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「頭がいい人のChatGPT&Copilotの使い方」を読んでみた

本書の要点

  • 要点

    1. ChatGPTとCopilotは、情報収集、情報分析、資料作成の3段階を支援し、仕事の生産性を押し上げてくれる。ブレインストーミング、文章執筆、プレゼン資料準備など、さまざまなシーンで活用できる。

    2. プロンプトを書くときは、要素を過不足なく含めること、タスクを細分化すること、1セッションを簡潔に終えること、文章生成とデータ分析機能を使い分けることなどを意識するとよい。

    3. GPTsは目的特化型のChatGPTであり、利用価値が高い。

要約

生成AI時代の仕事術

「質の高いアウトプット」が当たり前の時代に

ChatGPTと、それをもとにしたマイクロソフト社のCopilot(Microsoft Office365と連携する生成AIサービス)は、仕事の生産性を大幅に上げてくれる。とくに情報収集、情報分析、資料作成の3段階を一気通貫で行えることから、リサーチャーやデータサイエンティスト、デザイナー、プログラマーなど、さまざまな役割を担ってくれる。うまく使えるかどうかは、使う側のアイデアとプロンプト次第だ。

生成AIの登場で、私たちの生活は大きく変わっていく。なかでも「仕事の要求レベルが上がる」ことを著者は強調する。パソコンの登場によって手書き資料がパソコン資料に取って代わられたのと同様に、これからは生成AIを用いた質の高いアウトプットが求められるようになるだろう。

生成AIはパソコンと同じように、今後あらゆる領域に浸透し、誰もが簡単に使える時代になっていく。他人と差をつけるためには、まだ普及段階の今から学んでいくことが重要だ。

生成AI、キホンのキ

生成AIの仕組み

生成AIとは、主にインターネット上の情報を大量に学習し、高度な確率計算を用いて回答を出力するAIだ。たとえば「日本の首都は?」と聞かれると、学習データのなかに「日本の首都は東京です」というパターンが最も多いため、「東京です」と答える。

生成AIイメージ

ChatGPTのGPT-3バージョンは、45テラバイトのデータを学習したと言われている。これは、45億冊の本を読んで約4兆の単語を学習したイメージだ。

生成AIはこうした膨大なデータをもとに、すべての単語の出現回数、他の単語と共に使われる確率、文章において出現する場所のパターンを数値化し、「高次元の地図」としてデータ化している。この地図を使って近い単語を見つけ出してそれらを並べていくと、まるで人間が考えたかのような文章が形成されるのだ。

プロンプトのコツ

生成AIに出す指示のことを「プロンプト」と呼ぶ。プロンプトを書くときは、細かな言葉遣いに気を払う必要はない。大切なのは、必要な要素が含まれているか、不必要な要素が紛れ込んでいないかを意識することだ。

「プロンプト・エンジニアリング」とは、プロンプトを工夫すること。生成AIは日進月歩の技術であるため、プロンプト・エンジニアリングも日々刻々と変化している。将来的にはユーザーがプロンプトをタイプする必要はなくなると予測されているが、現時点では、次の点を意識してプロンプトを書くとよい。

まず、複雑な作業はシンプルなタスクにブレイクダウンすることだ。「このデータを分析してデータを美しいグラフにして分析に基づく提案をWordファイルで生成しなさい」といった複雑な指示は避け、「データを分析して」「分析のグラフを作成して」「グラフを美しくして」……と作業を分割し、質問の回答が正確であったかを確認したうえで、次のプロンプトを与えるのが賢明だ。

英語が得意な人は、英語でプロンプトを書いてみよう。ChatGPTの学習データは日本語よりも英語のほうが圧倒的に多いため、回答の精度が高いからだ。入力・出力できる文章量も多い。ChatGPTは翻訳も得意なため、ウィンドウを2つ立ち上げ、片方でプロンプトを日本語から英語に翻訳し、もう片方にコピー&ペーストしてもよいだろう。

ChatGPTは同じセッション内の一連の会話を記憶したうえで回答している。このおかげで会話の文脈が保持され精度の高い回答が得られるが、忘れてほしい情報まで反映された回答が出力されるデメリットもある。よって、1つのセッションは1テーマ、それも15回程度のやりとりで終えるのがおすすめだ。

ChatGPTにアイデアを出してもらう

ブレインストーミングをしてもらう

Whimsical Diagrams が生成したマインドマップ(P.85 より引用)

ChatGPTは思考の補助をしてくれる。調査や考察、要約、分類・整理などに能力を発揮するが、このパラグラフではアイデア出し、「ブレインストーミング」を紹介する。英語学習というトピックを例に、どのようにChatGPTを活用できるか見ていこう。

まず、「英語学習というトピックでブレインストーミングしてください。キーワードを30個」とプロンプトを与えると、「1.英語学習アプリ 2.オンラインコース 3.単語帳……」と30個のキーワードが羅列されて出力された。続けて、「このキーワードリストをマインドマップの形式に変換してください」と指示すると、リスニングやスピーキング、文法や発音などで分類・整理された回答が得られた。

より視覚的なマインドマップを作りたいときは、GPTsのひとつ「Whimsical Diagrams」を使うのがよい。GPTsとは、有料版ChatGPTの「ChatGPT Plus」で利用できるサービスで、目的別にカスタマイズされたChatGPTである。現段階で数万種類が存在し、企業でも個人でも誰もが作って公開でき、外部のサービスと連携されていることも多い。Whimsical Diagramsは人気のGPTsのひとつで、そのままプレゼン資料に使えるような高度なマインドマップやフローチャートを簡単に出力することができる。

