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銀河鉄道に乗って②

おいでませ。玻璃です。

姉妹の中でも一番一緒にいる時間の長かった舞姉さんとのお留守番の話。

その時に住んでいたのは海沿いのカーブの国道に建つ小さなアパート。
アパート前の国道を走る車は、スピードを出したままカーブを曲がっていく。その国道を渡った向かい側に小さな商店があった。そこに舞姉さんと、カップ麺やおやつなどをよく買いに行った。

信号も横断歩道もないその道を、子供二人で渡るのはかなりスリリングな事だった。一歩間違えれば車に跳ね飛ばされて、数十メートル先までふっ飛んでいきそうだ。
交通事故はもう懲り懲りな舞姉さん。
二人は固く手を握って、

「玻璃ちゃん、手を引いたら姉ちゃんと走るんよ!」

舞姉さんは慎重に車の切れ目を狙う。
車が切れたその時

「走れ!!」

とグイっと私の手を引っ張る。
私は息を止めて、これ以上ないくらいの全速力で転びそうになりながら、ゴールのお店の入り口まで一気に走った。

やっとの思いで店の扉を開けて、ぐるりと店内を見渡すといつも通りのカップ麺とおやつを購入する。

ホッとしたのも束の間、今度は帰りの恐怖が待っている。
帰りはカーブの向きが反対になるので、遠くからの車を確認するのが難しい。
舞姉さんは身体の全細胞を研ぎ澄まし、五感をフル回転させた。そして・・・

「玻璃ちゃん、もう一回行くよ!
よし、今だ!!」

渡り終わったそばから、ビュー――ンと何台も車が走り去る。
今回もセーフ・・・。生き延びることができた。

さて、部屋にたどり着いた私たちは、カップ麺のお昼ご飯にありついた。
ところが、小さい私は

「あっ!」

カップ麺をひっくり返して自分の足にかかってしまった。

「熱いよ~!痛いよ~!」

舞姉さんは、泣き叫ぶ私を抱いてお風呂場でやけどをした足にジャージャー水をかけた。
急いで実家の旅館に電話をして母を呼んだようだ。

すっかり自信を失った舞姉さん。

「いつまでこんなことが続くんだろう・・・」

自然と涙があふれてきた。

そんな時、
ガタンゴトン、ガタンゴトン ポーーゥ!

アパートのすぐ後ろには線路があり、日に何度か列車が走る。
列車が見える窓際に行き、走ってゆく列車を見るのが日課になっていた。
そして舞姉さんは、その度に貯金箱をひっくり返した。

ジャラジャラン・・・。
お年玉の残りのほんの数枚のお札と、何種類かの小銭が出てきた。

「これを全部使って列車の切符を買おう。そして玻璃ちゃんとどこか遠くに行こう。そう、できるだけ遠くに・・・。」

舞姉さんは何もかも嫌になっていた。
上の姉さんたちや他の家族と離れて暮らすことも、学校から遠くなったことも、妹の面倒をみることに失敗してしまったことも・・・。

実家では、ちょうどその頃、祖母トメが体調を崩して入院してしまった。
病気はよくなったものの、無理はできないということで、母、昭子が旅館の女将を継ぐこととなった。
それをきっかけに私たちは実家の旅館に戻ることになった。
いろいろやらかしてしまった父、洋平も一緒に。
この続きは次回。

ではまたお会いしましょう。



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