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ダブルブッキングデート

ひかる:ねぇ○○くん?

天:○○さん?

「「これは一体どういうこと?」ですか!?」

○○:oh……。


最高峰に可愛い先輩と後輩が、その欠片も感じさせないほどの形相で俺の方を向いているんですけども。

これが言わゆるDead endってやつですかね。

どうしてこうなってしまったんだ···。



俺の家系は裕福ではない。
両親の負担を減らすために講義が行れていない時はバイトに明け暮れている。
容姿も大して優れている訳でもないし、頭もそれほど良くない。
そのせいか、友達も指で数えられる程度である。




--2週間前--

○○:今日も朝まで頑張った、偉いぞ俺。

??:○○くん、今日も眠たそうだね。

○○:···森田さん、おはざっす。

ひかる:出た、スポーツやってた人特有の挨拶笑

○○:あ···すみません、気をつけます。

ひかる:気にしなくていいのに笑
あと、そろそろ名前で呼んで欲しいなぁ?

そういって森田さんは上目遣いで見上げてくる。

○○:っ///善処します···。

森田さんとは入学してまもない頃に出会った。
仲良くなった経緯は割愛するが、今となっては数少ない大切な友人である。
ちなみに森田さんは学内でとてつもない人気を誇っており、噂によれば毎日告白されているのだとか···。
俺と話している今でさえ、周囲からの男の視線が凄い。
確かに可愛すぎるけど。
俺がイケメンであれば勘違いしてすぐにでも告白していただろう。

ひかる:どうかした??

そう言って首を傾げる仕草ですら、後ろで死人が出るレベルで可愛い。

○○:いや、別に何も。

ひかる:そっか、あの···さ、○○くん?

○○:はい?

ひかる:バイトがお休みの日ってある?

ギチギチに詰め込まれたシフト表から空いてる日を絞り出す。

○○:えっと···確か再来週の日曜日なら休みですね。それがどうかしたんですか?

俺が聞くと、森田さんは頬を赤く染めながら俺に話し出した。

ひかる:もしよかったらさ、「2人きり」で一緒にお出かけしたいなあって///

○○:ゑ。

ひかる:ちょっとこれみてくれん?

森田さんから渡されたスマホを見ると
「今だけカップル限定♡スペシャルパンケーキ」
と書かれた広告を目にした。

○○:ふむふむ···俺の目にはカップル限定♡スペシャルパンケーキってのが見えたんですけど。

ひかる:うん///

○○:まさか···。

ひかる:私、彼氏いないし仲良い男の子も○○くんしかいないから···///

○○:俺でよければ全然行きますよ、普段世話になってる身だし。

ひかる:ほんと!?やったあ。


そう言うと森田さんは満面の笑みを浮かべた。
うん。可愛い。天使。

○○:にしてもひかるさん、パンケーキ好きだったんですね笑

ひかる:ま、まあね〜?って!?今名前で···//

○○:?。ひかるさんが名前が良いって言ったじゃないですか。

ひかる:それはそうですけどもお···ズルイ///

○○:何か言いました?

ひかる:なんも無い!//じゃあ、再来週は××駅前集合ね!

○○:了解です!

それまでに生きてればの話だけどネ

男1:アイツ···森田さんとお出かけだと!?

男2:許せん···今この場にひかるちゃんが居なければぶっ○してやるところだった。 

男3:我らが非公式森田ファンクラブの前で堂々とひかる様と密会の約束をするとは、その度胸だけは買ってやろう。

あ、やっぱ無理かも。

--1週間前--

○○:過労死寸前★

??:○○さ〜ん!

○○:おっ天か、おはよ。


天:おはようございます!っていつも以上にひどい顔笑

○○:さすがの俺でも傷つくぞ?

