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「crQlr Awards 2022」への応募記録


昨年2022年のcrQlr Awardsに応募した際に作った資料を備忘録として記録します。
この応募案を軸にしたプロポーザルはオークランド市のWaste Minimisation Innovation Fund(2021/2022、2022/2023)にありがたく採択され、またプロジェク実施の場であるアーバンファームKelmarna GardensがあるWaitemata Local Boardからも資金を頂き現在自宅ガレージにおいていわゆるグローテントを利用したミニマムサイズのメリアブ卵ファームの試運転中です。今後孵化した幼齢幼虫をコミュニティーファームに持ち込み、チューブ温室内に設置するコミュニティースケールのウジコンで地域の皆さんに実験過程を体感してもらい、ファーム内での鶏への餌やりなどを通して色々と話や行動が広がることを期待しています。

プロジェクトの背景

アメリカミズアブ (以下メリアブ)は我々や産業が排出する食品廃棄物や様々な有機性廃棄物を既存の微生物やミミズなど他の生物を利用するどの処理方法よりも効率よく、早く、安全にかつ少ない温室効果ガスの排出によって経済価値のある最終生成物に変換することのできる益虫です。

サステイナブルでない現在の家畜養殖魚飼料やペットフードに替わる代替タンパク源として世界中で産業利用が進むメリアブは、次世代のサステイナブルな有機廃棄物処理技術とタンパク質製造方法として最も期待されています。

ですが、彼らが本来自然の生態系において分解者として土壌となる循環資源を有機物から再生産し生態系のバランスを保つ重要な役割を担っていることを理解し、その能力を最大限活用することで環境危機の本質的な問題であると言われる我々の都市型生活を支える食システムと生態系の破壊の問題にコミュニティー単位で取り組むことができるのはないかと感じました。

我々は各コミュニティーから排出される生ゴミや食品廃棄物をメリアブの餌となる地域再生資源と捉え、最終生成物を都市環境に生態系と生物多様性再生拡張産機能を持たせるための資源として利用する分散型有機物循環再生産システムの構築を提案します。

お題0:プロジェクト・アイデアの詳細説明

裏庭のミミズコンポストを蠢くウジ虫に乗っ取られるという衝撃的な出会いに始まった一連の出来事は、メリアブという昆虫の幼虫であるウジ虫に我が家の食費の多くを賄う程の経済価値があること、そしてこのウジ虫が本来商材ではなく生態系における分解者として地球上の土壌形成という重要な基盤生態系サービスを提供する役割を担っていることを気づかせてくれました。
メリアブが食品産業にとって優れた飼料資源であることは明白ですが、メリアブの力を借りて我々市民が都市環境の生態系回復と拡張に寄与し貢献できる可能性とその重要性はまだ多く議論されていません。
生ゴミコンポストをしている地元のアーバンファームでの実験や対話を通じてこのウジ虫を広くコミュニティーにおいて日常的に利用できる仕組みを作り、都市内で排出される有機廃棄物を都市内での生態系回復拡張に必要な資材(メリアブ餌)として分散的に利用し、人間と多様な生物を繋ぎ養う都市生態系環境のWell-being(塩梅)をより豊かなものに導くビジョンを描くに至りました。
この仕組みを可視化、体験する機会を設けることでより多くの人が都市化や食システムに関わる問題の本質について体験を通して感じ、それぞれがローカルに行動するための対話や協働の機会を創出できるのではないのかと考え現在地元のコミュニティーガーデンと協働でデモンストレーション用のプロトタイプシステムを制作しています。

お題1:「地域資源の活用」として、素材や知見などの、地域資源をどのように活用して、課題に取り組んでいるか

循環型社会形成を目指して活動している既存のローカルなフードシステムに関わる団体や組織の生産性向上と社会環境インパクト強化を目的にメリアブの幼齢幼虫を生産供給し、活動現場での利用と最終生成物の活用を支援するサービスの開発と普及を目指しています。

利用者はメリアブ卵生産の中核地域施設から定期的に供給される必要量の幼齢幼虫にコミュニティーで発生する食料廃棄物を飼料として与え、幼齢幼虫生産に関わることなく効率よくメリアブ由来の有機資材を安定的に潤沢に生産する資源循環システムを構築することができます。

既存の微生物やミミズ、発酵素材を利用する技術と組み合わせ、コンポストの最終生成物をファームやコミュニティー内で利用、販売することでローカルな環境再生型の食生産システムの普及と発展に寄与し、関連する循環ビジネス、雇用、地域特産品等の創出を通じてローカルな循環型経済の構築を促します。

食育に取り組む地域の学校や農家と連帯して物質循環を可視化したシステムを利用して食を取り巻く土壌生態系と生物多様性への理解を深める体験型自然科学学習プログラムの開発を可能にし、世代と業種を超えた地域住民の意識と行動変化を促すツールとして、また地域生態系の回復をともなう食文化の発展基盤としてそのオーナーシップを高めることが期待できます。

お題2:「コミュニティから始まり、持続される」として、地域コミュニティでの活動を通じて、どのようにその活動を持続させているか。

私たちはコミュニティーにおけるコンポストプログラムやリジェネラティブな都市農業等の環境再生に寄与する既存の取り組みを支援し、社会環境的なインパクトのスケールアップを目的としてメリアブシステムをそれぞれの活動に組み合わせて実装、活用するためのサービス開発と提供を目指します。
このサービスを通じて環境再生活動の生産性と収益性を改善し、利用者や支援協力者の幅を広げることでより安定した組織運営基盤を築くことできると考えます。

私たちはコミュニティーでの利用に特化したメリアブシステムが地域再生資源である有機廃棄物の活用を通して人々と生態系をつなぎ、社会環境的な利益を分配還元する社会共通資本的なソーシャルインフラストラクチャーとしてコミュニティーに根付いて持続的に拡散発展していく未来を描いています。

そのためにはコミュニティー特有の環境条件、ユーザーの特性、需要やニーズの変化に対応して柔軟に利用されるためのアクセシビリティを含むデザインの向上、有機廃棄物の昆虫飼料としての品質管理、効率的で安全な昆虫由来生成物の安定生産と有効利用、市場開拓などについての研究開発をユーザーを含む関連機関や専門家と連帯して継続して取り組む必要があると考えています。

お題3:「天然資源の再生」としてどのように廃棄物や汚染を排除し、天然資源を再生しているか。

これまで一般に利用されてきた様々な微生物を利用する生ゴミ処理技術は既存の焼却や埋め立て量を減らすことで環境負荷削減を主目的とする側面が強く、有機廃棄物からの資源回収効率や最終生成物の循環資源としての価値創造や活用促進に重きを置くものありませんでした。
メリアブの長けた能力に身近で接する機会を設けることで自然界の様々な有機物分解者たる昆虫、ミミズ、微生物、発酵菌などの役割、能力と再生産できる資源ついての知見と需要を高め、ゴミ排出の削減よりも有限資源の採掘削減に注視した地域内での循環食システム構築することで「廃棄物」や「ゴミ」という定義そのものを排除する社会を目指します。

狼を意図的に森に返すことで野生動物の行動が変化し植生と水環境を含む生態系全体のバランスが調節されたように、メリアブ を人類の新たなキーストーン種として都市の日常生活の中に意図的にデザインし取り込むシステムの実装は我々が生態系の一部としての自覚を持って行動するよう促し、人間が主体となって生態系の回復、再生、拡張をもたらす持続的な発展を可能にする社会変革に繋がるのと考えます。

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