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はじめてのドライブ

先週から日記をサボってしまっていた。
言い訳をすると、先週大好きな酒場に舞い戻り思う存分飲み、翌日はだらだらするという過ごし方をしてそれまでのルーティーンが崩れてしまったのだ。
ここ一週間は週のはじめに病院に行った以外は家で絵を描いて過ごしていた。
今まで家事は食器洗いや洗濯、ちょっとした整理程度だったがキッチンに立つこともできるようになった。
自宅近くのジムに入会手続きに行ったら、目をかけてくれていたトレーナーさんと会えて久しぶりに話ができて嬉しかった。


2024/03/09

春の日はどんな私で会いに行こう
萌える睫毛の隙間を縫って 
お題「萌」

日曜日は恋人と初めてドライブデートをした。

私が退院した時からドライブの話は出ていたのだが、地方に行くとバリアフリー施設も減る事からもう少し杖に慣れてからにしようという話になっていたのだ。

この日曜日は天気も良く恋人も久しぶりの連休ということで、そろそろドライブで少し遠出することになった。

といっても自然豊かな所は足場が悪い場所が殆どなので、屋内施設をメインに出かけ先を探した。
丁度、私が好きな陶芸作家の浅野暢晴さんが群馬県庁舎でイベントをやっているという事で群馬の方へ行く事になった。
恋人に群馬には他にも見てみたい近代建築が沢山あると話すと、群馬出身の知り合いに美味しいお店を聞いてくれた。いくつか教えて貰った中から、桐生のラーメン屋さんのもつ煮を食べに行くことにした。

レンタカーを借りて私の実家まで迎えに来てくれた。「着いたよ」というLINEに急いで玄関を出る。

毎日見る分譲の住宅街に、好きな人が立っていて「おはよう」と言う。
なんだか変な感じでもあるし、二十何年と見たいつもの景色がとってもキラキラして見えた。
レンタカーというと白い軽自動車かな、と思っていたがミリタリーグリーンのボックスカーであった。

「レンタカーっぽくないよね。これだけこんな色だったんだよね。ラッキーだった〜」

いつものように今週の出来事や昨夜いつも行く酒場がどんな雰囲気だったかなどを話してくれた。
今週新調した灰色のトレーナーがアメリカのブルワリーのものでプリント状態が気に入っている事、絵柄の意味を教えてくれた。
信号待ちの時に背面のプリントをこちらに向けて見せてくれたがすぐに青になってしまって、焦っている姿が愛おしかった。
私が話している間は安全な範囲でこちらを見て相槌をうってくれる姿に感動してしまい、唐突に好きと口走ってしまいそうになった。
パーキングエリアで休憩を挟んだ時にはお昼時になっていたので、フードコートやパン屋さんの誘惑に目移りしながらなんとかやり過ごした。
恋人は食が細いので、ここでなにか胃に入れたら目当てのもつ煮を食べきれなくなってしまうだろう。本人もそれを自覚しているようで「ここで食べたら駄目なんだよな〜」と耐えていたが、普段食欲も薄い人が「お腹がすいた」という様子はとても嬉しく、ついあれも美味しそうだね、いい匂いするねと空腹を助長するような事を言ってしまう。

渋滞にハマることもなく13時に目当てのラーメン屋さんに到着する。
看板は色褪せていて、営業中の看板がなければ本当にやっているのか不安になる風貌のお店だった。
お店に入る前に一服しながら、お店を教えてくれたという先輩に写真を撮って送っていた。
私達の直前に入った女性客でテーブル席が埋まってしまう。
座席に案内され装具をつけている脚に靴代わりに被せているカバーをもたもたと外しているのを見た店主が気を効かせて、女性客に席を変わってくれないかと交渉してくれた。
女性客も常連さんのようで快く変わってくれた。
お店は地元密着型という感じで、私達以外のお客さんは大抵店主と気さくに話している。それでも一見客も居心地が良いのは店主の人柄だろう。
後ろを通る度に、古い洋楽を口ずさんでいるのが聞こえて楽しい。
恋人の先輩が「世界一美味しい!」と教えてくれたもつ煮は深い器にこれでもかとトロトロのもつがたっぷり入っていてとっても美味しかった。
「普通盛り」という白米はしっかりお茶碗の上で山になっていて、濃厚なもつ煮とお米を丁度いいペースで食べることができた。お味噌汁の代わりについている卵の入った中華スープはラーメンのスープがベースになっておりそれだけでも頼む価値がある美味しさだった。

