[咲様] 3. 金曜日

【1年生1月/No.10side】

高校に入学した当初は電車や学校で咲様と友達のように話せていた私だが、時間とともにそれはなくなり、本来あるべき関係性となった。
つまり、「世界の中心である咲様」と「咲様を遠くから眺める片隅の存在」という関係性だ。
しかし5月末に勇気を振り絞って咲様に話しかけて以降は、学校では雑用をやらせてもらえるようになり、また通学の電車でも咲様と関われるようになった。

私は学校の最寄り駅から9駅目で乗り、咲様は6駅目で乗る。私が乗る段階では空席が多いので、私はほぼ必ず座れるし、端の席に座れることも多い。
しかし、私が乗ってから2つ目の大きな駅で人がたくさん乗り込んで来るため、咲様は座れないことが多かった。

そこで、5月末の日直の一件以降、私は電車内で咲様に席を譲るようになった。
咲様がいつも乗ってくるドアは把握していたので、私は毎朝そのドアから1番近くであいてる席に座った。
そして咲様が乗車したらすぐに立ち上がり、咲様に席を譲る。咲様はその席に座ると通学バッグを膝に置く。
咲様の膝にご負担をかけないよう私は片手でそれを持ち上げ、もう片手で吊り革を掴む。
両手が塞がってしまうため、自分の荷物はリュックに変えた。

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