天:あはは、すみません笑

天は後輩で、半年前に出会った。
生意気でいつも何かと俺に突っかかってくるが、妹感があってついつい甘やかしてしまうことが多い。
モデルをやってるらしく、ひかるさん同様に陰でファンクラブが設立されているらしい。

·····なんで俺に話しかけてくる女性は可愛い人ばかりなんだ、いい加減勘違いしちゃうゾ。

天:今日も眠たそうですね〜。休みとかないんですか?

○○:ん〜、確か来週の日曜日が休みだったような···?

天:ほんと!?じゃあその日一緒にデート行きませんか!
「2人」で行きたいとこあるんです!

○○:言い方!デートって笑
まあ別にいいけど。

天:ほんとですか!?やたー!!

無邪気な笑顔の天を見ると、バイトの疲れも吹っ飛びそうだ。

待てよ···何か大切なことを忘れている気がする。

○○:ちなみに、どこ行きたいの?

天:ここです!

天が見せてきたチラシには「今だけカップル限定♡スペシャルパンケーキ」と書かれていた。

う···どこかで見たことある気が···。

○○の脳は疲弊しきっており、ひかるとの約束が頭から抜け落ちていた。

○○:天、これカップル限定らしいぞ?

天:わたし彼氏いないし?他に誘える人いないも〜ん。

絶賛後ろで男どもが手を挙げて立候補してるぞ。
とは当然言えるはずもなく···

○○:分かった、可愛い妹分の頼みとなりゃあ行きますよ。

お前らに天は預けられん。


天:あー!またそうやって子ども扱いする!!

○○:そう怒んなって。

子どもをあやす様に天の頭を優しく撫でる。

天:〜〜♪♪···ってもう!!///

○○:笑笑

天:待ち合わせは××駅前ですからね!!

○○:了解〜。


--デート前日--

今日はバイトが22時までだったので、久しぶりに家で
ゆっくりと過ごしている。

明日は久しぶりの休みだ···思う存分寝てやる。

なにか大切なことを忘れている気がするが···まあいいだろう。
おやすみ、お疲れ様、オレ。

なんて思っていたのも束の間、スマホにほぼ同時に2件のLINEが送られてきた。

ひかる:「この前も言ったけど、明日は12時に××駅前ね。
○○くんと2人でお出かけするの、久しぶりだから緊張するなあ笑
疲れてるやろうし今日は早く休んでね?
おやすみなさい。」

天:「○○さん!明日が楽しみで今日は眠れそうにないです♡なんて!笑
お財布ちゃんと持ってきてくださいよ〜?笑
12時に××駅ですからね!おやすみなさい!!」


○○:あ·····。

全部思い出した。

アカン、やってもうた。

どうしよ···。

--当日 待ち合わせ30分前 ××駅にて--

ひかる:あれ?天ちゃん??

天:え?ひかる??

ひかる:珍しいね、お休みの日に会うなんて笑

天:確かに笑
待って、ひかる···いつもに増してすっごい可愛い!!
新しい服買ったんだ?待ち合わせ??


ひかる:そうなの、ちょっとね···///

天:さては···ニヤニヤ

ひかる:·····コクン///

天:あのひかるがねぇ···笑

ひかる:うぅ···//そ、そう言う天ちゃんこそ!
いつもよりも大人びてるって言うか、すごい綺麗···。

天:わ、わたしもちょっと···///

ひかる:天ちゃんも隅に置けないじゃん笑

天:あはは···//ひかるのお相手さんはまだ来ぉへんの?

ひかる:うーん···もうちょっとやと思うんやけど。

天:そっかあ、わたしも〜。

なんて2人が会話をしてると、○○が息を切らしながらやってきた。

○○:ご、ごめん!遅れた···ゼェハァ

「「あ、○○くん」さん」!

ひかる:全然大丈夫だよ?私も今来たとこやし。

天:そうそう、○○さんを待つ時間も好きなんだ〜♪

ひかる:分かる笑

天:だよね!