お腹も満たし目当ての近代建築に向かったものの、私のリサーチ不足で休館日であった。
しょうがないのでそのまま前橋へ向かう。
初めて訪れる群馬県庁舎はとても大きく、駐車場の入口が分からなかった程だ。
駐車場は立体になっていて、回転寿司のお寿司のように収納されるレンタカーが可愛かった。
メインエントランスに向かう途中からいくらさんのドローイングがそこら中に現れテンションが上がる。
目当ての展示を見る前に、庁舎の中や外の庭を少し散策した。まるで石化されてしまったかのぐんまちゃんの像や芝刈り機に閉じ込められた人形がどちらも絶妙に可哀想な雰囲気が漂っていて思わず二人で笑ってしまった。

1階の入口のトリックスターは、Twitterで何回か見ていたので「やっと会えた〜!」と嬉しかった。
壁の段差に並んでいる小さなトリックスター可愛い。
マップを見ながら屋上庭園に向かう。
庭園に通じる扉の前で既にびゅーびゅーと風の音が響いている。
「屋内展示だからコートを着なくても大丈夫でししょ」
と二人共上着を持たずに外に出た事を後悔した。
外に出た途端に冷たい風に吹かれ、二人して「ひゃ〜〜!!!!」と叫んだ。
「同じキーが出た」と恋人が笑っていて、楽しくなってくる。
寒さのせいか見ている間はほぼ私達しかいなかったので、広い屋上庭園を貸し切りしているみたいで嬉しかった。
丁度西日が指してきた時間帯だった。
日差しのせいで、写真を撮ると逆光になってしまったが、影が長い時間帯はトリックスターにぴったりだと思った。

植木鉢ックスター

群馬県庁は最上階の展望フロアも楽しみだった。
展望フロアにも小さなトリックスターが点在していて、探すのも楽しい。
天気も良く、前橋一帯の景色を眺めることができた。スカイツリーは高すぎて見下ろす景色が小さすぎるが県庁の高さはそれよりも近く、歩行者や建物の造り、道路を走る車などが良く見えた。
じっくり見ていたかったが、恋人はその情報量や、反射する光が返って苦手だったらしくすぐに移動してしまったのが少し残念だった。

20時には自宅付近の店舗へ車を返さないといけなかったのでそのまま埼玉へ帰った。

お腹が空いてきたので帰路でパーキングエリアに寄って軽く食べることも考えたが、渋滞にはまることを危惧して帰ってからのんびり呑もうという話になった。

無事20時手前に店舗に到着し、レンタカーを返却する。
一軒目は入院中連絡をくれた店員さんのいるお店に顔を出すことにした。事故以来会っていなかった飲み友にも会えた。
昼のもつ煮から完全にビールの口になっていたので、一口目の美味しさは格別だった。
「小エビと野沢菜のわさび和え」の小エビが想像してた3倍は大きくて嬉しい。とろたくのトロが良い意味で値段に見合っていない美味しさで、悶絶しながら味わった。

とろたく 小エビと野沢菜のわさび和え 生


同い年の飲み友が馴染みの酒場にいるという事で、2件目に向かう。
料理上手な飲み友は「いつでもおうち居酒屋開くから声かけて〜!」と言ってくれ、快気祝いと飲み代までくれた。
カウンターの端に恋人の先輩と友人が呑みに来ており、4人で楽しく呑んだ後にスナックに向かった。

私と同じ様な骨折を経験したママに、この骨折と出産どちらが痛いのか聞いてみたかったのだ。
ママは出産はアドレナリンが出るからなんとかなる。骨折のほうが辛いと言っていたので、「よっしゃ〜〜!ばんばん産むぞ〜〜!!」と調子付いたりした。今の所結婚の予定すら無い。

しっかり3時頃まで呑み、友人と先輩の恋の行方について話しながら歩いた。
帰る途中のコンビニには好きな店員さんが2人揃っていて嬉しかった。
いい気分であったので、「2種のチーズボール」なんて悪でしかない〆を買い自宅へ帰る。
いつものようにコンビニで買った〆を食べながら話していたら酒場での経験談から生死観の話にまで広がってしまった。
今思い返すと少し恥ずかしくなるような話を、うんうんと聞いてくれた恋人の顔の相槌をよく覚えている。
窓の外が明るくなってきてしまったので、化粧も落とさずに慌ててベッドに入って寝てしまった。




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