照らされて、
かえるがチルっていた。
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