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【新年200句】コロナ禍、年末年始も外出自粛で、ふと俳句でもと思った人のための、初めての俳句歳時記

年末の【冬500句】に続く新年版です

収録句数217句/154名

青空に青の七彩大旦 すずきみのる
元日のブランコ漕ぐは王様か 岡本信男
鷺白く鴉の黒くお元日 岩淵喜代子
元日は大吹雪とや潔し 高野素十
どのビルも箱のしづけさ大旦 佐藤郁良

波寄せて詩歌の国や大旦 大谷弘至
元日の開くと灯る冷蔵庫 池田澄子
元日や一系の天子不二の山 内藤鳴雪
天心の月の左右なる去年今年 井沢正江
籠編むや籠に去年の目今年の目 久米三汀

去年今年貫く棒の如きもの 高濱虚子
去年今年いのちつながりますやうに 小池康生
電球の中の真空去年今年 小林貴子
我をのせ廻る舞台や去年今年 上野泰
去年今年一と擦りに噴くマッチの火 成田千空

永遠の海と空あり去年今年 星野椿
父みとる母居眠りて去年今年 相馬遷子
深海に灯ともす魚や去年今年 大島雄作
燃ゆる火にひしめく闇も去年今年 木下夕爾
花火もて割印とせむ去年今年 和湖長六

卵割るやうに今年となりにけり 奥坂まや
三ヶ日早や過ぎ四日遅々と過ぎ 星野立子
正月の地べたを使ふ遊びかな 茨木和生
正月や過ぐれば只の日数のみ 石塚友二
正月日和母にうぶ毛を剃られけり 太田鴻村

正月の雨夜の客につぐ火かな 長谷川春草
人日の箸をせはしく溶きたまご 菊田一平
年立つて自転車一つ過ぎしのみ 森澄雄
この中に贋の新年詠がある 福田若之
煩悩は百八減つて今朝の春 夏目漱石

初春の風にひらくよ象の耳 原和子
酒もすき餅もすきなり今朝の春 高濱虚子
目出度さもちう位也おらが春 小林一茶
生くることやうやく楽し老の春 富安風生
昆布噛めば鰊現れおらが春 岸本尚毅

遊びたる昨日は遠き二日かな 星野立子
松過やバターめぐらすフライパン 小川軽舟
松過のがらりと変る人通り 星野立子
なんとなく松過ぎ福神漬甘き 岡本眸
松過ぎの又も光陰矢の如く 高濱虚子

三日はや猫遊ばする文の反故 利普苑るな
夕刊を夜更けて取りに出て四日 鷹羽狩行
お降りのまつくらがりを濡らしけり 岸田稚魚
お降りといへる言葉も美しく 高野素十
刃物みな淑気に満ちて台所 北大路翼

相聞のごとくに天地初茜 岩岡中正
初明りいま組み立てたやうな街 佐藤郁良
山が山を恋せし昔初霞 長谷川櫂
初空やよくぞ鴉に生れたる 岸本尚毅
初空のなんにもなくて美しき 今井杏太郎

初空や初日初鷄初鴉 正岡子規
太初には大陸ひとつ初御空 仲寒蝉
命より生まるるいのち初御空 鶴岡加苗
極東の一等国や初日の出 巌谷小波
大初日海はなれんとしてゆらぐ 上村占魚

武蔵野に明日は初日となる夕日 猪俣千代子
初日出て直ちに西の涯照らす 天野莫秋子
初日さすまつくらがりの町工場 平畑静塔
母もまたこの町に住む初景色 千葉皓史
美しくもろもろ枯れし初景色 富安風生

初富士のかなしきまでに遠きかな 山口青邨
初富士の暮るるに間あリ街灯る 深見けん二
初富士を得しどよめきの食堂車 浅野右橘
初富士の大きかりける汀かな 富安風生
丸きもの初日輪飾り鏡餅 正岡子規

鏡餅暗きところに割れて坐す 西東三鬼
筆始母といふ字のむつかしく 行方克巳
戀の字の糸のもつるる試筆かな 鷹羽狩行
門まつや冥途のみちの一里塚 井原西鶴
髯を畫く眼鏡の仇や歌かるた 会津八一

