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PGT-Aって、結局どうなの!?~第1回~

皆様、こんにちは。はらメディカルクリニック院長の宮﨑です。

 これまで何回か胚移植を繰り返してもうまくいかなかったり、何回か流産を経験され、主治医からPGT-A(Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy)を勧められた患者様は少なくないかと思います。

PGT-Aは、胚(受精卵)を子宮に移植する前に、胚の染色体異常を検出するための技術です。簡単に言うと、PGT-Aを行なって染色体正常な胚だけ移植するということになります。これだけ聞くと、安心安全で万能な検査に思えるのですが、実際は、PGT-Aはメリットとデメリットが複雑に絡み合っており、どの患者様にとって有益なのかを把握するのは容易ではありません。

本記事は、PGT-Aがどのような患者様に適しているかについて、有効性を最新の文献をもとに考察します。最後までお読みいただくと、なぜPGT-Aが万人にお勧めできる検査ではないのか、納得できると思います。患者様が最適な治療選択をするための参考になれば幸いです。


PGT-Aの適応

国によっては、特に適応が決められておらず、患者様の希望があれば行えるところもありますが、日本ではPGT-Aの適応がしっかりと決められています。

適応1|反復ART(体外受精・胚盤胞移植)不成功の方

2回以上の体外受精胚移植の不成功の既往(不成功が連続していなくても構いません) 

適応2|反復流産の既往がある方

過去に2回以上の流死産を経験(流産は体外受精を問わず、自然妊娠後の流産でも構いません)

 ※ご夫婦のいずれかに均衡型相互転座などの染色体構造異常が認められる場合はPGT-SRを行います(ここでは詳細は省略します)

 つまり、少なくとも日本においてはどんな患者様にも気軽に行える検査ではないのです。では、PGT-Aはどのような場合に有効なのでしょうか?これまでの文献を調べてみました。

PGT-Aの有効性

A. 女性の年齢が高い場合

文献1: Gleicher, N., & Barad, D. H. (2012). A review of, and commentary on, the ongoing second clinical introduction of preimplantation genetic screening (PGS) to routine IVF practice. Journal of Assisted Reproduction and Genetics, 29(11), 1159-1166.

概要: 高齢女性におけるPGT-Aの有効性についてのレビュー。

考察: 女性の年齢が高いと、胚の染色体異常のリスクが高まるため、PGT-Aは高齢女性における体外受精(IVF)の成功率を向上させるのに有効です。PGT-Aは胚の染色体数異常を検出し、正常な胚を選択することで妊娠率を改善します。

B. 繰り返す流産の経験がある場合

文献2: Rubio, C., Bellver, J., Rodrigo, L., Bosch, E., Mercader, A., Vidal, C., ... & Simón, C. (2013). Preimplantation genetic screening using fluorescence in situ hybridization in patients with repetitive implantation failure and advanced maternal age: two randomized trials. Fertility and Sterility, 99(5), 1400-1407.

概要: 反復流産や反復着床不全(流産や着床不全を繰り返す)を経験する患者に対するPGT-Aの効果を調査した研究。

考察: 反復流産や反復着床不全の既往がある患者に対して、PGT-Aは有効であることが示されています。正常な染色体構成を持つ胚を選択することで、妊娠の継続率を向上させることができます。

C. 反復着床不全の既往がある場合

文献3: Simon, A., & Laufer, N. (2012). Assessment and treatment of repeated implantation failure (RIF). Journal of Assisted Reproduction and Genetics, 29(11), 1227-1239.

概要: 反復着床不全の評価と治療についてのレビュー。

考察: 反復着床不全の既往があるカップルに対して、PGT-Aは正常な染色体構成を持つ胚を選択することで着床率を向上させるのに有効です。これにより、着床不全のリスクを低減させることができます。

PGT-A有効性のまとめ

PGT-Aは以下の状況で特に有効です:

  1. 年齢が高い女性: 染色体異常のある胚を移植するリスクを低減し、妊娠率を向上させます。

  2. 繰り返す流産: 反復流産を経験するカップルに対して、正常な染色体構成を持つ胚を選択することで妊娠の継続率を改善します。

  3. 着床不全: 着床不全の既往のあるカップルにおいて、PGT-Aは着床率を向上させるのに有効です。

PGT-Aは、特定のリスク要因を持つカップルに対して有効な技術です。これまでの文献に基づくと、特に年齢が高い女性、反復流産、反復着床不全がある場合に効果的であることが示されています。PGT-Aを適切に使用することで、妊娠率の向上と健康な出産の可能性が高まります。

PGT-Aが効果的な年齢は?

PGT-Aは年齢が高い女性に有効であるということがわかりましたが、具体的には何歳のことを指すのでしょうか?

年齢が高ければ何歳であっても効果が期待できるのでしょうか?

答えは、「ノー」です。実は、一定の年齢を超えるとその効果が低下する可能性があります。

この続きは、次回の~第2回~へ続きます。数日中に第2回をアップします!


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