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もっと短歌が上手くなりたい人のヒントになりそうな(短歌じゃない)本

短歌を作るとなんとなく「もっと短歌が上手くなりたい」という気持ちが出てくることもあると思います。そんなときに初心に戻って入門書を手にしてみると「意外と知ってることも多いな〜」と感じる人もいるかもしれません。そこで今回は、目先を変えて、短歌関連以外のジャンルから短歌を作るうえで新たなヒントになりそうな本を紹介したいと思います。

ちなみにこんな人におすすめです。
▶︎せっかくだからもっと短歌が上手くなりたい。
▶︎入門書を読んでみると結構知ってることも多い気がした。
▶︎表現技法(レトリック)の幅を広げるコツが知りたい。

「自分の言葉」で人を動かす 木暮太一(文響社)

この本で書かれていることはかなりシンプルで、「自分が教えたい(これを知ってほしいと思ったこと)を伝えなさい」という一点を起点に述べられています。
基本的には対人コミュニケーションやプロモーションを念頭においた本なので、これを読んですぐに表現に落とし込むのは難しいでしょう。

ただ表現の初期衝動の一つには「聞いて!」とか「こんなことがあった!」と言った体験や心情を外に出したいという願望があると思います。それが短歌という限られた形のなかに収めようとすると、言いたいことのコアとわかりやすく想像できる情景の描写で仕上げてしまうことがしばしば起きます。どんな言葉をチョイスするかや実際に見た情景を作品として再構成することは、一読してわかる作品へと洗練させるという点では必要な作業ですが、一方で洗練化によって失うものも少なからずあるでしょう。
そういった観点から、もう一度「わたしを通過したもの」を呼び起こし言葉にするという点でヒントになる一冊だと思います。(2・3章あたり)

レトリック感覚 佐藤信夫(講談社学術文庫)

学術文庫ということで難しそうなイメージがありますが、読み始めると発見の多い一冊です。割合としては、短歌でもよく用いられる「比喩表現」について多くページが割かれています。

とりあえず読んでほしいのは第一章「直喩」です。直喩は「〜のようだ」というタイプの比喩のことで、距離のある語と語のイメージを結びつけ、新たなイメージを生むという働きがあります。ここで直喩の面白さを多く語るのはもったいないのでぜひ読んでみてほしいです。

ふと入口のはうをみると、若い女の人が、よりの飛び立つ一瞬前のやうな感じで立つて私を見てゐた。(太宰治『メリイクリスマス』、本書より孫引き)

文体練習 レーモン・クノー(朝日出版社)

この本には、同じ内容の出来事を99通りの方法で書き分けた文章が掲載されています。いわゆる役割語(一定のキャラクターを想像させる言葉づかい)だけでなく、どの時間帯や立場から出来事を見て描写するかの書き分けも見ることができ、「文体」の懐を垣間見ることのできる一冊です。(ちなみに原著はフランス語であり、それを日本語に翻訳するという困難を乗り越えていることにも驚く)

短歌の文体といえば、「文語口語・新かな旧かな」と言った部分に焦点が当てられがちですが、そこからさらに踏み込んでいくときの手掛かりになると思います。

〈追記〉

〈文体練習〉という手法については、文章以外にもコミック(マンガ)形式の一冊があります。こちらはジャンル別の作風はもちろん、視点や時間経過の描き分けがなされていて面白いです。(なお前述の本のコミカライズというわけではありません)

以上、独断と偏見による紹介でした。面白そうな本があればまた紹介したいと思います。

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