佳きひとの声音まぢかや歌かるた 桂信子
歌留多とる皆美しく負けまじく 高濱虚子
封切れば溢れんとするかるたかな 松藤夏山
歌留多よむことの上手な割烹着 石田郷子
歌かるた昔むかしの母の恋 鷹羽狩行

仕舞うてもかるたの歌の口をつく 田中裕明
歌留多読む恋はをみなのいのちにて 野見山朱鳥
二十世紀なり列國に御慶申す也 尾崎紅葉
あめつちの地のあるかぎり鍬始 鷹羽狩行
新しき独楽に添寝をせしことも あかぎ倦鳥

りんりんと独楽は勝負に行く途中 櫂未知子
初仕事去年の我よりメモひとつ 吉田林檎
どんどんやぬかるみを来し靴ばかり ふけとしこ
燃ゆるもの火のみとなりしどんどかな 加藤静夫
青竹の終ひは湯気噴くどんど焼 南うみを

真向ひの婆が火となるどんど焼 鈴木鷹夫
大言海割つて字を出す稿始め 鷹羽狩行
獅子舞の心臓ふたつもて怒る 大石雄鬼
獅子舞の口かちかちと喜べる 中本真人
獅子舞や蝶もつれあふごとくにも 長谷川櫂

舞ひ初めのかるき拳をやがて解く 正木ゆう子
凧の糸のびるばかりの怖ろしや 岸風三楼
凧上げの下手も上手も先づ走る 高澤良一
凧を手に祖母を埋めに行く子なり 今瀬剛一
海が見えしか凧下りて来ず 鷹羽狩行

凧なにもて死なむあがるべし 中村苑子
いかのぼり仕留めしもののごとく提げ 望月周
そこまでがこの世の高さいかのぼり 本宮哲郎
双六の振出しのまづ花ざかり 後藤比奈夫
少年老い易く双六上がりけり 佐藤郁良

見えてゐて京都が遠し絵双六 西村麒麟
妹を泣かして上がる絵双六 黛まどか
古稀過ぎて知る双六の面白さ 大牧広
双六の上がり全面核戦争 竹岡一郎
一番に上りてさみし絵双六 内田美紗

ばりばりと附録双六ひろげけり 日野草城
何の菜のつぼみなるらん雑煮汁 室生犀星
朝風呂へ雑煮の餅の数をきく 中村遠路
蓋あけて宝づくしの雑煮椀 能村登四郎
夜に入りていよいよ雪に宝舟 宇佐美魚目

宝船目出度さ限りなかりけり 高濱虚子
宝船敷いて夜更ししてをりぬ 町春草
宝舟すこしはなれて宝船 堀田季何
本丸の跡の広場の出初かな 加藤覚範
唄ひつつ母を廻れる手毬の子 伊藤通明

良寛の手毬は芯に恋の反古 宮坂静生
手毬唄それも忘るるもののうち 後藤比奈夫
手鞠唄かなしきことをうつくしく 高濱虚子
手毬唄おもひだすまでつきにけり 若井新一
数ふるははぐくむに似て手毬唄 片山由美子

手毬唄母の世に古りいまに古り 齋藤愼爾
年玉のまこと品よく小さなる 星野立子
年玉を妻に包まうかと思ふ 後藤比奈夫
かへらうといふ子にお年玉何を 上村占魚
山寺や高々つみてお年玉 飯田蛇笏

次の子も屠蘇を綺麗に干すことよ 中村汀女
初泣のすべては姉を恨みかな 中村汀女
老の知る老の淋しさ薺粥 遠藤梧逸
なまはげのひとり畦みち帰りけり 小原啄葉
なまはげの指の結婚指輪かな 中本真人

ははそはの母にすすむる寝正月 高野素十
寝正月大和島根の浮くまゝに 中島月笠
我も折れていはるるままに寝正月 富安風生
たのしきらし我への賀状妻が読み 加藤楸邨
手鏡のごとく賀状をうらがへす 岩淵喜代子

ねこに来る賀状や猫のくすしより 久保より江
年賀状束ねて輪ゴム細くなる 金子敦
濤音の賀状深雪の賀状かな 大嶽青児
人の名に山川草木年賀状 鷹羽狩行
夕暮をたのしむといふ賀状かな 瀧春一

親馬鹿は我のみならず年賀状 鶴岡加苗
嫁せし娘の妻にやさしき賀状かな 堤俳一佳
津々からも浦々からも年賀状 鈴木鷹夫
波音の由比ヶ浜より初電車 高濱虚子
焼跡を一番電車通りそむ 清崎敏郎

