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最近読んだ本のこと②「ゴッホの耳」と「ゴッホ~契約の兄弟~」

「黄色い家」

最近、まだ寒いからよく本を読んでいる。
またフィンセント・ウィレム・ファン・ゴッホについての違う本を読んだ。研究対象として、こんなにその人自身の「生涯」が研究されている画家も珍しいと思う。
ゴッホの生涯にまつわる学術研究書、一般書籍だけでも山ほどあるけれど
それよりも彼の思想に影響を与えたとされるゾラなど「自然主義文学」を次は読んでみたいなと思っている。

前にバーナデット・マーフィー著「ゴッホの耳~天才画家最大の謎~」を読み、こちらは本の題名通り、南仏アルル移住以降の彼の人生を「耳切事件」の真相を知りたいという著者の視点で、100年以上多くの学者がしてきた研究や残存する資料を洗い直し、時には埋もれていた新たな資料を発掘し、資料に基づいた想像で補填した「彼の物語」を交えて時系列で「事件の真相」を追っていくかたちの著書だった。

ちなみに、この本で一番衝撃だったのはフィンセントが切ったのは「耳全体」ではなく、「耳たぶの一部だった」という「証拠」が残っていてその資料が発見されたことだ。(耳をきった直後に診た医師のスケッチが残っていたのだ!)
また切り落とした耳(の破片)を渡したとされる「娼婦ラシェル」は実際は娼婦ではなく、娼館に勤めていた若い女性だった、という説を唱えているが、その仮説を立証するために、当時アルルに住んでいた何千人もの人を住民票や引っ越し記録などの残存する公的資料から洗い出し源氏名である「ラシェル」が誰だったのかを突き止める説を唱えたことに敬意を称したい。
紙の上の「名前」で
しかなかった「資料」が、


今回読んだ本は、それとはまたちがった観点で書かれたもので、画家として生きていく決心をしたゴッホとその才能を信じ、画商として生きたテオとの10年余りの生活環境、その時々の心情に影響されたであろう作品制作背景の解説を絡めた著書である。

今回読んだのは新関公子著「ゴッホー契約の兄弟ー」


こちらは画家フォンセント・ウィレム・ファン・ゴッホの弟で画商の「テオドロス(通称=テオ)」との手紙をメイン参考資料として、そこから見えてくるフィンセントのそのときの思想、言動から作品に現れる心情や彼の行動の意味を探り彼の人生を辿る著書。

どちらの著書も面白く、やはり研究者によって同じ資料を見てもおもうことは違うというのが顕著で興味深い。
こちらの本でとても興味深かったエピソードは謎の多いパリでのテオとの暮らしの中での「原罪」意識の作品への投影の著者の見解の部分。
いつかこの靴の絵、本物を観てみたい。
先述した映画でも、アルルへ引っ越した冒頭のシーンでこの「靴」の絵を描いてるんだよな~。
「靴」が「罪」へのメタファーというのは面白い西洋思想だなと思う。
日本人には正直あまり理解できなけれど、やはり「外を歩くもの」「汚れたもの」ということなんだろうか。

今月中に名古屋で開催中のゴッホ展に行かなくては!

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