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春になるまで その2

君のいる四季を知ってしまうこと
冬眠忘れうたた寝の祈り

君と出会って季節が一周して、君と恋人になってからの全ての四季を知ろうとしている。
この1年、温かな君の隣で過ごしていた私は、冬眠の仕方なんてすっかり忘れてしまった。
もう一度冬が来たときには死んでしまうだろう。そんな事を怖がりながら、今はただこの微睡みに身を預けて祈るしか無いのだ。
冬が一生来ませんように。

ちんかした はいのこころの すになれば
ちんかちんかと いしをならすの

そんな事を祈っていながらも、いつかはこのドキドキやときめきは薄れてしまうのだろうと思っている私もいる。熱が冷めても、落ち込んでダメな日があっても、隣にいられればいいなと思う。役に立てるかはわからないけれど。
私がだめな時、誰かが横にいて、その誰かの心にわたし映っている。そのことの有り難さを私は色々な人に教えてもらったから。


2024/03/25

以前大宮のよしもとでヨネダ2000を見て、行きたいね〜!と話していた神保町よしもとへ行く日だ。
前日いつもの立ち飲み屋飲んだ後、缶チューハイを買い、家で神保町よしもとのライブ動画で出演芸人を教えてもらったので予習も完璧だ。
にも関わらず、寝るのが明け方だった為に寝坊しギリギリの時間になってしまった。

時間はあまりなかったが、お互いお腹はペコペコだったので、電車の中で何のカレーを食べようか会議をした。東京駅から歩いて学士会館を眺めてから行きたかったので、東京駅で食べるか神保町で食べるかどちらの選択肢もとれる。
私はただでさえ優柔不断なのに、もうお腹が空きすぎてカレーなら何でもいいやという気分になっていたので、恋人にどんなカレーが食べたいか質問しまくった。
欧風カレー?インドカレー?スパイス系とかカツカレー、ライスカレー系などその他?→欧風かなぁ
シャバシャバ系?濃厚系?→濃厚!
辛さは欲しい?→激辛は無理だけどある程度は欲しいな〜
シーフードか肉どっちの気分?→肉!
結構がっつり食べられる?→めっちゃおなかすいてる!

はらこアキネーターにより、神保町ボンディに決まった。

東京駅から神保町に向かう途中は2人で「ビーフカレーか、ポークカレーか………ビーフ…、いや、ポークだな……」というのを延々と繰り返していた。

大学時代は東京駅でアルバイトをしていたので、何度も通ったはずの道なのに、素敵な建物が多くて毎回きょろきょろしながら歩いてしまう。

学士会館の門の装飾や、窓淵の彫刻、タイルの貼り方に興奮して写真をパシャパシャ撮る。
かなり時間がギリギリだったのにもかかわらず、かっこいいなぁ…素敵だなぁ…とときめいている私を急かさずに待っていてくれてありがたかった。
今度は中に入ってみたい。

最後にボンディで食べたのは大学時代だったので、久々のカレー前のじゃがいもにこれだよ〜〜!と胸踊る。結局恋人はビーフカレーを、私はポークカレーを頼んだ。
小さい頃にはカレーに入っている豚の脂身だけは気持ち悪くて食べられなかったのに、今ではこんなに美味しく食べられちゃうんだから成長するのってとっても素晴らしい事だ。

カレーを食べ終え、急ぎ足で劇場へ向かう。ギリギリ開演5分前に着くことができた。
ネタ5組→企画15分→ネタ5組→企画15分の構成で、はじめは自己紹介がてらそれぞれのネタをテンポ良く見れて面白かった。
私の隣のカップルの男性も恋人と同じように笑い声が大きかったので、私も恥ずかしくならずに思いっきり笑うことができた。

18時にライブが終わったので、私が気になっていた立ち飲み屋 ぼてふりへ行った。
ライブの直前にカレーを食べたので、正直まだお腹が空いてないなぁ…と思っていたが、一杯目の瓶ビールを空けた時にはもういっぱい食べるぞモードになっていた。アルコールは恐ろしい。
お酒や小鉢は申請してセルフで取るシステムで、冷蔵庫からどの瓶にしようか迷ったり、大皿の煮込みや冷蔵庫にある小鉢、活きている貝たちを眺めながら迷うのがとっても楽しかった。

