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こだわらないための3秒ルール

約20年前、鍼灸院を開業してしばらくした頃に、失敗から学んだことがありました。

患者さんを治療しようとしていたところ、別の患者さんが来院しました。とても急いでいる様子で、何とか先に治療してほしいと頼まれました。世間的な地位の高い方だったのですが、私は治療院のルールですからとお断りをしました。しばらく押し問答が続き、だんだん私も感情的になり、売り言葉に買い言葉で言わなくてもいいことを言ってしまった気がします。結局、かなり怒って帰ることになりました。

私の対応には失敗がありましたが、お断りしたことに関しては、間違った判断ではなかったと思っています。ただ、さらに大きな失敗はこの後でした。

お待たせしていた患者さんに、言葉だけのお詫びをし、治療を始めました。私の頭の中は怒りでいっぱいでした。普段であれば、体調や仕事のことなどいろいろ問診し、できるだけいい雰囲気で集中して治療を進めなければなりません。しかし、その時の私にはできませんでした。何も言わず黙々と治療を進め、頭の中には治療している患者さんのことが、ほとんどありませんでした。

そんな時、その患者さんに「先生も大変だね。」と言われました。

その瞬間は何も感じなかったのですが、患者さんが帰った後、一人になって、その言葉の意味を自分なりに解釈し本当に恥ずかしくなりました。

私にどんなトラブルがあろうと、私の気分がどうであろうと患者さんには何の関係もありません。そもそも患者さんは、体の調子が悪い中、貴重な時間と経費を使って来院しています。集中して治療できていないばかりか、患者さんに気を使わせるとは言語道断です。いくら普段、偉そうなことを言っていても、いざというときに行動が伴わなければ意味がありません。

その時に、自分なりに猛省し、具体的な対策を考えたのが「こだわらないための3秒ルール」です。

患者さんの治療を終了した後、3秒で完全にニュートラルな精神状態に戻すというものです。卓球やテニスなどで左右に振られた後に、次のプレイに備えポジションを中央に戻すようなイメージです。

このルールを守るためには、普段の練習の積み重ねが必要です。喧嘩をした時、誰かに思いっきり怒られた時など、3秒で気分を変える練習をしておきます。

相手を論破することや、ただただ怒り、恐れ悲しむのをやめ、自分の気分をコントロールすることに集中します。勇気を持って気分を良く保つことに挑戦します。それができるようになることが、本当の意味の成長かもしれません。

ものすごく時間をかけて一生懸命努力したことを、全く何もしていない人に痛烈に批判され、多くの人もその批判に納得したとします。この時が、チャンスです。私の場合は3秒以内に、キャッチフレーズである「今を楽しく」が頭の中に鳴り響きます。


どんなに相手が理不尽であろうが関係ありません。本当の意味で、私の気分に直接影響を与えることはできないはずです。絶対に私の気分は、私が決めます。必ず誰にでもできます。それが最高の権利だと信じます。

この頃では、練習する機会を待っているためか、めっきりトラブルが起こらなくなりました。お陰様で患者さんやスタッフにめぐまれ、楽しく暮らせるようになりました。

失敗をしたことで、大きな財産を手に入れることができ、今ではとても感謝しています。

#あの失敗があったから

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