アル__1_

書き下ろし小説「アル」 第3話

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3点あらすじ

・施設の細かい説明から、男達のプロフィールがわかる。
・どうやら、男達は少女と面識があるらしい
・3人は無事この施設から脱出できるのか?

3


「まずは落ち着け。死にたくないだろ、お互いにな」
落ち着いたイーの一言で俺達と少女の方針が決まった。
一旦、俺達3人は小屋へ向かう事にした。
「確かに小屋の位置まで教えるのは危険なのかもしれない。ただ……」
もちろん、小屋へ行く前に事態が変わったら臨機応変に対応する。
俺達含め少女もそうかもしれないが……。
体力のないイーは、くたくたした様子で提案した。

「2人とも聞いてくれ。ともかく、情報整理と水分補給だ。まず、最優先すべきはそこだろう。それになんだ、私は喉が渇いてしかたない。後熱っぽい」
「イー、大丈夫かよ。わかった。このガキがなんなのかまず、知らなきゃな」

「ガキとは何だ!沢田は立派なR-18だぞ!!合法だ」
「存在が違法だろ。どうみても、中学行く前の……」
「むきーー!」
いくつか疑問点があり、少女の情報を俺達は全力で知りたかった。
伝えたかった事についてもわからずじまいである。

白塗りの小屋に入ると、干し草とすえた汗の匂いがした。少し無理して早く歩いたからか、心音が高まり、五感が研ぎ澄まされる。イーや沢田はくたびれていて、イーは顔色は変わらなかったが、息が荒かった。

「……うっ。沢田は鼻が敏感だから、ちょっとこもってるのでも匂いがしんどい」
「なんだ?」
「臭い」と俺を指差した。「パパだったらタバコは吸わないから」
「ふんっ」
俺達3人は居間のテーブルに座り、それぞれコーヒーを飲みながら話しをする。


少女が始終、椅子の背もたれに重心をのせて、ガタガタと前後に揺らしていた。
「まずは俺達に何を伝えたいんだ?」
「助けて欲しいの」と少女は言った。コーヒーを熱がって、ふうふうと冷ましながら。
「は?今のこの状況わかっていってるのか」
「うるさいなー!事態は一刻を争うんだ」
「俺達はー、争わないの。考えてみろ、3人の内2人が死んだらこの施設から出られんだろ。あの天井の文字通りならよ。普通に考えたら、1番楽にしやすいのは……」
「楽とかそんな物騒な事言うなよ、ぶっ殺すぞ」
「お嬢さん。君が物騒な事言ってどうする。アルもかっかせず、この……」
「沢田」
沢田?……どこかで聞いた事があるような気がする。
「どうした?」沢田がずいと俺の顔を覗き込む。
「ん?いや、イー・アルと来て沢田……なんかしまらねぇなって」あわてて俺はごまかした。
「沢田に不服か!?身内には喜ばれてるんだぞ……パパとママだって……あーじゃなかったら」と、発言した後でグッと睨みつける沢田。

「……もしかして大事な人って両親の事なのか」
「なぜわかった。天才か。いや、でもあなたならわかるのかも」
「天才じゃないのでわかりませーん」なぜだか、天才という言葉に俺は嫌悪感を持った。
「お願い、2人とも。私のパパとママを助けてほしいの」
沢田は俺を見つめる。
「死にかかってるの!」
「だからよー、聞けよ。それが俺達に何の関係が」と俺がもっと沢田から情報を聞き出そうとした時。
新たな異変が起こった。
「うぐっ!?げほっ」ひどいえづきをし、イーの手から血がこぼれる。

続く

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