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不妊症とは。その先へ。

土曜日の朝の出来事を思い出したのでnoteに記します。

当院では患者様からの問合せは電話の他にメールでも行っており、事務スタッフが対応しています。土曜日の朝、事務スタッフから「先生、自分は不妊症なのかどかという質問のメールが2通来ていまして・・・」と。

いつもなら、事務から丁寧・迅速に返信をしているのに、なぜ今日は確認にきたのだろうかと思いながらメールを拝見すると、なるほど、確かに概念的に使われている不妊症という言葉についてこのように問われると返答が難しいのかもしれないと感じた出来事でした。

1通目のメールは、
・お子様を望んで3年以上経過
・これまでに2つのクリニックで不妊症検査をしたが夫婦ともに問題は指摘されていないので自分達は不妊症ではないと考え不妊治療はしていない。でも、この先が不安という内容。

2通目のメールは、
・ご結婚されて半年。
・日本産科婦人科学会や生殖医学会の不妊症の定義と米国学会の不妊症の定義をメールに書いてくださり、その上で、奥様は35歳を超えたので米国の基準で考えると不妊症だから治療を開始したい。しかしご主人は1年たっていないのだから不妊症ではないと思っていらっしゃり、治療については後ろ向きである。どうすればいいでしょうかという内容でした。

この2つのメールに共通しているのは「不妊症」という診断が重要と考えている点です。

◆不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態のことを言います。この一定期間を日本産婦人科学会は「1年」としており、米国不妊学会では35歳以上の女性については「6か月」としているのですが、これは、この一定期間の間に授からなければ不妊症だということを言いたいというよりも、この一定の期間で授からない場合は何らかの問題があることが考えられるので早めに検査や治療を開始することで、早めにお子様を授かってくださいという意味だと解釈していただければと思います。

◆34歳以下の女性が避妊をせずに性生活を続けると1年で80%、2年で90%のカップルが妊娠します。しかし10%の方はなかなか妊娠に至りませんので一定の期間を1年としています。また、35歳以上になると妊娠に至らない割合は増えること、また、早めに検査や治療を開始するかどうかでその後の妊娠に影響することから米国では6か月としています。

◆不妊症は病気ではなく症候群です。症候群とは原因不明であるけれども同じような症状の人が多くいる場合にその状態に名前を付けているものです。つまり、検査をして原因が見つかって「不妊症」なのではなく、性生活を送っているのに中々妊娠できない状態が不妊症です。

ということで、この内容を2組のカップルに伝えてもらいました。そして1通目の方はお子様を希望して3年経過しているので早めに初診にお越しいただきご相談しましょうと伝えていただきました。過去の検査結果を全てお持ちいただき今一度精査をしても原因不明であれば、お子様を授からない理由は検査ができない領域にある可能性が高いです。その場合は体外で精子と卵子の受精を確認し、培養経過を確認できる体外受精に進む選択か、抵抗があるようであれば3回くらい人工授精を行うご提案になるでしょう。

2通目の方は、検査や治療を開始する前に、医療コーディネータを交えて、ご夫婦それぞれの考えや希望をすり合わせてから進んだ方がよいと考え、当院の治療相談室を案内していただきました。

私は生殖専門医として日々診察をする中で、あなたは不妊症です、と話すことはほとんどありません。不妊症であるという診断が大切なのではなく、その先が大切です。

今が授かっていないだけです。授かるための不妊治療をしましょう。

はらメディカルクリニック院長の宮﨑でした。

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