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「視聴者参加型クイズ番組」の終焉は「早押しクイズ」の終焉でもあるという話

1975年に放送が開始された視聴者参加のクイズ番組「アタック25」がこの9月で終了することになりましたね。ショック・・・

と思っていたら同じく視聴者参加型クイズ番組である『超逆境クイズ 99人の壁』も9月終了というニュースが。

まさかの2番組終了で、なんとこの2021年9月に日本テレビ史に長らく存在した「レギュラーの視聴者参加型クイズ番組」がついにひと番組もなくなってしまいます。

「いやいや、クイズ番組なんてたくさんやってるじゃない」「なんだったらコロナ後、めちゃくちゃ多くなってない?」と思われる方も多いかもしれません。しかし、あくまで問題や情報のネタの面白さ、あるいはそこに出演している芸能人たちのリアクションの面白さを楽しむのが現代のクイズ番組の主軸ではないかと思います。

視聴者参加型のクイズ番組の醍醐味は「もしかしたら一瞬で大金や豪華賞品を掴めてしまうかもしれない」「職場や学校でちょっとした人気者になれるかもしれない」といった一般人にささやかな夢を与えるもので、1970~80年代には毎日いくつもの番組が放送され大変な隆盛を極めました。現代のクイズと視聴者参加型クイズ番組は、同じクイズ番組といってもまったく質が違うもので、同じメンバーだけどTHE ALFEEとビートボーイズくらい違うものだと言えば分かっていただけるかもしれません。

視聴者参加型クイズ番組の歴史を語りだすと長くなるので割愛しますが(一家言あるのでまた別の機会に)、今回の2番組終了には「早押しクイズの歴史的役割の終了」を個人的には感じずにいられません。

テレビにおける早押しクイズの最初の最初が何であったかまでは知らないのですが(クイズマニアには最高峰の番組とされた「アップダウンクイズ」の放送開始が63年ですから、おそらくそこから数年のうちだと思われます)、「クイズグランプリ」(フジテレビ、70~80年)、「ベルトクイズQ&Q」(TBS、69~80年)そして「パネルクイズ・アタック25」(朝日放送、75年~)や「アメリカ横断ウルトラクイズ」(日本テレビ、77~92、98年)など、大人気を博したテレビ番組に欠かせない演出装置が「早押しクイズ」でした。

「問題! 日本一高い山は富士山ですが…」
ピーン!(ボタンを押す音)
「ファンシーパン山!(ベトナム一高い山)」
ピンポンピンポンピンポン! 優勝おめでとう!

というように「クイズが読み上げられている間でも、分かった人が出題を止めて答える」というのがスリリングで、かつてクイズ番組といえばこれ、と言っても過言ではないものだったのです。しかし最近、この早押しクイズ(読み上げられる問題を、解答者がボタンを押して出題を止めて答える形式)自体をあまり見なくなってきた気もします。

原因はいろいろあると思うのですが「テレビが昔以上に映像的な面白さが求められる時代に、文章の読み上げクイズは絵的に地味である」というのは大きいと思います。そもそも昔のクイズ番組ではビジュアルを見せるのに手間とお金がかかったから文章形式で問題が出されていた側面もあるわけで、その枷がなくなってしまえばテレビで文章クイズが減るのも自然といえば自然です。

それに、早押しクイズの内容や技術の進化が行くところまで行きついてしまい、新味が出ないというのも大きいのかなと思います。早押しクイズを見ていて「えー、なんでそのフレーズだけで分かるのー?」と見ている人が思ってくれているうちは番組として企画になるのですが、ある程度テクニックも世の中に知れ渡り(いまやジャニーズクイズ部があるくらい)、そして世の中にある情報も多様になると「そもそもなんで早く問題を止めるのがエラいの? ちゃんと問題を聞いて考えようよ」という話も出てくるわけです。

さっきの「ベトナム一高い山」を問う例題は半分ふざけてはいるのですが、そもそも「そのあとにどう問題が続くべきか」など分かるわけないのです。二番目に高い山をもってくるかもしれないし、月で一番高い山を聞くかもしれないし、そうではなくそこから長々と文章が続くかもしれません。そういう「お約束事」があまり通じない時代に入っていることも、早押しクイズの番組が終わってしまう遠い原因ではないかと思ったりするわけです。

ところで、その「アタック25」ですが「地上波以外で復活も?」という朝日放送の山本社長のコメントもあったのですが、果たしてどうでしょうか? 根本的には問題読み上げの早押しクイズのニーズがなくなってきていることがあると思うので、仮に特番などをやったところで1~2回やって終わりのような気がします(「100万円クイズハンター」とかがそんな道のりでしたね)。

ギネス級の長寿番組でもありましたし、いろいろ目をつむって「最長寿」を売りに残しておくのが最善のように思うのですがテレビ業界的には難しいのでしょうかねえ。

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