【UGC百科事典サイト考】Wikipediaは「信用できない」?ニコニコ大百科編集者が考える「UGC百科事典サイト」の評価のありかた

こんにちは、ニコニコ大百科編集者原板井まさまるです。

ニコニコ大百科ではまだ3年目の新参者ですが、もともと14歳頃からさまざまなアカウント名でWikipedia、Uncyclopedia、Chakuwiki、ピクシブ百科事典などありとあらゆるUGC百科事典サイトで活動してきており、また見る専としてもEnpediaやらYourpediaやらを見てきました。ついこないだ管理人がフィッシングサイトへのリダイレクトしかけて更迭された@wikiの某サイトにも編集者として関わっていたことがあります。

そんなUGC百科事典サイトを気付けば十数年回遊してきただけに、UGC百科事典サイトが良く言われがちなとある事柄について、正直その観点で語るのどうなんだろうという思いはあります。

なにかといいますと、「信用できない」とか「信用できる」とかそういうやつですね。良くニコニコ大百科でも、あるいはWikipediaでも、とかくUGC百科事典サイトというものは「信用できる」「信用できない」といった観点から議論されることが多いわけです。

これについて議論するために2点ほど例示してみましょうか。

Wikipedia「飯塚事件」

つい先日第二次再審請求第一審で請求棄却となって話題になった飯塚事件の記事でも、Wikipediaの飯塚事件の記事は結構マスメディアによる報道と比較すると、結構詳述に書かれています。そして、しばしば冤罪主張をする人たちが上げる「冤罪であるとする理由」に対して、逐一反論を下部に書いています。

この記事に対して、「信用できない」「しょせんWikipedia」という声をSNSで見かけたわけです。まあマスメディアやさまざまなウェブサイトで語られる「飯塚事件」像からはかなりかけ離れた項目なので、冤罪主張派から見れば無茶苦茶なことを書いているようにしか見えないでしょう。

ここでは飯塚事件は久間が犯人なのか、それとも冤罪なのかは議論しません。ただひとつ言えることは、この記事は編集者が勝手に久間が犯人であるとするストーリーに基づいて書いたもの「ではない」ということです。というのも、Wikipediaで挙げられている主張はすべて明確にソースを記述していて、実際にそういう報道があることを確認することができるんですね。同じWikipediaでも問題になった「涅槃寂静」「ビーフストロガノフ」問題とはわけが違う。

ついでにいえば、「涅槃寂静」「ビーフストロガノフ」が問題になったのも、「ソースをたどったらソースのほうが間違っていた」「ソース自体がWikipediaとの循環参照になっていた」ということがわかったわけです。だからこそ、「ソースを提示する」、あるいは「記載内容についてのソースが提示できないことを証明する」ことで修正に至ったわけなんですよね。それを踏まえてなんですが、飯塚事件の記事についてWikipediaが「信用できない」とする人たちが、ソースを見て検証している様子が見えないんですね。

例えば白い車証言が否定される根拠である「女児の死亡推定時刻」、裁判所が久間の供述が変わったことを疑った理由である「供述を変えたタイミング」、弁護士が「検察はDNA鑑定結果の一部だけを抜粋し、他を隠蔽した」と主張したことに対しての「そもそも検察は第一審でネガフィルムすべてを提出していた (=隠蔽の事実はなかった) こと」などは、すべてソース付きで記述されているんですね。更には久間がアリバイ工作を依頼したと証言した女性の話、農協職員が捜査が開始される前のタイミングで既に女児を目撃したとする証言を述べていることなども何日付の新聞の何面に書かれているかまで示しています。

ニコニコ大百科「メリケンサック説」

ニコニコ大百科でも似たような事例がありました。こちらは飯塚事件と違ってもう少しマイルドな話ですがポケモンでよく言われている、最初にもらえるポケモンがくさタイプは古代生物モチーフ、ほのおタイプは干支モチーフ、みずタイプは武器モチーフであるという「メリケンサック説」というものについての記事があります (ニコニコがサイバー攻撃食らっているのでリンクがきれいに貼れていないと思いますが気にしないでください) 。

これについて、「メリケンサック説の始祖は悪織田うろんだ」とするコメントが掲示板についたんですね。実際には悪織田うろん氏が言及するよりもはるか前に海外で言われていて画像まで作られていて、日本はむしろ欧米からメリケンサック説を輸入した側なんですが、時系列をついているソースから議論することなくそのまま反論として主張してしまった方がいるんですよね。まずソースを見てくれよ。

UGC百科事典サイトは神様ではない

記事の内容がまずソースに基づいているか、ソースがあるならばそのソースは正しいと言えるのか、こうした議論をすることなく「UGC百科事典サイトは適当に書いている!」と憤慨するのはどうなのかなというのがあります。そりゃあ中にはソースもへちまもなく適当に書いている上に反省しないUGC百科事典サイト編集者もいますよ。でもUGC百科事典サイトはあくまで情報を「わかりやすくまとめる」サイトなので、信じるか信じないかみたいな宗教みたいな感覚で議論されるべきものではない。「正しいか」「間違っているか」をソースに基づいて議論されるべきものであるわけです。反論したいなら、掲示しているソースを覆す、より正しいと思われる「ソース」を持ってくる、あるいは何らかのソースに基づかないことを証明するべきでしょう。

他の記事が適当に書かれていたからどうこう、ではありません。あくまでサイトの評価ではなく、その記事の評価をしましょう。「ソースがあるかないか」「そのソースは正しいと言えるのか」、この観点からWikipediaもニコニコ大百科もふくめ、UGC百科事典サイトの記事は評価されるべきだと考えています。

(まあソースを明確に記述しないどころか記述すると「外部URL貼り付け禁止」って書く某Wikiみたいなところもあるけども……トラブルの原因になるって何?書かないからトラブルの原因になるんじゃないの?)


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