自作詩についての話 1

詩、というものはもちろん作者と読者がいて
抽象的である作品ほど読者によって解釈や感じ方が異なるものだと思う。
それが詩というモノの醍醐味であるし、私自身作者としてそれが楽しい。

しかしながら、作者である私個人として
一つ一つの詩に対してそれなりの思い入れがあり
個人的な出来事や情動が、短い言葉の中に注ぎ込まれているので
それがどんな捉え方をされていても、作者としてはこうです
という、ある種のメルクマールを提示することくらいは
許されるのでは無いだろうか、
と思い、この記事を書くに至った。

先に述べたように、読者の解釈を否定したり
侵害するつもりはなく
あくまで、作者側の意見として
制作秘話程度の気持ちで読んで貰えれば幸いに思う。

【鈴の音(りんのね)】
この詩を書くに至った大きな出来事は、紛れもなく祖父の逝去である。
幼い頃から夏と冬に遊びに行っていた祖父が
危篤だと聞いたのは、年明けすぐのことだった。
幸い、亡くなる前にどうにか予定をつけて
病床の祖父に会いに行くことができた私は
点滴の繋がれた、変わり果てた祖父の手を
握って声をかけることしかできなかった。

ちょうど、昨年夏に第一子が誕生したこともあり
日々の生活には溢れんばかりの生命力が迸る一方で
かつて、幼い頃に遊んだ祖父が
限りなく死に近づいている
そのコントラストを、どうしても詩にしなければならないと
迫られるように書いた。

タイトルを「りんのね」としたのは
葬儀の際、鳴らす金属製の仏具、鈴(リン)を想起させるためであり
加えて、生命の循環するさまを表す
「輪廻(りんね)」と音を似せたかったためである。

都合により、祖父の葬儀には出席することが叶わず
まだ線香の一つもあげられていない。
この詩が祖父への手向けになるとも思えないが
せめてもの恩返しとして、空で笑ってくれていることを
私は強く願う。


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