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Family History ②〜ハイカラさんの恋〜

おいでませ。玻璃です。

前回の続き。

借金とともに牧場を継いだトメ。
慣れない仕事とお金のやりくりに追われる毎日。

そんな時に一人の男性と出会った。
市内の警察に転勤で来た男性。
どのように知り合ったかはわからないが、毎日働きづめで疲れたトメの心にスッと彼が入ってきたのだろう。
トメは初めての恋に胸のときめきが止まらない。
気がつけばトメは彼の子を身ごもっていた。

だが、彼には家庭があった。

トメは一人で子供を産むことを決意し、産まれた子は男の子。名を博正とした。

子育てをしながら、さらに家業に精を出し働いていたトメ。
当時シングルマザーで子供を育てることは風当たりも強く本当に大変だったと思う。

そして、トメに二度目の恋が訪れた。
牧場に牧夫として働いていた辰一との運命の出会い。
この出会いのおかげで今の私がいる。

トメは博正を連れ、辰一と結婚。
辰一との間には昭子、陽子が産まれた。
昭和の子と書いて昭子(あきこ)が私の母だ。

トメはその後も辰一と共に牧場や牛乳屋を営んだ。
生さぬ仲の博正と辰一はうまくいかず、取っ組み合いの喧嘩もしばしば…。トメは随分苦しんだという。
そんなこともあり、牧場と牛乳屋の業務は博正に半分譲った。
トメの営む牛乳屋の業務も軌道に乗り、商売は順調だった。

全てうまくいっているようなトメの生活も、辰一の浮気が発覚し暗い影を落とした。辰一は皆が認めるイケメンさん。とにかくモテた。

牛の買付けに行った時に泊まった宿の仲居さんと恋仲になった辰一は、帰らない日もしばしばあり、とうとう腹に据えかねたトメは牧場や牛乳屋での収入を辰一に一銭も渡すことなく、追い出してしまった。

辰一からしてみれば、当時の男性陣の考え方で「ただの浮気だろ」という気持ちがあったようだが、トメにそんなことは通用しなかった。

その後も父、保次郎の商売に対する勝負師の血がトメの中で騒ぐのか、牧場と牛乳屋は博正に全部譲りその広い土地に旅館を建てた。

これから先は我が母、昭子の人生に大きく関わってくるので、詳しくはその時に…。

トメは後年、娘の昭子の見合い相手だった教師の男性と付き合っていた。
もちろんこの昭子のお見合いは成立しなかったのだが。
この先生には私も会ったことがあるが、穏やかそうなイケメンだった。
男女の仲は不思議なもので、この先生との恋を聞いた辰一は離婚していたにも関わらず、カンカンに怒って怒鳴り込んで来たらしい。

いのち短し 恋せよ少女
朱き唇 褪せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日の ないものを

いのち短し 恋せよ少女
黒髪の色 褪せぬ間に
心のほのお 消えぬ間に
今日はふたたび 来ぬものを

厳しく優しい祖母の恋の物語。
イケメン好きはDNAだったのか。

ではまたお会いしましょう。

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