刺盛り 赤星

刺盛りや焼き牡蠣、鰯の梅煮を食べ良い感じに酔う。まだまだ飲み足りないが、このままでは帰るのが面倒になってしまいそうなので、自宅の最寄駅で2件目を探すことにした。

私の携帯の充電が無くなりそうだったので、結局充電のできるいつもの立ち飲み屋へ行った。
常連さんが沢山いて、今日のデートの話をした。
ボンディやぼてふりが美味しかったことを話し、「はらこちゃんが見つけてくれたんですよ〜流石っすよね〜」と言う姿がぴかぴかして見える。
こうやって、知り合いの前でストレートに彼女を褒められる男性は多くないことを私は知っている。
有り難いやら恥ずかしいやら嬉しいやらで、酔いが早く回ってしまいそうだった。

日付が変わり午前3時。
常連さんグループに、明日の予定について尋ねられた。なんと14時から呑むのだという。
11時間後だ。呑みへのモチベーションが違う。
明日は私が話してみたかった女性はも来るらしく、常連さんの誕生日や好きな店員さんのラスト出勤ということもあり参戦が決まった。

2024/03/26

10時に起床しだらだらとベッドで過ごす。
14時の待ち合わせ前に、妹のお使いをしてから花の舞へ行った。
全員3時まで飲んでいたとは思えない元気さ。
昨日聞いていなかったのだが、今回は全員が呑んだ杯数をカウントし、結局だれが一番飲めるのか見てみよう〜という呑みらしい。
みんなずっと飲めるけど、結局誰が一番飲めんのかね?くらいのノリなので1番やドベだからといって何かあるわけではない。
なので1番を目指すモチベーションは特に無いのだが、1件目で何となく首位になってしまった私、2件目で恋人が私を抜いたことによって、恋人だけには負けたくない精神が掻き立てられてしまった。
完全に勝負モードである。

21時に仕事終わりの妹が合流した時には、ふたりともべろべろになっていた。
今迄で一番酔っている恋人。その初めて見るふにゃふにゃした姿を愛でる余裕が無かった事が悔やまれる。
恋人の写真が欲しいのに、自意識が邪魔をして「写真を撮ろう!」と言えない姉の為に、妹が動画を撮ってくれた。
帰ってから何回も何回も見返してしまった。

タクシーが呼べなかったので、仕方なく歩いて帰る。ほぼ帰巣本能のようにいつものセブンイレブンに寄って、推し店員さんに

「あれっいつもより早くないですか!」

「2時から飲んでたらべろべろになっちゃいました〜〜」

「うわ〜呂律まわってないっすね!笑」

と笑われたりした。
炭水化物とチョコレートを買って、わざわざ温めて貰ったものをそのまま机に置き、ベッドへダイブした。
炭水化物達は翌日の恋人のお昼ご飯となった。

2024/03/27

お昼から友人と上野で待ち合わせだ。

恋人は仕事を午前休を貰ったとのことで、私が先にベッドを出て身支度をする。

とりあえず上野で集合して、その時の気分で喫茶店か呑みか決めよう〜という予定だった。
昨日の暴飲の跡がまだ残っていたので、大人しく喫茶店かなぁ…と考えていた。

友人とは中学の同級生だったものの、卒業以来殆ど接点は無かった。偶々Xで私を見つけたという友人がフォローしてくれ、その際に数回メッセージのやり取りをした程度だった。

1月末に事故に遭い、運び込まれたのがその友人が看護師として働いている病院だったのだ。
私の珍しい本名を電子カルテで見つけて、すぐにメッセージをくれた。入院中は困り事は無いかと気にかけてくれたり、実際に頼み事を請け負ってくれた。何より、初めて入院する病院に知り合いがいるということがとても心強かった。

中学でも同じクラスになったことは無く、学級委員会で一緒になる程度の関わりだったので少し緊張する。中央改札の近くで待ち合わせだ。
病院であった際はマスクだったが、マスク無しだと相変わらずの美人が際立つ。1つ1つのパーツの綺麗さと顔の小ささに感動してしまった。
友人が「おなかすいてるから食べられることが良いな!」というリクエストだったので、なんならもう魚の昼飲みにしちゃおう!上野だし!という方向性になった。
昨日40杯近く飲んだのに、酒はもういいかな…は数時間も保たないらしい。

