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ケニア発の患者がアクセスできる医療データ管理サービスを提供するAfya Recodとは?

医療データを管理するためのデジタルプラットフォームに力を入れて取り組んでいるケニアのヘルステクノロジー企業であるAfya Rekodが注目されています。ここでは、Afya Recodとはどのような会社なのか、その成り立ち、企業概要やプラットフォームの特徴、そして現地に受け入れられた理由などをご紹介します。



Afya Recodとはどのような会社なのか

ここでは、Afya Recodの企業概要やその成り立ちをお伝えします。


Afya Recodは医療データに注目した会社

Afya RecodのCEOであるジョン・カマラ氏により2019年に設立された同社は、様々な医療記録に関しての正確なデータの取得と保存を大切にしている会社です。

患者さんが自分の医療データを管理できるようにすることにより、患者さん自身がより主体的に自身の健康状態など、医療に関心を持ち、できるだけ医療サービスを自由に受けられるようにするため、Afyya Recodは迅速な医療介入と、継続的な医療管理に不可欠なリアルタイムのデータアクセスをサポートしています。

そのため、データ管理にはブロックチェーン技術(※1)を使用してデータのセキュリティを確保し、患者さんが主体になり自分の医療データを保持できるシステムを作っています。

※参照URL:https://afyarekod.com/
※参照URL:Kenyan HealthTech AfyaRekod Launches Universal Patient Portal For Worldwide Health Data Mobility Management - Africa.com
※1ブロックチェーン技術:ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、鎖(チェーン)のように連結して保管する金融取引履歴などで利用される技術のことであり、一度データを書き込むと上書きができないデータベースです。 「不正や改ざんができない」ことが魅力のひとつに挙げられています。また、ブロックチェーンのデータ管理は中央集権ではなく、分散管理されていることも特徴です。
※URL:ブロックチェーンとは?意味・定義 | IT用語集 | docomo business Watch | ドコモビジネス | NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま


Afyya Recodは誕生とその背景

ケニアを中心に展開しているAfyaRekodは、2019年にジョン・カマラ氏がAdanian Labのスタートアップとして、Mac Venture CapitalとNext Chymiaからシード資金を得て設立した医療サービスのためのプラットフォームを提供している会社です。

この会社の成り立ちは、ジョン・カマラ氏の親しい友人の悲しい死がきっかけになっています。彼の親しい友人は悲しいことに、既往症歴などの医療データの不足のために誤診されてしまい、亡くなってしまいました。

誤診されなければ命を救うことができたかもしれない親しい友人を失った後、カマラ氏は、友人の死のようなケースを解決するためには、それぞれが自分の医療データにリアルタイムでアクセスできることが重要であると考えました。

カマラ氏によれば「Afya Recod社のアプリを使う上で最も重要なことは、患者さんたちが自分のデータの所有権を持つこと、つまり、アクセスするのは患者の自由な権利だということです。そのため、わが社のアプリでは、患者さんが自分のすべての健康データをリアルタイムで閲覧することができるようになっています」と述べています。

実際に、患者さんはそのアプリにログインすると、病院からの全ての情報を見ることができるため、従来のように病院に問い合わせたり、情報を求めたりする必要はありません。

※参照URL:Kenyan start-up AfyaRekod launches universal patient portal


Afya Recodの企業概要やその特徴

ここでは、Afyya Recodの企業概要や実際にどのような医療サービスを行っているのかなどをご紹介いたします。

企業概要

Afyya RecodのHPによると、企業概要は以下のようになっています。

1.ユーザー数:12万人+
2.登録医師数:100人+
3.提携病院数:40+
4.提携国(アフリカ諸国でAfyya Recodのサービスが流通している国):5か国

Afya Rekodは、患者さんに焦点を当てた医療データ・プラットフォームであり、患者さんからのアクセスや医療施設からの情報提供など、双方が患者さんの医療データの取得、保存、モビリティへのアクセスを可能にしています。