「「·····ん??」」

○○:お、お待たせ「2人」と···も···。

俺が現在作れる最大級の笑顔で話しかける。

だが···

「「は·····??」」



ですよね·····泣

--そんなこんなで冒頭に至る--

外で正座なんて生まれて初めてだ。
周囲の目が痛すぎる·····。

ひかる:どういうわけか、説明してもらうけんね?

天:返答次第じゃしばくで?

お二人とも方言が出てらっしゃる。
これマジで怒ってるやつだよな···まだ俺死にたくないんだけど···。

でも·····言い訳は男らしくねえよな。

○○:ごめん、大事な約束を同じ日にしてしまって。
昨日2人のLINEできづきました。
何言われても構わない、本当に申し訳ない。

誠心誠意の謝罪を2人に送る。

すると···

ひかる:そんなことだろうと思った笑

天:まあ···ね?笑

○○:え···?

ひかる:○○くんいつもバイト頑張っててあんま休んどらんやろ?約束してくれた時だって少しフラフラしとったし。

天:そーそー、断られてもしょうがないなって思ってんけけど○○さん優しいから。

○○:でも···

ひかる:せっかくやけ3人で行かん?

天:行こー!

○○:2人とも···ありがとう。

2人の優しさに胸を打たれながら、俺は立ち上がった。

--

天 ひかる:待って、じゃあ···ひかる(天ちゃん)の好きな人って···。

ひかる:天ちゃん、私負けないから。

天:わたしこそ、相手がひかるでも容赦せんで?

( `´)--*--(`´ )バチバチ

--目的地のカフェ--


ひかる:天ちゃん、○○くんの隣に行っていいよ?

天:いやいや、ひかるが行くべきだと思うなー?

店内に入るや否や、俺の隣の席をどちらが座らないかで争っている。
まさか俺嫌われてる?泣いてもいい??

○○:じゃあ2人が並んで座ったら··

「「それは無いでしょ」」

○○:あ、ハイ。

どういうことだ?

結局、ジャンケンに負けた天が俺の隣に座り、ひかるさんが目の前になった。

天:くっそ〜!

おい天、なんでそんな悔しそうなんだよ。そんなに俺の隣が嫌なのか!?

ひかる:えへへ···///

逆にひかるさんはなんでそんなに嬉しそうなんだ!?

鈍感な○○は気づく余地もない。
男女の食事の醍醐味と言えばアレだと言うことを
···。


---


店員:ご注文はお決まりでしょうか?

天:あれください!カップル限定♡パンケーキ!!

ひかる:わ、私も···///

○○:右に同じく···。

3人で注文すると、店員さんは困惑した表情を浮かべた。

店員:あの···カップル限定なのですが···。

天:○○さんと私はカップル(未来の)ですよ!

ひかる:いやいや、○○くんは私の彼氏(予定)だから。

「「むーーーーっ」」

○○:2人ともそんなに食べたいの?パンケーキ···。

ここまで来ると読者も呆れるほどの鈍感っぷりである。

店員:わ···分かりました。じゃあ、カップルの証拠を見せていただけませんか?

○○:証拠って?

店員:写真でも、スキンシップでも構いません。
この場でカップルだということを確認出来ればOKです。

ひかる:そういうことなら···!

ひかるさんは席を立ち上がり、俺の隣に来るや否や腕に抱きついてきた。

ギュッ

○○:ちょっ!ひかるさん!?///

ひかる:·····///

天:ひかるずるい!わたしだって···!!

ギュッ



○○:天!?///

両手に花とはこのようなことを言うのであろう。

店内のお客様の視線は俺たちに釘付けである。

店員:か···確認できました。少々お待ちください···。

若干引き気味になりながら店員さんは厨房に戻って行った。

が····

ひかる:天ちゃん、そろそろ離れたら?○○くん苦しがっとうよ??

天:そういうひかるこそ、自分の席戻らんでええの?

