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筍祭

2024/04/15

リハビリを受けてから実家へ帰った。
家に入ると、誰もいないキッチンに筍の群れがいた。

初めて見る可愛い服を着た妹が2階から降りてきて、先日デートで彼氏と高円寺でデートした事、服を買い彼氏の家でファッションショーをした事を楽しそうに話してくれた。

しばらくすると母が帰ってきた。
あの筍の群れは何なんだと訪ねると、父が昨日筍堀りに行った戦利品を母が午前中全部かけて下処理したものらしかった。

その晩は筍ごはんにお吸い物、天ぷらと筍祭となった。それでも三分の一も消費できていない。
家族全員揃って美味しいね、美味しいねと言いながら大量の筍を口に運んだ。

明日は母は仕事である。
必然的に筍祭Day2のバトンが私に渡された。

夕食を食べ終わりダラダラしていると、出張に行っている恋人から「今日電話しても良い?」とLINEが届いた。
嬉しくって妹にその場で報告してしまう。
「いつでもいいよ!」と返信を打ち、急いで歯磨きを済ませてベッドで待機する。

21時過ぎに仕事が終わった恋人からの着信が届いた。電話に出ると大好きな声と、その奥にガラガラと音が聞こえた。出張のスーツケースを引きずる音だ。
こんな時間じゃスーパーも空いてないんだよね、と言いながらコンビニへ向かう恋人と今日は筍をいっぱい食べた話や、今週末の予定について話をした。

2024/04/16

なんとなく自分ウケ100%のメイクをしたらとってもうまく行った。
誰に合う予定も無い。
化粧をした時には、午後にスタバでも行って勉強しようかな、とか思っていた。

化粧がうまくいったので、毎週火曜日に来るコープの宅配のお兄さんにも普段より3割増で愛想よく挨拶してしまった。ルンルンだ。

特に予定の無い1日だったので、午前中は弁護士さんへ送る書類を作ったり職場へ連絡をとったりと雑務をして終わった。
午後は明日大学で資料を集める為の下調べをした。
課題として出された領域はとても広かったので、ある程度基礎をネットで拾ってから、興味のある分野を絞る作業だ。
大学時代は座学知識を臨床へ応用するのがとても苦手だった。調べ物をするのは好きな為、分野が絞れていないと永遠と本や論文を漁ってしまう。
そうやって闇雲に集めた知識は、患者さんを前にうまく使えない、綺麗事で終わってしまうことが多かった。
今は学生時代と違い、就職先の利用者さんの顔が浮かぶ為、分野を絞るのにそこまで時間がかからなかった。
パソコンを使おうと思ったら、明らかにどうにもならなさそうな点滅でdynabookのロゴが現れた後、全く動かなくなってしまったので諦めた。

今日やろうと思っていた調べ物が一通り終わった頃には15時を回っていた。1日家にいたので外に散歩に行こうかとも思ったが気が乗らず、結局缶ビールを開けてしまった。
そのまま鼻歌を歌いながら夕飯を作った。

はらこ家春の筍祭Day2だ。
昨日の筍祭で、筍ごはん、筍のお吸い物、筍の天ぷらを出されてしまったので今日は何を作ろうか迷う。

結局メインは青椒肉絲にした。
冷蔵庫にフキとすき焼きの余りであろうお麩があったので、筍と煮物にした。
瀕死のエノキと水菜の中華スープ、あとは箸休めが欲しかったのできゅうりと筍の酢味噌和えを作った。
明日大学に行った際、懐かしさから周囲のフードコートや学食でカロリーを摂取してしまわないように、弁当も用意した。最近ハマっている蒟蒻麺のサラダパスタだ。
蒟蒻麺は半束しか使わないので、残りの半束をナポリタンにして、ウインナーや卵焼きなんかと一緒に母と妹のお弁当にした。

丁度父が風呂から上がって一息ついた所で、一通り料理を終えられた。

母は仕事、妹は塾の為とりあえず父に夕飯を出す。
父は何を出してもずっとテレビを見て何も話さないので作り甲斐がない。
早く母が帰ってこないかなぁ。と思いながら、私はキャベツとプロテインバーを齧っていた。

結局1日家からは出なかった。
帰ってきた妹に

「家から全く出なかったから、コープの宅配のお兄さんの為に気合い入れて化粧したみたいになっちゃったよ」

と言ったら笑われた。

2024/04/17

休職中の時間を使って、仕事で知識が足りてないなぁと思う分野の勉強をする為に大学へ行った。

大学を訪れるのは卒業式以来であるから、3年ぶりである。

昨日事前に大学図書館へ連絡した際に、よく話していた司書さんが喉を壊したと話していたので、駅で見かけた可愛い桜ののど飴を持っていった。

大学の最寄り駅に着くと、渋沢栄一フィーバーで、オリジナルグッズやモニュメントがあちこちに見られて笑ってしまった。
渋沢栄一コラボの黒ラベルはちょっと欲しいな…と思ってしまったが、持ち帰ることを考えると重すぎるので断念した。

大学には、大きな市営図書館にも無かった専門書が沢山ありあれもこれもと手に取ってしまう。
それらを開いていると、実習の際に世話になった先生が話しかけてくれた。
私が前職を辞めたと知って心配してくれていたそうだ。

「でも、病院で見たときよりすっごくいい顔をしていて安心しました。」

特別に目立つ学生ではなかった私を覚えていてくれたことも嬉しかったし、何かあったら連絡してねと言う優しさも暖かかった。

持ってきたタッパー弁当を学食のテーブルで食べた。
後ろのテーブルでは、学生が友人同士で面接練習をしていた。聞こえてきてしまった内容から、私が辞めた病院を志望しているとわかり複雑な気持ちになる。

結局1日では終わらず、重い書籍を担いで家に帰った。
行きの駅までの道で前を歩いていた若い女性が、帰り道も前を歩いていて、レアな気分になった。

学生時代は毎日通っていたはずなのに、家に帰るとヘトヘトになってしまっていた。
夕飯を作るのが億劫だったので、この日は麻婆豆腐とおひたしだけの手抜きご飯だ。
筍入りの和風麻婆だ。ようやく筍も終わりが見えてきた。

2024/04/18

朝起きたら丁度父が仕事へ行く為に、玄関を出る所だった。
我が家では、幼少期から「いってらっしゃい」の挨拶に頬に口をあてるのだが、この日は久しぶりに父から頬を差し出してくれたのが嬉しかった。

昨日色々と資料が手に入った為、1日中机に向かっていた。妹のMacbookを借りて、資料をまとめる。
肩がバキバキになる。

昨日夕飯の支度をした際に米が切れていたので、スーパーに買いに行く。
1日外に出ない日だったので、買い物も運動じゃ!と5kgの米を抱えて帰ることにした。
リュックサックに卵や野菜を詰め、両手で米を抱えてスーパーを出ようとした際に玉ねぎを買い忘れたことに気づいた。
重い物を買う時に限って忘れ物をする。

今日の夕飯は春巻きだ。
例に漏れず筍を入れる。どんこを使い切りたかったので、あまったどんこと冷蔵庫のきのこで中華スープを作った。納豆の在庫が溢れていたので、チーズと一緒に焼いた。
自分は春巻きの余りのニラと、きのこ、納豆を白だしで和えたものをたべた。
実家を出るとなかなか揚げ物を作らないので、春巻きを巻いたり、こんがりきつね色に揚げたりするのが楽しかった。

明日は夜実家には帰らない予定であった為、ひき肉を多めに買ってキーマカレーを作った。

明日は何を着ようか考えながらベッドに入ったらなかなか寝付けず、よくわからない悪夢を沢山見た。


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