見出し画像

2022年1月22日(土) 仲道郁代 ベートーヴェン 鍵盤の宇宙 第4回 <ベートーヴェンと北斎>


ベートーヴェンと偉大な魂との対話をテーマに、哲学、美術、宗教、文学など、偉人たちとの対比を通して、ベートーヴェンの生涯・音楽を読み解き、その真実にせまる画期的なプロジェクト。第4回となる今回は、このシリーズでベートーヴェンと対置される唯一の日本人、葛飾北斎を取り上げました。

プログラムの最初に演奏された「ピアノ・ソナタ 第25番」はシンプルな形式で書かれ、かわいらしい印象を受けますが、それだけではありません。
第3楽章の冒頭に提示される軽快な主題は、第30番のソナタの冒頭主題と密接に関連しているのです。第25番のソナタには、ベートーヴェンが晩年に見出す境地の小さなはじまりを見つけることができます。


演奏の後、「革新と情熱」をキーワードにお話がありました。1770年生まれのベートーヴェンと、1760年生まれの北斎。同時代に生きた二人の共通点は、死ぬまで殻を破り続け、創作のエネルギーを絶やさなかったこと。
ベートーヴェンは最晩年まで「大フーガ 変ロ長調 op.133」などの大曲を書き続け、「革新」を体現したような人生を送りました。
北斎は89歳の時に21畳もの大きさの天井画「八方睨み鳳凰図」を完成させ、90年の天寿を全うした時も「あと5年あれば真の絵師になれたのに」と言い残したという、凄まじい「情熱」の持ち主です。


浦久さんから見た北斎の「革新と情熱」、また仲道さんから見たベートーヴェンの「革新と情熱」についての興味深いお話に、お越しになっていた皆さまも好奇心をくすぐられたことと思います。


後半は仲道さん自身が第21番「ワルトシュタイン」、第23番「熱情」に関する曲を解説。
ワルトシュタインは音の光がどんどん増していく感じで別名オーロラソナタというニックネームがついていた話、「熱情」の音進行の話と「運命」の三連符と一音、いわゆるジャジャジャジャンが大量に入っているという解説でした。
おかげで事前にイメージを抱くことが出来、集中力ある演奏、宇宙的な雰囲気が出るほどまでに素晴らしいサウンドでコンサートは終了しました。
アンコールは「悲愴」の2楽章でした。


次回は、第5回「ベートーヴェンとシェイクスピア」。熱心な読書家であったベートーヴェンは、シェイクスピアの戯曲のセリフを手帳に書き込んで人生訓としていたそうです。ベートーヴェンの人生観や創作の中に、シェイクスピアはどのように入り込んでいたのでしょうか。どうぞお楽しみに!

2022年1月22日(土) 仲道郁代 ベートーヴェンへの道
ベートーヴェン 鍵盤の宇宙 第4回 <ベートーヴェンと北斎>


[出演]
仲道郁代(ピアノ/トーク)浦久俊彦(ナビゲーター)
[プログラム]
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第25番 ト長調 op.79ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 op.53 「ワルトシュタイン」
ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 op.57 「熱情」
[アンコール]
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 op.13 「悲愴」 より 第2楽章


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?