憧れ
淡いクリーム色の壁紙の中、彼は立っていた。
「こんにちは」
「こ、こんにちは!」
「そんなに緊張しなくていいよ」
彼は僕の憧れ。なりたいものの姿。
「君は僕になりたいはずだ」
僕は頷く。
「じゃあ、僕にしていこう」
彼は僕に触れると、その腕をもいだ。
「長さが足りない」
僕の腕を伸ばし、僕に戻す。
「顔が違う」
彼は僕の首をもぎ、顔のパーツを変える。
「考えが違う」
彼は僕の頭を開き、脳をかき回す。
全身のパーツが入れ替えられる。
「はい、完成」
彼は笑った。
そこに僕はいなかった。
彼は憧れという名の殺人鬼。
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