Afya Rekodは、2020年4月のサービス開始以来、アフリカ、ヨーロッパ、アジア、米国の様々な医療関係者からの関心が大幅に高まっており、パンデミック(世界的大流行)後は特に、個人の医療データの管理の重要性は高まっています。

※参照URL:https://afyarekod.com/
※参照URL:https://afyarekod.com/about-us


Afya Recod社の特徴

まず最初に挙げられるのは、何と言っても「ユニバーサル患者アプリ」(Webサイト)です。Afya Rekod社はこのアプリを開発し、患者さんたちが自らの健康記録にリアルタイムにアクセスできるようにしました。

健康記録の他にも、健康日記、処方箋、通院サマリー、遠隔医療マッチング、症状トラッカー、医療機関や処方箋薬局などからのさまざまな通知をサポートするなど、さまざまな機能を兼ね備えています。

特に症状トラッカーや通院サマリーなどは、慢性疾患を持つ患者さんや、その両親、または妊婦さんや遺伝性疾患を持つ患者さんなどの、医療記録が重要になってくる患者さんたちにとって大変役に立つアプリになっています。

また、AfyaRekodプラットフォームは、B2Bプラットフォーム(※1)、テレファーマシーツール(※2)、電子処方箋プラットフォームなどを兼ね備えたデジタルクリニックを提供し、それらに登録している医師たちにも利用されています。

さらに、このプラットフォームは病院管理、患者管理、知識管理、在庫管理などの多機能に加え、人工知能(AI)の報告ツールも備えており、それぞれの患者さん個人のデータ分析を行い、今後の予測や分析を行い、病気を未然に防ぐ早期発見にも貢献しています。

患者さんや医療スタッフだけではなく、医薬品や医療機器などを販売している非政府組織(NGO)やその他の関連企業なども、このWebサイトに登録ができ自社の製品を管理できるようになっています。

そのほか、Afya Recod社は研究開発にも投資を行い、学術機関、研究センター、医療業界の専門家と協力し、さまざまな遺伝病などの疾患の研究にも取り組んでいます。

※1:B2Bプラットフォームとは別名、受発注システムと呼ばれています。 このB2Bシステムでは、Web上で薬品の在庫数や納期などの情報を基に、見積もり依頼や発注などの作業を行うことができます。
※2:薬剤師と直接対面できないような患者さんに対してテレコミュニケーションを通じ て薬局サービスを提供すること。遠隔医療のさまざまな存在の仕方のうちに1つであり、薬局分野で実現されたシステムです。
※参照URL:Kenyan HealthTech AfyaRekod Launches Universal Patient Portal For Worldwide Health Data Mobility Management - Africa.com


Afya Recodの資金調達と今後の展望

ここでは、Afya Recodが資金を調達した企業やのか、そして今後の展望をお伝えします。


Afya Recodの資金調達とパートナーシップ

Afya Rekodはケニアだけでなく、今後はアフリカ全域にサービスを拡大するため、200万ドルのシード資金を調達しました。主な投資家にはMac Venture CapitalとNext Chymiaが含まれています。

Mac Venture Capitalの創立マネージング・パートナーであるマーロン・ニコルス氏は「私たちがAfya Rekodを最も気に入った点のひとつは、患者さん中心の医療イノベーションと、現在の医療問題のギャップに対し、患者さんたちはサブスクリプション制を導入し、健康データをリアルタイムで見ることができるということです」と述べています。

また、Afya Recod社の強みはそのパートナーシップにあります。創業当初から米国でも有名なGE HealthCare(※1)や、Telkom、Africa Block-Chain Centerを含む様々な組織と提携し、サービスの提供と今後の拡大を視野に入れています。

例えば、ケニア全土で500以上の病院と提携しているThe Association of Sisterhoods of Kenya (AOSK)、ナイジェリア・ラゴスで精神科医を養成するHealthy Mind Foundation、南部アフリカの私立・公立病院を対象にした南アフリカのAlchemy、AURA(南アフリカ)、The Africa Block-Chain Center、The AI Center of Excellence、Adamian Labs、Lishe Livingなどともパートナーシップを結んでいます。