川に出て世界まばゆし初電車 南十二国
手袋の白き敬礼初列車 抜井諒一
羽子板や妻も知るなるかな女の句 安住敦
羽子板に一人はほしき女の子 吉屋信子
羽子板の重きが嬉し突かで立つ 長谷川かな女

口紅をもつて点晴初鏡 下村梅子
まだ何も映らでありぬ初鏡 高濱虚子
ほのぼのと初鏡より明けにけり 日野草城
切手売る初髪の紅一点嬢 秋元不死男
厨より妻も出句や初句会 宮下翠舟

恋の座の狼藉となる初懐紙 草間時彦
掛けのばす反りもめでたき初暦 下田實花
初暦頼みもかけず掛けにけり 高濱虚子
初暦真紅をもつて始まりぬ 藤田湘子
歳々年々人同じからず初芝居 久保田万太郎

年々歳々花相似たり初芝居 久保田万太郎
親と子の親獅子子獅子初芝居 戸板康二
日の本のその荒事や初芝居 松根東洋城
初映画ほろほろ泣けて恥かしや 富安風生
初刷の多色グラビア白は富士 上田五千石

初便り皆生きてゐてくれしかな 石塚友二
初場所やかの伊之助の白き髭 久保田万太郎
黒髪のわつと広がる初湯かな ますぶち椿子
去年よりの雪小止みなき初湯かな 久保田万太郎
からからと初湯の桶をならしつつ 高濱虚子

にぎやかな妻子の初湯覗きけり 小島健
初夢の母若かりしことあはれ 高橋睦郎
初夢のあさきゆめみし憂ひかな 山田みづえ
初夢は寝癖に負けぬほど乱れ 小池康生
初夢の吉に疑無かりけり 松瀬青々

三人の子に初夢の三つ下り来 上野泰
初夢のいくらか銀化してをりぬ 中原道夫
洞窟の画は初夢に狩りしもの 中村清潔
初夢を蒸留したる美酒ならむ 中塚健太
初夢にびつしりとつく藤壺が 飯島晴子

初笑深く蔵してほのかなる 高濱虚子
口あけて腹の底まで初笑 高濱虚子
遣羽子やかはりの羽子を額髪 高濱虚子
遣羽子や鼻の白粉頬の墨 正岡子規
ぼろぼろの羽子を上手につく子かな 富安風生

独楽の子をたしなめ羽子の子をかばふ 富安風生
そこな人破魔矢で背中掻くと見ゆ 岩田由美
一壷あり破魔矢をさすにところを得 高濱虚子
子に破魔矢持たせて抱きあげにけり 星野立子
笑ふたび破魔矢の鈴のころころと 仲寒蝉

かりそめの襷かけたる春著かな 久保田万太郎
男子等に母の春著の美しや 高木晴子
弾初の姉のかげなる妹かな 高濱虚子
太箸のただ太々とありぬべし 高濱虚子
永かりし昭和の松を納めけり 綾部仁喜

松納さびしきことの初めかな 林翔
資料館餅花のみが新しき いのうえかつこ
大的の裏は鬼の字弓始 近藤英子
雑巾を干して帰るや弓始 波多野爽波
読初めは干菓子に添ひし謂れ書 永井龍男

賀客去りても華やげる一間かな 星野高士
石段に一歩をかけぬ初詣 高濱虚子
ふたたびのふたりとなりて初詣 三嶋隆英
御手洗の杓の柄青し初詣 杉田久女
子を抱いて石段高し初詣 星野立子

広々と大石段や初詣 池内たけし
山道の掃いてありたる初詣 富安風生
伊勢海老や写真の祖父の父を抱く 藤村克明
初鴉黒をおのれの色として 加藤有水
お手玉のごとくに遊ぶ初雀 下村梅子

初雀来てをり君も来ればよし 相子智恵
妹が欲しいといふ子福寿草 岡本一代
わが好きの数の七つの福寿草 五十嵐播水
片づけて福寿草のみ置かれあり 高濱虚子
福寿草家族のごとくかたまれり 福田蓼汀

客去れば縁に出されて福寿草 林翔
福寿草二輪ひらきぬ福と寿と 林翔

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