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ドイツの祝日 イースター 復活祭

イースター 復活祭 Ostern

イースターは移動祝日。
日にちの決め方は『春分の日を過ぎた最初の満月の次の日曜日』
 
2022年は、4月17日がイースターだ。

キリスト教徒でない私にとっては、馴染みのない祝日や行事は多い。
パートナーと知り合うまでは、イースターは私にとってキリスト教の祝日、春の連続休暇の意味しか持たなかった。
いつしかイースターは、知識の一つではなく、私の生活の一部となった。

クリスマスが終わり1月になると、店頭に並び始める物。
それが、卵やうさぎ、鳥の巣や子羊がモチーフとなったチョコレートやお菓子、部屋のデコレーションだ。
イースターという言葉は、春の女神『エオストレ Eostre』が由来とされているそうだ。
諸説あるようだが、春を祝うお祭りと、イエス・キリストの復活が融合し、イースターができあがったというのが定説だという。
つまり、復活と繁栄のお祝いだ。
そして、この女神エオストレの仮の姿とされているのが、うさぎなのだという。
うさぎは子だくさんで知られることもあり、繁栄の象徴に相応しい。

イースターは、4日間に渡るお祭りだ。

聖金曜日 / Karfreitag
イエス・キリストが、ゴルゴタの丘の十字架の上で亡くなったのは、金曜日。
この日は教会へ足を運び祈る人、この日まで断食をする人、アルコールを控えるなど、人それぞれだ。
この日はお肉を食べず、代わりにお魚を食べるため、イースター前になると、料理番組も雑誌も、お魚のレシピが一気に増える。
こちらは、2020年のイースターに教会で頂いたキャンドル。
コロナの年を忘れないようにと、瓶に詰めて取っておいたのだが、まさか2年後も同じ状況とは、あの時は想像もつかなかった。

聖土曜日  / Karsamstag
夕方になると、広場に山のように積み上げられた木に、点火される。
これが、復活の焚火 Osterfeuer と言われているものだ。

この焚火は、日曜日の夜に行われる場所もある。
翌日のキリストの復活に向けて、焚火は人々に光を与える意味があるそうだ。
そして、もう一つの意味も含んでいるようだ。
焚火の頂上には人形が飾られ、これは悪霊を表し、悪いものを取り除く儀式として、人形が焼かれる。
つまり焚火は、お祓いの意味もあるようだ。
広場には、小さな屋台が出る。
ビールを飲み、ソーセージを食べながら、焚火を囲うように輪になり、その炎を見つめている。
子供達のために、枝の先にパン生地を付けたものが配られ、それを小さな焚火で焼いて食べるのだ。
小さなバウムクーヘンのようだが、枝のパン Stockbrot と呼ばれている。
子供達は、まだかなあと言いながら、楽しそうに焼いている。

春の夜は、まだまだ寒い。
それでも、皆が焚火を囲みながら、いつまでもおしゃべりを続けている。
私にとって、その光景はとても新鮮だった。
風向きが変わると、その大きな炎が一瞬だけ顔を熱くする。
もうもうと立ち上る煙が、私達の体を包み込む。
私は何故か、お寺の香炉から立ち上がるお線香の煙を思い出していた。
焚火は光であり、またその炎の温度が、人々に暖かさを運んでくる。
焚火は、まるで太陽の代わりのようだなと、ぼんやり思う。

イースターの日曜日 Ostersonntag
死の3日後にイエス・キリストが蘇った事を祝う儀式がイースター 復活祭。
蘇った日は日曜日にあたるので、イースターサンデー Ostersonntagとなる。
パートナー曰く、カトリック教徒にとっては、クリスマスよりもイースターのほうが重要なイベントだそうだ。
なぜならば、イエス・キリストは、『蘇った』ことによって、神聖化したからだ。

子供達は、イースター前になると、卵を色とりどりに塗る。
復活祭当日には、卵を必死になって探し、見つけた卵を誇らしげに見せてくれる。
大人達も、卵をどこに隠そうかと言いながら、楽しんでいる。
自分達が子供の頃に卵を探したことを、思い出すのだそうだ。
子供の頃の思い出が、今を幸せにするとは、素敵な連鎖だ。

他には、子羊を食べる習慣もあり、イースターの子羊 Osterlamm と言われ、キリストの象徴だそうだ。
お肉ではなく、子羊の形をしたケーキを、その代わりにすることも多い。
私達は、イースターにちなんだお菓子作りをする。
子羊とうさぎのケーキを焼くと、子供達がワイワイと楽しそうに、チョコやアイシングを塗っていく。
その姿を見ていると、満ち足りた気分になるのだ。

他には、目玉焼きケーキ Spiegeleierkuchen や、にんじんを象ったスイーツなども作ったりする。
目玉焼きの黄身の部分は、アプリコット。
人参はマジパンで、土の部分はオレオを砕いて土に似せる。

イースターの月曜日 / Ostermontag
この日の特別な行事を、私もパートナーも知らない。
第二クリスマスの休日のように、特にお祝いはないけれど家族と過ごす日だと言う。

これが私の、イースターの4日間。

さて、日本では春が始まりの季節とされ、学校の入学式も4月だ。
ドイツの学校は、秋がスタートとなる。
その事をドイツの友達に話した時、まるで植物のサイクルみたいだねと言われた。
しかしドイツも、春にはキリストが復活し、新たな時代が始まると言えるのではないだろうか。
キリストの復活のように、花も木々も、長い冬の眠りから目覚めた。
春の女神は、暖かい太陽の日差しを私達に届け、小鳥は至る所でさえずっている。
イースターは、冬を越えた地球上の全ての生物に対して、希望や力を与えてくれると感じるのだ。

大きく腕を広げ、目を閉じる。
太陽の方角へ顔を向け、大きく深呼吸を繰り返す。
植物に変身し、自分がまるで光合成をしているかのような、不思議な気持ちになる。
植物のサイクルみたいだと言った友達の言葉が、ふと頭をよぎる。
サイクルだけではなく、自分が植物になった気分になるなんて、おかしなものだ。

目を閉じていても、圧倒的な光と熱で、太陽はその存在を主張する。
厚い雲の上にも、太陽はある。
そして、美しい虹も、太陽によって生み出される。
光は、すなわち希望。
イースターにまつわる様々な象徴が、この言葉に吸い寄せられるように結びつき、集約されていく。
いつの日か、希望を失いかけたならば、私はイースターを思い出し、静かに太陽を見上げよう。
 
Frohe Ostern
イースター、おめでとう!


 
 

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