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武道と格闘技

武道と格闘技って違いが曖昧で、ネットでは「某武道はほんとに強いのか、強いならMMAで実証すればいい」とか言われたり、実戦だったら目突き金的禁じ手が許される云々言って揉めているのをよく目にします。
なぜこんな話になってしまうのかっていうと。武道と格闘技って似てるし、ぶっちゃけ同じジャンルに見えるのが原因なんですよね。
ではそもそも武道と格闘技は違うの? 違うんだったらなにが違うの?
端的に言うと、武道と格闘技は違います。その違いはなにかというと、ルールの有り無しなんですね。ルールがあるのが格闘技、ルールの無いのが武道
まず武道について言うと。ルールが無いというのは、つまり考えの基点が実戦にあるわけです。実戦というのは、どんな場所でも起こりうるし、誰が相手になるかはわからない。そのシチュエーションによって、いろんなことが想定されます。隣に居る人に突然因縁を吹っかけられる、その瞬間に相手の気をどうそらすか。自分が不利にならない状況をどう確保するか。そのとき相手がどのような人間かは特定できない。その対処方法を平常時に延々と考えるのが武道なんです。
対して格闘技は、考えの基点がどちらが強いか。ここに居るAと、そこに居るB。二人が闘ったらどっちが強いか。強さを競うには見届け人がいるよね、卑怯なことはやらないように。開始の合図を待ってから闘え。というような感じでルールが決まって行く。闘う相手は特定されるのだから、その相手への対策を考えたりもする。それはもう純粋に競技になる。

格闘技から見てしまうと、武道の技を見ても「あんなの通用しない」なんて思うこともあるわけです。でも武道の考える実戦では、今からこの技を使いますよ、というようなことではないんですね。その技を使うまでには、もめ事が苦手なフリをしてもいい。周囲に助けを求めてもいい。諸々のやりとりの最中に相手が隙を見せたり、不用意な動きをした瞬間に掛かればいいわけです。現代なら怪我をさせないように、どううまくその場を収めるかも武道の技術になるわけです。
そんなわけで武道と格闘技って、実は相容れないジャンルなんだと思う訳です。ブラジリアン柔術などは元々セルフディフェンスから発展したこともあって、海外でできたのにどこか武道的な要素を持っている気がしますよね。

不思議なことに武道をやっている方でもここに書いたことが判っていない人が居るのもまた事実です。格闘技や競技スポーツをやっている人に、あんなのじゃ人は切れないとか実戦では通用しない、みたいなの。そもそも格闘技はそんなことを想定して稽古するものじゃないんですよね。ルールの中で効果的かどうかなので、これまた的外れな批判になってしまうんです。

武道格闘技って相容れないジャンルなんだけど、格闘技の技術は武道にも応用できるし武道の技術が格闘技に応用ができるので。考えをしっかり持てば、ジャンルを越えた楽しみ方はあるとおもうんですけどね。

追記になりますが。武道には、技の伝承という側面もあります。武道の基本稽古や形(型)が変わることはほとんどありません。基本稽古や形(型)は、かつてそれを考えた人が習うのに有効だと考えた動きが詰め込まれています。つまり基本稽古や形(型)には、古(いにしえ)の人の技や動きが保存されていると言えます。基本稽古や形(型)を形骸として習っている人もたくさんいます。けど形骸化していてもそのカタチを継承していることには変わりなく。基本稽古や形(型)を習っていくうちに身体を使える人間が改めて古の人が持っていた動きの秘密に気付くこともあるのです。

そんなわけで武道には武道の、格闘技には格闘技の楽しみ方があるんだということをわかってもらえばうれしいな。

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