【超短編小説】年雄、話を盛る

仕事のお昼休憩の時、年雄は20歳も年下のバイトくんと話をしていた。

話が終わったあと、年雄は思った。

"またやってしまった"

年雄が話した事は事実だが、少しだけ盛って話した。

ほんの少しだけ。

話の内容はこうだ。

「中学の頃は、俺もちょっとヤンチャしててさ。高校受験の時、受験会場で他校の生徒とウチで大喧嘩になったんだよ。向こうは50人。ウチはたった7人。勝ち目のない喧嘩だったんだけど、向こうの番長を見つけてぶん殴ったら、戦意喪失しちゃって、奇跡的にウチの中学が勝ったんだよ」

事実だ。本当にあった話。

ただ、盛っている。

まず、受験会場での大喧嘩・・・受験会場ではなく、受験の帰り道。

向こうは50人・・・10人くらい。

勝ち目のない喧嘩・・・なんとかなりそう。

番長を見つけて・・・たまたま殴った相手が番長だった。

この話は・・・年雄が友達から聞いた話。

年雄はつい話を盛ってしまう。

悪い癖。

浜本年雄40歳。

今回は、メガ盛りサービス。

なんちゃって。

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