一軒目は魚草だ。
転職してから中々平日昼に飲みに来ることができずご無沙汰だったので嬉しい。
細い見た目からは想像できない位しっかり食べれる人だったので、私も安心して美味しい生牡蠣を冷酒で流したり、レンゲいっぱいのイクラ丼を頬張りながら瓶ビールで流したりした。
同じ看護師、似たような男性歴ということもあって、ちゃんと話すのが中学生ぶりだとは思えないくらい楽しい時間だった。
まだ食べたりないね!と2件目はカドクラのハムカツを食べに行った。もつ焼きやポテト、牛すじ煮込みとこってりメニューに合う、下世話な女子トークを楽しんだ。
お店を出ると、友人が「甘いもの食べたくない…?」というので、飲めてデザートが美味しいところを考えていると、スシローが目に入った。
スシローのパフェ。最高じゃないか。
なんなら〆のラーメンまで行けちゃうし。

そんなこんなでしっかりお寿司とラーメンとパフェを食べ、ハイボールを飲んでいるとすっかり暗くなってしまった。
お腹も心も満たされて自宅へ戻る。

恋人は午後から仕事で、合鍵を使って家を出ているはずだから誰もいないはずだ。
なのに2階の窓は明かりがついていた。
珍しいな、外が明るかったから気が付かなかったのかな。なんて思いながらドアに手をかけると、鍵も空いている。好きな人の靴もある。

「なんでいるの!!」

思いがけないサプライズに大きな声が出てしまった。

「今日1日休みでいいよ〜って言われたからのんびりしてたんだ〜。迷惑だったら実家戻ろうと思うんだけど…大丈夫?」

迷惑なんて、とんでもないです。嬉しすぎます。いて欲しいです。と言うようなことを伝えた気がする。
家についた頃にはかなりいい気分で、ベッドでごろごろしながら恋人が買ってきてくれたチューハイを飲んだ。酔いもあってか、いないと思っていた好きな人が目の前にいるこの光景が幻のように感じられ、つい顔をじっと見つめてしまう。
その視線に気付いた恋人は、「結構酔ってるね」と笑っていた。連日暴飲暴食を繰り返しパンパンに浮腫んで、酔って赤く、だらしない表情となった顔はさぞかし不細工だっただろう。覚えていないことを願いながら、こころの中で連日の幸せにありがとうございますを唱えて眠った。

2024/03/28

8時半過ぎに恋人が仕事へ出ていった。
沢山の一緒にいれて嬉しかったですと伝えることができた。いってらっしゃいをする時に沢山ハグをしてもらったけれど、出ていったあとはやっぱり少し寂しかった。
玄関には日曜日の夜に「遅くなってごめんね」と言って貰ったホワイトデーのお返しが飾ってあった。
知り合いに注文して作ってもらったというお香立てだ。
寂しさを紛らわす為に、そのお香立てに好きな人も持っている白檀のお香を立てて、二度寝した。

のんびりと準備してリハビリの病院に向かう。
骨折の経過は良好で、レントゲンでのフォローは終了となった。これからはリハビリがメインとなるらしい。
自宅でのリハビリメニューもリニューアルしたので気合が入る。

そのまま実家に帰り、母に経過についての嬉しい報告をした。

2024/03/29-30

朝からどうにもお腹の調子が悪い。
暴飲暴食4連勤のせいかなと思ったが、今迄なら1日あれば殆ど回復していたし、こんなに酷い痛みは胃もたれでは経験したことがなかった。
熱を図ると38.3℃。しっかりと発熱していた。
確かにだるい気がする……。

その日は友人と荒川の桜を見に行く予定だったが、泣く泣くリスケの連絡をした。
看護師の友人は骨折部の創感染も心配してくれて、流石だねと妹と話していた。
怠さはどんどん強くなっていき、トイレに起き上がるのがやっとという具合になってしまった。
連日実家に帰っていなかったせいで、マットレスも1枚薄くなっていて背中が痛い。短い睡眠の間に何個も悪夢を見た。
高熱と怠さが辛かったので、家にあった解熱剤を4時間おきにのみ、腹痛を緩和するためのお粥やヨーグルトをちびちびと摂取した。
両親は仕事だったが、春休みの末の妹が素うどんをつくってくれた。
この2日間は高熱と怠さにうなされ、ただ時間が過ぎ免疫細胞が勝利する事を待つだけの時間となった。










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