見出し画像

『廃坑』#4


⬜︎前回の物語は下のリンクから



⬜︎#4 寝れない夜



5.

 タバコが吸いたい。

 机の上にあった箱を手に取り、中から一つ取りだし
 た。
 ここにいた人のものか。
 人のもの吸うのいやだな。
 まぁいっか。

 鉄の高そうなライターも置いてあった。これ貰いた
 い。
 火をつけ、煙を吐き出した。

 虚しさを感じる。

 なんで俺AIと話してんだ。

 空気が冷たい。
 冷房効きすぎ。

 リモコンをエアコンに向け、停止した。

 なんでずっと付いてんだよ。

 この部屋には換気扇さえない。もちろん窓はない。
 今頃外は暗いんだろうか。

 煙が部屋に篭る。

 酸欠になりそうだ。

 夜の外の空気を吸いたい。まあ、いいや。

 時刻は3:34a.m.

 青いデジタル時計が部屋に光る。
 今は誰とも話したくない。
 こちら側から話さなければ話してこない。
 そういう仕組みらしい。

 少しお腹が空く。あのキッチンに行くにはあそこを
 通らないといけない。やめておく。

 しばらくこうしていよう。
 どうせ明日もなにもない。
 あるけど、行けないんだ。

 物音一つなく静まり返っている。

 隣の部屋の換気扇の音すら聞こえない。

 「マカルムさん、ビリーアイリッシュの新しいアル 
 バム流して」

 「わかりました」

 このくらいの音ならしんどくない。なにも耳に入れ 
 たくなくても。

 もう一服したい。

 手に取り火をつける。
 赤い光と青い光。
 火を消し、眠りに落ちた。

 深く沈んだ。








 はずが、途中で目覚める。音がウザく感じる。
 「マカルムさん、音楽消して欲しいです」
 「わかりました」
 「ありがとう」
 「はい」

 もう一度枕に頭を置こうと、あ、床か。
 …
 …
 あ、歯磨き。
 いやできないよな。ってかないか。新品の歯磨きと
 かないかな。まあ、明日倉庫から探してみるか。も
 う今日はいい。寝よう。


6.

 4:25
 クソがよ。また目が覚めた。
 「カサッ」

 ん?
 …
 なんか通った?
 え、最悪。

 まさか
 いやでも、そっち系の音ではなかった気がする。
 どこから。
 あの大きい鉄の箱から聞こえた。
 あのあたり。
 なにも考えずそこに向かう。
 やっぱり動いた。


 鉄の箱が動いた。

 「え、中にいますか。」

 恐怖心も何もない。むしろこちら側が侵入者だ。
 やけに肝が座ってる。
 深夜だからか。

 「マカルムさんですか」

 寝ぼけているからだろうか。いや、目が冴えていて
 もそう聞いたはずだ。

 直感。たぶんそうだ。

 …

 「開けますよ」

 …



 あ



 やっぱ人。
 なんかそう思ったんだ。ってなると、え、あの倒れ  
 てた人とどういう関係。何があった。
 きっと事件とかではない。何かあったんだ。
 やべえ頭パンクする。

 いや大丈夫、一旦落ち着いて話を聞こう。大丈夫、
 冷静になれ。

 そう自分に言い聞かせた。

7.

 続く



⬜︎続きは下のリンクから


※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?