「やることがないから介護職」を待遇面の改善によってなんとかしてほしい

前回デイサービスに見学に行ったときのことを記事に書いたが、あれからなかなか一歩が踏み出せずにいた。

実際に施設を見学して、介護現場で働きたい意欲が生まれたかというとそうはならなかった。施設は普通だった。特に悪いところがあるわけでもないし、一般的な施設なのだと思う。じゃあ、今の仕事を捨てて、その世界に飛び込む価値があるかと問われると、「ない」と思った。

わたしは少し介護業界に期待しすぎていた。
「その人がその人らしく生を全うし、最期まで尊厳をもって生きられるようにケアをしていく」という理念を掲げた施設は多いけれど、じゃあ実際にどうなんだというと、慢性的な職員不足の中で、なかなかその理念を実践できている施設は少ないわけで、それは施設長の考えによっても大きく左右されるように思う。

最近、自宅からそう遠くない場所に、とても面白い試みをしている団体があって、重度身体障害者を含む訪問介護、デイサービス、高齢者向け賃貸住宅などの事業をしているのだが、「社会の多様性」を大切にするその組織のトップの人柄、姿勢、考え方に深く共感する部分が多く、「この団体で介護の仕事に携わりたい」と思った。

色々調べて、やはりりとても魅力的でわくわくするような介護サービスを提供する事業者で、介護職員の待遇改善についても積極的に動いている。
そうは言っても、この団体で正職員またはフルタイムの非正規職員として働いた場合、今の給与の半分で、どうやったって貯金を切り崩しながらの生活になってしまう。

この団体を見つけたときは、もう働きたい気持ちが強くて、貯金を切り崩しながらやればいいじゃないかと思ったが、少し落ち着いて冷静に考えると、それでは結局長く続かないことは明らかだった。

給与が年々上がっていって、3年くらいで貯金を切り崩さなくて済むようになればいいけれど、介護報酬は国によって決められているわけで、大手企業のように毎年ボーナスが出て給与が上がる仕組みにはなっていない。
この給与問題はもはや一介護事業者がなんとかできる問題ではないのだ。

そう考えると、結局介護の仕事に就くことができる人は、①専業主婦②持ち家のある人③実家に住んでいる人、に限定される。

都内で独り暮らしをしながら生計を立てるとなると、毎月長時間の残業をしない限りどう考えてもやっていけない給与額なのだ。

同じ年代の友人が今年からヘルパーの仕事をしているが、朝7時半から夜18時、19時頃まで昼休憩なしで利用者宅を訪問して、月給25万だそうだ。これはヘルパーとしてはかなり良いらしい。
でも、1日10時間~11時間働きづめでこの給与ってどうなのよ?とわたしは思う。結局残業代込みで25万なわけだから、これって労働の搾取以外なにものでもないと思うのですが、、。

だから彼女のモチベーションはとても低い。やることがないから介護をやっている。他にできる仕事がないから。本人も「こんな仕事長く続けられない。体力がもたない」と言っている。
だから彼女の職場の離職率もものすごく高い。

一方で、高い理想とモチベーションで介護の仕事をしている人もいる。こういう人はきっと民間企業で別の仕事についたら今の2倍とか3倍の給与がもらえるのだろうけれど、あえて介護の仕事をしているのは、介護の仕事自体に魅力を感じ、人生における「楽しさ」や「やりがい」や「充実感」を大切にしているのだと思う。

この介護業界の4K(きつい、汚い、危険、給料安い)問題を考えると、介護職に期待しすぎるのもいかがなものかとも思う。
虐待する人とかはもはや論外なのだけれど、4Kでモチベーションを保てとか、技術を磨けとかいうのも土台無理な話で、せめて待遇面の改善だけでも早急になんとかしないと、「やることがないから仕方なく介護職」という人で溢れる気がする。

この待遇面の問題は、質の高い介護職を継続雇用する上で避けては通れない。国は建前は介護職の給与をもっと上げてとか言っているが、実際は社会保障費を抑制する方向に動いているので、政治自体を変える必要が出てくる。

結局、みな最後は誰かのお世話になるわけで、これはもう介護業界だけの問題ではなく、この社会に生きる人全員が、声をあげていかなければ、結局はめぐりめぐって自分に返ってくる問題なのだ。

3Kではあるが、待遇面が改善されれば、やりがいを求めて介護の仕事に就きたいと思う人も増えるはず。そうなれば、介護をする側もされる側もその家族もみなハッピーだ。

というわけで、平日フルタイムで別の仕事をし、週末1日だけデイサービスで働くことが今のわたしにできる最良の選択なのだと自らを納得させ、現実と向き合っている。




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