見出し画像

施されたら施し返す恩返し【正の互恵性】ですっ!

「倍返し」のドラマを見ていないので、よくわかっていないのですが
こんなセリフがあったと聞きました。素敵な言葉ですね。
今回のnoteも論文を参照しながら書きます。

今回もこちらを参考にしました。
独立行政法人経済産業研究所 
https://www.rieti.go.jp/jp/

【参考文献】
久米 功一(東洋大学)・鶴 光太郎(経済産業研究所 / 慶應義塾大学)
佐野 晋平(神戸大学)安井 健悟(青山学院大学)
「正社員のワーク・エンゲイジメント 」(2021年9月)
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/21j045.pdf
(2021年9月17日閲覧)

(文章が長いので、ポイントを押さえたい方は太字のところを読んでください)
前回同様「ワーク・エンゲージメント」という言葉が出てきています。
慶應義塾大学の島津教授によると「ワーク・エンゲージメントとは活力、熱意、没頭によって特徴づけられる、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」のことです。

この論文では、正社員のワーク・エンゲージメント先行要因を分析しています。
先行要因とは、仕事の資源と個人の資質のことです。例えば、役割の明確さ、成長機会、上司の公正な態度などです。
対して後続要因というものがあり、それは影響(離職したい気持ちが抑えられる、役割以外の行動も頑張るなど)に関する分析です。

先行要因や後続要因の研究はすでにあります。
先行要因でいうと、仕事の資源の充実を図ることがワーク・エンゲージメントの向上をもたらし組織のアウトカム(結果)改善につながることが実証的に示されています。

ここまではなんとなく理解できますが、「今」の環境においてはどうでしょうか。

特に昨年の初めころから、COVID-19が流行し、同僚と顔を合わせずに仕事をすることが増えました、上司とはほぼメールでのやり取りという人も多いのではないでしょうか。
働く場所も、都会から離れたところに引っ越したり、オフィスだけでなく家も固定せずに過ごす人も出てくるなど多様になっています。
COVID-19前からもテレワークの推進は国が推進してきました。

今のワーク・エンゲージメントを考えるにあたり、他の視点でも検討する必要があるというのがこの研究です。
下記について調査しています。

1つめ。非認知能力について。非認知能力とは読み書きのような、わかりやすく見える能力ではなく「やり抜く力」や「利他心」のことです。「自分のことは自分で決めたい・コントロールしたい」という非認知能力人は、リモートワークのような自律的な働き方に対応しやすいと考えられます。

2つめ。職場環境について。日本企業の多くでは職場で長時間働くことで仕事の資源(上司や同僚のサポート)が得られやすくなっていました。これがワーク・エンゲージメントに寄与してきたと考えられます。前提が変わりつつある今、様々な雇用管理や人材育成が施されています。
上記のような非認知能力を加味して非公式な職場環境がワーク・エンゲージメントに与える影響があるかを考える必要があります。

3つめ。職務特性。自律的な働き方を考える場合にワーク・エンゲージメントの向上につながるような職務特性の在り方を検討することが必要です。職務特性は、1980年にハックマンが提唱しています。
労働者の内発的モチベーションが高まるのは「仕事への有意義感」「仕事への責任感」「結果への知識」が満たされた時であるとしています。これにはタスクへの重要性やフィードバックが職務に含まれています。新しい職場環境でこの職務特性を踏まえ職務の設計が求められることになります。

この論文では上記を踏まえ、何がワーク・エンゲージメントに影響するか、正社員2286人に対し行いました(2019年実施した調査データを用いており、COVID-19流行前のものです)。

1.個人のアウトカム(結果)として時間当たり賃金と仕事満足度
2.企業のパフォーマンスとして離職意向、組織市民行動(評価をされなくても組織のためになる行動をとる)
として関係を調べています。

1の個人のアウトカム(結果)について、項目を詳しく見ると
外向性、協調性、勤勉性、情緒安定性、経験への開放性(好奇心・想像力など)、自尊感情、統制の所在、正の互恵性(恩を返す)、負の互恵性(やり返す)、認知能力、職業理解力

2の企業のパフォーマンスについて、項目を詳しく見ると
多様な働き方(残業がある・配置転換転勤があるなど)、職場風土(人員がいつも不足している・職場内で助け合う雰囲気があるなど)、人材育成・教育訓練方法(会社の理念や創業者の考え方を教えられた・仕事を行う上での心構えを示されたなど)、職務特性(技能多様性・タスク完結性・タスク重要性・自律性・フィードバック)

