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よりよい精子のために・・・

皆さんこんにちは!はらメディカルクリニック診療部部長の宮崎です。

私含め、産婦人科出身の生殖医療専門医は、どうしても女性中心の診療に偏りがちです。
理由その①:女性の不妊の原因のほうが男性よりも複雑・・・女性因子は卵の質、卵管因子、子宮因子、頸管因子、視床下部・下垂体系の以上など様々ありますが、男性因子はズバリ精液所見
理由その②:不妊治療では人工授精や体外受精など、どうしても女性への処置が主体となる。

精液所見は、古典的にはWHOの基準(①精液量 ≧1.5ml、②精子濃度 ≧15x10^6/ml、③運動率 ≧40%、④正常形態率 ≧4%)を用いて評価されてきました。これは、自然妊娠を経験しているカップルの精液所見の両側5パーセンタイルをとったものです。つまり、基準値以下でも自然妊娠する可能性があり、逆に基準値以上でも自然妊娠できない可能性もあるわけです。

精液所見が基準値以上なのに不妊治療がうまくいかない場合、そして不妊症スクリーニング検査で明らかな原因が特定出来ない場合、「卵の質が最大の原因」とされることが多かったと思います。

ところが最近の男性不妊研究の進歩により、精液所見に「DNA断片化指数」という新たな概念が加わりました。
精子は、男性のDNA、いわば卵へのプレゼントを届ける「配達員」ですが、その「プレゼント」であるDNAが損傷すると、卵はへそを曲げてしまいます。結果的に、受精率や妊娠率が低くなったり、流産率が高くなったりすることが報告されています(Virro MR et al., Fertil Steril, 2004)。しかも、これは上記のWHO基準値で異常がない場合にも当てはまるのです!
この、「DNAに損傷を受けた精子の割合」を調べるのが、DNA断片化指数(DFI)です。

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「じゃあ、DFIが高かったらどうすればいいの!?」という声が聞こえて来そうですね。DFIが高くなる主な原因は加齢と、それに伴う酸化ストレスですから、その酸化ストレスを軽減させることがまず必要です。つまり、
①十分な睡眠
②適度な運動
③適切な食生活
④肥満であれば適正体重に戻す
⑤禁煙
⑥定期的な射精(週1-2回)

「そんなのとっくのとうにやっているよ!」という声が聞こえて来そうですね。そんな方々に朗報です。
獨協医科大学埼玉医療センターの泌尿器科及びリプロダクションセンターの研究チームは、OAT症候群(乏精子症・精子無力症・奇形精子症の総称)の男性不妊患者19名に抗酸化サプリメント(SOサポート)を内服させ、摂取前と摂取後8週間後、16週間後の精液所見と精子DNA断片化率(上記DFIのことです)を測定し、サプリメントの有効性を評価しました。
その結果、摂取前には31.3%だったDFIは摂取後8週間で21.3%に、16週間後には16.4%へと有意に改善しました。6ヶ月後には7例が妊娠、その内、2例は自然妊娠によるものだったとのこと。
※第63回日本泌尿器科学会(2018年)におけるポスター発表「男性不妊症患者に対する高容量コエンザイム Q10療法と精子 DNA 断片化率検査(DNA Flagmentation Index:DFI) についての報告」岩端威之ら、より

これら最近の男性不妊研究から言えることは、我々産婦人科医が思っている以上に、不妊症における男性の役割は大きく、男性をもっとしっかりケアすることで、不妊治療の成績を更に上げることができる可能性がある、ということです。

・・・という訳で、当院でもDFI検査ならびに抗酸化サプリメント(SOサポート)数ヶ月以内に導入予定です!一刻も早くDFI検査したい方も多いと思いますが、今しばらくお時間を下さい。

今日はこの辺で!

#はらメディカルクリニック #不妊治療 #体外受精 #男性不妊 #精子 #精液検査 #DFI検査 #SOサポート

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