「「ギュウッ」」

○○:〜〜///

勘弁してくれ、一体何を張り合ってるんだ····。

俺の心臓が持たねえよ。

--

店員:お待たせしました、カップル限定スペシャルパンケーキで·····って、ええ。

○○:タスケテクダサイ。

プシュー///

結局、メニューが運ばれてくるまで2人が離れることは無かった。

天はたまにやってくるからいいとして、
ひかるさん···あなたもまさか甘えんぼキャラなんですか。
好きになってしまいますよ?

店員:女たらし···。

店員さんには助けてもらったが軽蔑された。

「「「いただきます」」」

カップル限定パンケーキは3種類味があるらしく、それぞれ違う味を注文していた。


天:うまい!

○○:天はほんと、美味しそうに食べるよなあ見てて気持ちがいい。

天:へへ···///○○さんに褒められた///

○○:食べてる横顔も凄く絵になるって言うか、綺麗だな。

天:ふぇ...///

天の顔がみるみる赤くなっていく。

天:隣の席も捨てたもんやないなあ///

○○:?笑

ひかる:むーっ····○○くん?

今度はひかるさんが俺に話しかけてきた。

○○:はい?

ひかる:はい、あーん····///



○○:え···//

ひかる:こっちも美味しいから食べてほしいなぁ···って///

○○:さ、流石に恥ずかしいですよ//

ひかる:私にあーんされるの嫌なんだ···グスン。

○○:食べます。食べたい。是非とも食べさせていください。

ひかる:だよね♪···はい、あーーん///

まさか嘘泣き?そこまでして食べて欲しいのか!?

○○:あーん···///ほんとだ、美味しい。

ひかる:でしょ!!···次は、○○くんのが食べたいなあ?///

○○:わ、分かりました//···はい、あーん···//

ひかる:あーん···///
これも美味しい!○○くんが食べさせてくれたけんかな?//
席も目の前でやりやすいしさ、食べさせ合いっこしよ?

○○:それはちょっと···//

正直アリ。

天:むーーーーっ。私もあーんしたい!!

○○:俺のが欲しいなら分けてあげるよ?

そう言って○○はパンケーキを切り分けて天の皿に移した。

天:ち〜が〜う!この!鈍感!!

○○:え、なんか悪いことした?

ひかる:○○くんには女心ってもんがほんとに分からんのやね。

○○:ひかるさんまで!?

--

「「「ご馳走様でした」」」

○○:この後どうします?

ひかる:うーん、今日のところは解散かなぁ?

天:そうですね。

○○:あら、意外と早いお開きっすね。

ひかる:○○くんにゆっくり休んで欲しいなあって。

天:同感。

○○:ありゃ、気を使わせてしまいました?

ひかる:ううん、○○くんが大切だからあんまり無理して欲しくないだけ。

○○:ひかるさん···。

天:そーそー!それに、一日中遊ぶってなったら2人きりが良いし///

ひかる:まあ次の○○くんの休みは私が占領するんですけども??

天:え、違うよ?わたしと一緒に遊びに行くんですよね??

「「むーーーっ」」

今日だけで何回みたか分からないやり取りをみて思わず笑い出してしまう。

○○:あはは笑
ほんと、2人ともありがとう。

ひかる 天 :こちらこそ!!

--解散後 ○○家にて--

あんなに可愛くて優しい友達が出来て、俺は幸せ者だ。

そう思いながら寝支度を整えていると2件のLINEが来た。

ひかる:「今日はほんとに楽しかった。
○○くん、ありがとね?
でも次は2人っきりで遊びに行きたいなあ···。」

天:「今日はありがとうございました!
次こそは○○さんと2人だけで遊びに行きたいので
予定、空けといてくださいね??」

○○:この子らほんと、モテるんだから彼氏でも作ればいいのにな笑

鈍感な○○に運命の選択を迫られるのは
まだまだ先のお話···。

〜fin〜















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