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【引き付けてから動かすのが肝】ラ・リーガ第22節 デポルティーボ・アラベス対FCバルセロナ マッチレビュー

スターティングイレブン

 直近2試合で2つのタイトルを失ってしまったバルセロナ。エル・クラシコでの敗北にアンスの幾度目かの再離脱も重なり、ここから浮上するきっかけを是が非でも掴みたい状況にあります。対するは降格圏に沈むアラベスで、こちらも残留へ向け進んでいくためにポジティブな結果が欲しいはず。敵将はエイバルで我が道を突き進んでいたメンディリバルということで、お互いに己のスタイル、信念を持つ監督の対決も見どころになるかも。


サイドに振って、また戻して

 バルセロナは開始早々から大きなパスを多用し、早めにサイドに張る選手にボールをつけていく。アラベスはペレ・ポンスを押し出す442を組んでいたが、ボール奪取よりも中央を割らせない意識のほうが強くCBにそこまで厳しい制限はかけに来なかった。左に配置されたアラウホはアルバやフレンキーとパスを交換し、時間と空間に余裕があるピケにボールを戻すとそこから展開!という感じ。アラウホが左にいる理由は色々考えられる(アルバの裏をカバーするためなど)が、ピケを右に置いてボール出しの中心に据えたかったのもあるのではなかろうか。

 そのピケがボールを持った時に、サイドに空いている人がいなければパスは蹴れない。そこで、フレンキーが降りる動きに合わせてアブデが裏に走る姿勢を見せる。こうしてサイドの2選手を引き付けておいて、アルバにボールが供給されるシーンが何度か見られた。アルバはこれを1人でキープできる選手ではないので、降りたフレンキーがそのままサポートに入っていく。

例えばこんな形

 しかしアルバに渡したところからフレンキー、アラウホとボールが下がっていき、またピケからやり直す場面も多数。少し息がしにくくなったときにはブスケツが左CBの位置に降りて助けに来ることが多かった。

 助けに来てくれるのは良いことだが、ブスケツやフレンキーが持ったところから縦にボールが刺さらない。ルークのポストが成功するシーンは少なく、右サイドからの前進も少なめ。左に人数をかけておいて右に振り、フェランとデストの関係に+1でペドリ、という形は見せたものの、基本的に外循環がメインという姿勢は保たれたままゲームが進んでいった。


スーパーペドリくん

 基本的に薄味な試合展開の中で、最もゲームに変化をつけられそうだったのは帰ってきた16番だった。実際にハイライトを見てみるとほぼすべてのチャンスが彼の右足から作られており、セットプレーのキッカーとしても優秀さをアピールしてみせた。この試合での狙いがきちんと出ていた数少ないチャンスシーンは次のような形。

①左で密集を作り、大外に張ったフェランに大きく展開

きっちりサイドチェンジを成功させるブスケツ

②フェランが突っかけてDFの視線を集める。デストはチャンネルランでリオハを押し下げる

3人引き付けるフェラン

③ゴールから離れることで完全にフリーになったペドリに落とし、ダイレクトでクロスを送る。ルークに加えて2列目からフレンキーが飛び込み、ターゲットを確保

上手くフリーになって最高のクロスを蹴るペドリ。ルークのフィニッシュはあと一歩

 フェランとブスケツのうまさ、2人のデ・ヨングのゴール前での駆け引きも当然素晴らしい。しかしそれだけでなく、あえて脅威となりにくそうなポジションに下がることによって時間と空間を手に入れたペドリの賢さが光ったシーンだった。もちろんあのボールが蹴れちゃうのも素敵。

このまま進むかと思いきや

 22分ごろからはアトレティック戦で見せたように連携からシュートに持ち込めるフェランを左、単騎突破がメインのアブデを右と配置を入れ替えるも、前半はお互いに決め手がないまま終了。と思いきや、終了間際にフェランのロストからペレ・ポンスが決定機を迎える。これはテア・シュテーゲンがセーブして難を逃れたものの、なんとなく締まらない形でロッカールームに戻ることに。

 後半が始まると、攻めあぐねるバルセロナはカウンターに苦しめられることになる。例えば51分のシーン。

ロストしたシーン

ペドリから縦に入ってさあ前進だ、というところでアブデの何気ない横パスがフレンキーの後ろに入ってしまい、エスカランテにカットされる。エスカランテが前向きにコントロールしたため、平行なパスの出し手と受け手の2人、そして大外を回っていたデストが置き去りにされる。

