20.05.09

海底に鯨の影は下りながらエレベーターにわれは眩暈す / cell 44第17回天国歌会(百首会)で作った短歌

鯨の影は大きく、それが迫りくるときの存在感には圧がある。オノマトペで言えば、「ぐっ」とか「ぬっ」とか、そういう体感がある。

エレベーターが下の階に降りていく時も、これに似たような圧迫感がある。歌ではエレベーターの動きは明示されていないが、〈海底に(鯨の影は)下りながら〉という表現から、この〈エレベーター〉も下への動きがイメージされる。その時の圧迫感に、思わず浮遊するような感覚とともに眩暈が呼び起こされる。

大きな景色と身近な状況を組み合わせながら、そのギャップによって違和感を生じさせる方向へ行くというよりも、なめらかに接続する融合の感じに目をひかれる。たゆたうようなゆったりとした一首である。

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