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「短歌入れれます」一首評・3/5

「火星なら変な形がモテる」って笑ったきみのうさぎパンツ /野村日魚子

〈「火星なら変な形がモテる」(と言)って笑ったきみ〉が履いていた〈うさぎ(の)パンツ〉と読みました。履いていたは所持しているでもいいかもしれないのですが、「火星なら変な形がモテる」という発話はリアルタイムで出てきたような説明の口調の印象がありながら、〈笑った〉でいったん現在進行的な動きが止まり、そのまま視点は〈うさぎパンツ〉へとフォーカスしていきます。ここには、なんらかの経緯で〈きみ〉にパンツを見せられたシーンがあります。
〈火星なら〉という前提の突飛さや〈変な形〉を〈モテる〉と肯定していく姿は世界の均衡を崩すような働きがありますが、〈きみ〉が〈笑った〉というところから、〈きみ〉がその突飛さに対して本気なわけではないというちょっとした安堵があります。
〈うさぎパンツ〉はウサギのイラストがついているパンツを想像したのですが、イラストの場合は柄というほうが的確で、それを〈形〉というところの把握にも気持ちの余裕があるように思います。

省略が多いので、〈「火星なら変な形がモテる」って(私は)笑った(。)きみのうさぎパンツ(を見て)〉という読みも不可能ではなく、こちらは暴力性を孕んだ二者間の関係が立ち上がります。

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