ペドリがエスカランテに寄せるもすんなりジェイソンに流される。フリーでボールを受けたジェイソンにブスケツが突っ込み、ペドリも2度追いする姿勢を見せる。アブデとフレンキーは切り替えが遅く、まだスプリントする態勢には入っていない。

ジェイソンは余裕をもってサイドに展開し、リオハ、ホセルと繋いで最後はペレ・ポンスがクロスに触る。バルセロナは DFラインの4人とブスケツが必死に下がって対応するが、右サイドにいた3人は置いて行かれる格好になってしまった。

このように、ロストのタイミングの悪さと切り替えの遅さが嚙み合うと、そのまま危険なカウンターを受けてゴール前に運ばれてしまう。このシーンでは最も危険なストライカーであるホセルがクロスを上げる側に回り、中にいるのはペレ・ポンス1人だけだったにも関わらずフィニッシュまで到達されてしまった。攻めあぐねているうちにカウンターで沈むのはある意味で「バルサあるある」かもしれないが、こんな形で勝ち点を落とすことになってしまえば頭を抱えるほかない。

「逆」アルバアタック

 その後もバルセロナが保持するもののアラベスを崩せず、ときおりカウンターを食らいそうになるという展開は変わらず進んでいく。62分にはペドリのFKからルークが決定的なチャンスを迎えるものの、これはGKパチェコの正面を突いてしまいゴールとはならず。跳ね返ったボールを押し込もうとピケが懸命に首を伸ばしたものの、ボールは大きくタッチラインの外に蹴り飛ばされてしまった。

 チャビは71分にアブデに代えてニコを、84分にルークに代えてジュグラを投入して打開を図る。よりパスワークを使ってゴールに迫ろうという意図にも見える人選だったが、最後の決め手を欠くまま時計の針が進んでいった。

 そして87分、ついに試合が動く。チャンスの始まりはまたもブスケツのサイドチェンジから。左サイドでロストしたボールを回収したブスケツは、これまた右サイドに張っていたフェランにフィードをピタリ。

 フェランは先ほど例に挙げたチャンスシーンと同じように、少しカットインしてリオハを引き付けてからフリーになったニコへボールを落とす。ジェイソンは大外のフレンキーを気にしてついていき、エスカランテはジュグラとペドリへの縦パスを阻止するためにDFラインの前へとポジションを移す。

ダイレクトでクロスを入れるタイミングでフレンキーが飛び出したが、ニコは彼を使わずに少し前進。視線を集めてから、フリーで浮いていたアルバにボールを渡す。この時点で、アラベスの左サイドの3人は完全にボールウォッチャーになってしまった。すかさずフェランが抜け出し、アルバがなんと右足で(!)柔らかいボールをお届け。最後はラインの裏で浮いていたフレンキーに繋げて勝負あり。

字がごちゃごちゃで見にくいね

 ところでこのゴールの形、どこかで見たことがないだろうか?そう、それは2シーズンほど前のバルセロナ。メッシがカットインして相手選手の注目を一身に集め、大外を駆け上がるアルバにスルーパス。最後はゴール前で待っていたスアレスが決めるあのシーンだ。

 メッシがいた時には、簡単に相手選手の注意を惹きつけることができた。そのようなスーパーな選手がいない現在でも、サイドチェンジによって相手を振り回し、急ぎすぎずに間を作りつつ攻撃すれば同じような崩し方ができるということはポジティブな発見だといってよいだろう。例えば、複数人のパス交換で相手の意識をそちらに向けられたら?アルバの一本鎗でなく、タイミングをずらして他の選手がボックス内に侵入できたら?新たな十八番と呼べる、崩しのパターンを作り出すことができるのでは?想像すればいろんな可能性が広がってくる。

負けられない戦いは続く

 もちろん、次節対戦するアトレティコがここまで綺麗に崩されてくれるかは分からない。前回対戦でやられたように、ジョアン・フェリックスを捕まえきれないままだと逆にこちらが裏返される危険性もある。それでも、スアレスとフェリックスの2トップで来るなら割とボールは持たせてもらえるんじゃないか?と思ったり。

 クラシコではこの構図からヴィニシウスにめためたにされたが、最近は低空飛行を続けているアトレティコにそのパンチ力があるかどうか。勝ち点差1で迎える直接対決、ここで勝てれば勢いに乗れる。引き分けではなく、あくまでも勝ち点3を奪いに行きたい。

2022/1/24 La Liga Santander Matchday 22
FC Barcelona 1-0 Deportivo Alaves
Referee : Jorge Figueroa Vazquez
VAR : Jose Maria Sanchez Martinez
Stadium :Estadio de Mendizorrotza


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