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誕生日おめでとう、私

おいでませ。玻璃です。

1969年4月3日木曜日 18時頃
私は故郷の産院で四人姉妹の末っ子として生まれた。

この退院時に撮った写真の母は新しい命の誕生を喜び、心躍る表情…とは少し違う。
うっすらと微笑みを浮かべてはいるもののやや憔悴し屈託のある表情だ。

私が誕生して、先生から母方の祖母に話があった。
その内容を祖母は産後の母の身体を案じて先生にも口止めをし、家族にも黙っていた。

だが初めての授乳の時、母は知ってしまう。
産んだばかりの小さくて愛しいわが子。
産着をめくると右手の中指と薬指、右足の親指から中指がくっついている。
母は自分の目を疑っただろう。
その後、母はショックを受け半狂乱になったという。
それを見た祖母は混乱し、その時にそこにいた2番目の姉、月子姉さんが母に妹の手足のことを告げたと姉を強く叱責したらしい。完全なる濡れ衣だ。
そして、1番上の姉、さゆり姉さんに祖母は「あきちゃん(母の事)が臨月まで車の運転をしていたからこんなことになった」と、全く訳の分からないことを言いはじめ、まさに我が家の大事件となった。

『合指症』
隣り合う指が癒合する先天異常。 
1,000人から3,000人に1人の割合で出生する。

こうして今ならネットですぐに調べられるし、ChatGPTに尋ねたらどんな病気でどのような治療があるか事細かく教えてくれ、母も家族ももう少し冷静になれたかもしれない。

私は産院を退院後しばらくして大学病院に行き、手の指は切り離すことができた。
足の指の手術は成人して身長が伸びきるのを待ってからと言われたそうだ。

いろんな場面で人と違う手足が恥ずかしく悲しい思いもした。
21歳の時に足の指を切り離し神経をつなぐなど、なかなか大変な手術もした。
今思えば、当の本人の私以上に母は切ない思いだったのではないだろうか。

でも手術のおかげで手はペンやお箸も使えるし、足は足袋や草履だって履ける。
23歳で挙げた結婚式では、夢だった白無垢も色打掛も着ることができた。
趣味のよさこいでは足袋スニーカーで激しい踊りを踊ることもできた。
心配していた子供や孫への遺伝も今のところない。

せっかくの誕生日。
もっと楽しい話題にしたかったが、自分史を語るうえで避けては通れない話。

振り返ってみると、神様からみんなと同じ形の手足はもらえなったけど、それ以上のたくさんの幸せはもらえた気がする。

結果オーライ。
今日とても素敵な誕生日を迎えらていることに感謝。

お誕生日おめでとう、私。

ではまたお会いしましょう。



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