そのため、今後はどこのアフリカの国に居てもアプリに登録しているだけで医療サービスが受けられるようになるだろうとカマラ氏は述べています。

※参照URL:MaC Venture Capital
※参照URL:About Us | Craft.co
※1:GE HealthCareは、アメリカ合衆国・シカゴに本拠を置き、医療機器や医薬品の製造を行う多国籍企業。ゼネラル・エレクトリックの一部門であったが、2023年1月4日にスピンオフし、NASDAQに株式を上場した。ゼネラル・エレクトリックの株式保有割合は20%となっています。https://www.gehealthcare.com/
※参照URL:Kenyan startup Afya Rekod,closes its seed round at $2 million to scale across Africa – TechMoran


今後の展望

Afya Rekod社への投資発表後のインタビューにおいて、Adanian Labの共同設立者兼CGOであるアイリーン・キウィア氏は、

「Afya Recod社のアプリを用いて各人の健康記録をAIなどで分析することで、スムーズに専門クリニックや専門医へのアクセスができるようになるなど、同社のアプリが世界有数の健康プラットフォームになる可能性に期待している」と述べています。

また、キウィア氏はAfya Recod社が、医療サービスに関するマーケティングの成長に役立つものであり、非常に興奮しているとも語り、

「私たちの使命は、患者さんが自分の健康データに直接アクセスし、病院、薬局、保険、そしてそれ以外のものを含む健康エコシステムとつながることにより、患者さんたちの利益を最大限引き出すことです」という言葉を残しています。現在、Afya Rekod社は5カ国で15万人以上のユーザーを抱え、アプリ(アンドロイドとios)とウェブポータル(www.AfyaRekod.com)を通じて、ネットがつながる所ならどこからでもアクセスできるようになっています。

また、前項でも述べましたが、Afya Recod社のプラットフォームはAIとブロックチェーン技術を活用し、安全で効率的な医療データ管理を提供しています。そのため、ケニアだけでなく、ナイジェリア、南アフリカ、カメルーン、ザンビアでも展開しており、今後さらに拡大する計画です。

※参照URL:https://www.afyarekod.com/
※参照URL:Afya Rekod, Kenyan startup closes its seed round at $2 million to scale across Africa - MaC VC


まとめ

ケニアの医療新興企業AfyaRekodは、患者と医療専門家が健康データと病歴にリアルタイムでアクセスできる「ユニバーサル患者ポータル」を提供している会社です。

このプラットフォーム(アプリやWebサイト)は、遠隔医療相談、電子カルテ、健康情報システムなどのサービスを提供し、医療をより身近で効率的なものにしています。

また、治療に関することだけではなく、医療アドバイス、医療施設への予約スケジュール、処方箋管理、健康モニタリングへのアクセスなどにも対応しています。これらのアプリは、ユーザーフレンドリーで、インターネット接続が限られている地域でもアクセスできるように設計されているのも特徴の1つです。

ケニアで12万人以上のユーザーを持つこの医療用プラットフォーム(アプリやWebサイト)は、ブロックチェーンの技術を使用しており、アフリカと世界各国で行われている、対面式で行う患者さんへのケアの形を変えると期待されています。

ケニアのほか、ナイジェリア、南アフリカ、カメルーン、ザンビアで事業を展開し、50以上の病院がこのアプリを使い、緊急時に重要な情報をタイムリーに提供する一方で、継続的な医療管理を保証できるB2Bシステムを採用しています。

ヘルスケア・テクノロジーへの包括的なアプローチを通じて、Afya Rancod社はアフリカにおけるヘルスケアの提供と成果を向上させる上で極めて重要な役割を果たしており、アフリカ大陸の地域社会全体の幸福に貢献しています。

ライター紹介

増田さなえ |AA Health Dynamics株式会社 グローバルサウスにおける事業開発支援集団 (aa-healthdynamics.com)

お問い合わせ

この記事に関するお問い合わせや、アフリカビジネスに関するご相談は下記までお気軽にどうぞ!
AA Health Dynamics株式会社
Email info@aa-healthdynamics.com

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