です。

上記とワーク・エンゲージメントの関係を見ていきます。

【個人属性の結果】 ※1の個人のアウトカム(結果)に関するもの
外向性・勤勉性・開放性・自尊感情・統制の所在・正の互恵性・職業理解力
がワーク・エンゲージメントと正の相関がありました。
一方で認知能力、合理的な思考を持つ人ほどワーク・エンゲージメントが高い状態になりにくいことが示唆されました。

【多様な働き方の結果】※2の企業のパフォーマンスに関するもの
職場にいる時間が長く、業務や人間関係に深く関与する・今より高いレベルのスキルを要する仕事ができることはワーク・エンゲージメントが高い傾向でした。
一方で組織のラインに組み込まれている場合はワーク・エンゲージメントが低い傾向にありました。

【職場の雰囲気】※2の企業のパフォーマンスに関するもの
職場内での助け合う雰囲気・上司や同僚などと相談しやすい雰囲気はワーク・エンゲージメントと正の相関がありました。
一方で人員がいつも不足していること・仕事のできる人できない人の差が大きいことはワーク・エンゲージメントに負の相関がありました。

【職務特性】※2の企業のパフォーマンスに関するもの
仕事のモチベーションと関わるこの項目においては、技能多様性・タスク完結性・タスク重要性・自律性・フィードバックはいずれもワーク・エンゲージメントと正の相関がありました。

【人材育成・教育訓練の方法】※2の企業のパフォーマンスに関するもの
仕事を行う上での心構えを示された・仕事の幅を広げられた・仕事を振り返る機会を与えられた・仕事について相談に乗ってもらったり助言を受けた・目指すべき仕事や役割が示された・今後の職業人生について会社に相談できた、においてワーク・エンゲージメントと正の相関がありました。

以上が分かった上で、どう人事・雇用管理施策に活かすかが重要です。
正社員の傾向は分かったが、企業がどう具体的な施策をもって対応するのかです。

ここから先は私の個人的な気づきと考えです。

合理的な思考を持つ人のワーク・エンゲージメントが低くなる傾向は興味深いと感じました。時代の流れとして、合理的・ロジカルさが求められていると感じますがそうではなかったこと。時代が変わり、昇給昇格退職金などが約束されなくなってきている中、「給料分だけ働く」というコスパを求める人が多くなってきているためなのだろうかと考えました。

そして、正の互恵性(恩返し)がワーク・エンゲージメントと正の相関があること。「施されたら施し返す」これはとても定性的な部分ですが、上司からの指導だけではなく取引先からの感謝や先輩後輩からの助けや励ましなども含まれると考えるとまだまだウェットさがあるのだなと思います。上司だけの声掛けではなく職場における暖かさも必要なのだと感じました。

このウエットな状態をリモートワーク中心の職場においてどう作るか。

私の個人的な感覚ではオンライン上で十分できると考えます。
私はコロナ禍で起業し、オンラインのみで初めての挨拶から取引まで完結することが多くあります。仲間とは必要に応じて適度にミーティングを組み、SNSグループで情報交換し業務を進めています。これは年代に関わらずです20~60代の方とオンラインで交流して業務を進めています。私の良く関わる周囲50名くらいの仲間においては、所属企業も職種も様々ですがオンラインに対応しています。

ワーク・エンゲージメントを高める要素は研究からも明らかであるため、部下や後輩に対してのメールやオンライン会議にて意識して説明するポイントや、研修において理念や仕事の仕方という概念的なものが有効ということが分かっています。接触機会に都度織り交ぜていくのが良いのではないでしょうか。

また、今の日本では上司や先輩の自分がモチベーションを高めてやろうと思うのも思いが強すぎるかもしれません。放置するのはどうかと思いますが、モチベーション管理は自分で行える人もいるわけなのですから。

企業がどう対応するかは、各上司による個別対応の推進だと思います。
マネジメントすべき売上・利益や離職率などの数値のみを定めておき、個々に対応する。一方で対応できない上司も世にはたくさんいますので、基本的なマネジメントやコーチング・ティーチングは伝えておき、あとは任せる。できないなら、ちゃんとその職務から外してあげる。
ここまで働き方や事情が異なる世の中で、一律対応こそがマイナスではないかと考えます。

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

■公式HP
https://harassment-rma.jp/
■認定制度:ハラスメント対策企業認定(WHITE
sign)
https://whitesign.harassment-rma.jp/
■研修:パワーハラスメントリスク管理講座
https://course.harassment-rma.jp/
■ハラスメント相談窓口サービス
https://counseling.harassment-rma.jp/
■就業規則改訂
https://regulations.harassment-rma.jp/

★やってみて:職場のストレス対応力テスト

【facebook】※フォローお待ちしています
https://www.facebook.com/harassment.rma
【Twitter】※フォローお待ちしています
https://twitter.com/harassment_rma

職場におけるハラスメント対策を促進するために使わせていただきます。 サポートをお願いします。