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 雨が降っている。
 僕は傘をさしている。

 雨が降っている。
 傘で弾けた雨粒が言葉を発する。

「さみしい」
「かなしい」
「さみしい」
「かなしい」

 雨が降っている。
 彼らはそればかりを繰り返す。

「さみしい」
「かなしい」
「さみしい」
「かなしい」

「何がそんなにさみしいんだい? 何がそんなに悲しいんだい?」

 僕は尋ねる。

「僕が」
「私が」
「消える」
「存在が」
「混ざって」
「一つに」
「還る」

 足元を見ると、個々の雨粒は一つの水たまりとなり、個々の水たまりは一本の川となり、個々の川は海となった。

 すべてが一つになった。

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