1つ上のレベルで考えてもらう

ChatGPTは、特定のフレームワークに基づいた思考も可能だ。たとえば、「オズボーンのチェックリストを使って画期的な教育サービスを発想してください」というプロンプトを与えると、「転用」「応用」「変更」といった9項目のチェックリストの形式でアイデアを出してくれる。

ChatGPTに複数の人格を演じさせることもできる。「『AIは人類の脅威だ』というニュースがありました。このテーマについて天使と悪魔で対話をしてください」と指示すれば、AIに関するポジティブな意見とネガティブな意見を両方教えてくれる。また、「政治学者、経済学者、社会学者、人類学者、法学者、歴史学者に議論させてください」と依頼すれば、6つの異なる分野の視点を出してくる。

このように、ChatGPTを利用して思考を補助してもらえば、自分1人やチームの話し合いだけでは叶わない質・量のアイデアが得られる。生成AIを辞書や分度器のようなツールとして捉えるだけではなく、「仮想人格」に引き上げて対話をするのが、頭がいい人の生成AIの使い方だ。


ChatGPTにプレゼンを任せる

たとえ話を考えてもらう

DALL-E が生成した画像(P.105 より引用)

ChatGPTはプレゼン準備にも活用できる。本章ではプレゼンに必要な説明内容、スピーチ原稿とプレゼン資料の作成の方法について説明したい。

まず、説明内容である。難しい概念や出来事をわかりやすく説明したいときは「たとえ話」が有効だ。ChatGPTに「インフレの仕組みをわかりやすい、たとえ話で説明してください」とリクエストすると、「あなたが小さな島の住人で、島民たちは食べ物やサービスを買うために貝殻を使います。たとえば、1つのパンを買うのに1つの貝殻が必要です。ある日、島のリーダーが海から大量の貝殻を見つけて、……」という、わかりやすい例を返してくれた。

ChatGPTには、世界最高レベルの画像生成AIである「DALL-E」も搭載されている。「このたとえ話を画像にしてください」と指示すると、貝殻の上に人が立ち、「貝殻がたくさん見つかったぞ」と叫んでいるような画像も生成してくれた。

その人そっくりのスピーチを書いてもらう

特定の人物の知識や性格をChatGPTに与えて、その人らしいスピーチ原稿を書いてもらうこともできる。例題として、著者が働いているデジタルハリウッド大学の杉山知之学長をChatGPTに模倣させ、代役としてスピーチしてもらう。

具体的なステップはこうだ。まず、杉山氏が大学のビジョンについて書いた文章をWebで収集し、テキストファイルにまとめる。次に、「下記の文章の特徴を分析してください。キーワード、頻出する表現、口癖を抽出してください」とChatGPTに依頼し、約3000字のテキストを渡す。その結果、デジタルコミュニケーション、クリエイティビティ、21世紀といったキーワードや、「今や」という口癖などがリストアップされた。

続いて、ChatGPTに杉山氏の性格を分析させる。「杉山氏のデータを分析してマインドマップを作成してください」「杉山知之氏はどんな人物でしょうか。詳細な性格分析をしてください」「杉山氏に長い称号を与えるとしたらどんなものになるでしょうか」という指示を続けて与えて、ChatGPTに考えさせる。

一連のリクエストを経ると、杉山氏に対する分析結果がセッション内で十分に蓄積された状態になる。ここで、「この学長が大学設立20周年の記念パーティで挨拶をするスピーチ原稿を書いてください」と指示し、ChatGPTにスピーチを書かせた。すると杉山氏本人も高く評価するほど、完成度の高い原稿が生成された。

GPTs「HeyGen」に原稿を入力して「この文章を映像化してください」と依頼すると、ナレーターが読み上げる動画を生成してくれる。

プレゼン資料もお手のもの

Gamma が生成したプレゼン資料(P.115 より引用)

プレゼン資料の作成には手間がかかる。テキストを打ち込む、図表を作成する、色やデザインを整えるといった「作業」は生成AIに任せて、自分は頭を使う仕事に時間をかける。これが、頭がいい人のChatGPTの使い方だ。

著者がおすすめするのは、ChatGPTを基盤にした「Gamma」というサービスだ。プレゼン資料、Webページ、ドキュメントの作成に特化していて、プレゼンのテーマを入力するだけですぐに資料のアウトラインを提案してくれる。スライド構成や本格的なビジュアル画像もお手のものだ。

このように、図を作成する、専門知識を一般向けにやさしく噛み砕いて説明する、あるいは2カ国語で資料を作る、デザイン案を大量に作るなど、「時間をかければできるが面倒でやらない作業」は、生成AIという「アシスタント」に積極的にお願いしよう。

一読のすすめ

要約では、本書に掲載されているノウハウのうち、中級レベルに該当すると要約者が判断したものを中心に紹介した。データ分析、アプリケーションのプログラミング、GPT Builder上でオリジナルのGPTsを構築する方法など、より上級のテクニックを学びたい人は是非とも本書にあたってほしい。
本書では研究論文検索に特化した「Consensus」、Webサイトを簡単にデザインできる「DesignerGPT」など、要約で言及した以外のGPTsも豊富に取り上げている。また、イメージ生成AIの「Stable Diffusion」、動画生成AIの「Creative Reality Studio」といった、ChatGPTとCopilot以外の生成AIも紹介されており、「生成AIはこんなこともできるのか」と驚くはずだ。最新の生成AI情報に興味がある人にも、うってつけの一冊だ。

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