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空想彼女毒本 #13

#13  加西恵美

加西恵美

加西恵美。四文屋で飲んでる時に、充電器を貸したのが最初の出会い。そのままぼっち・ざ・ろっく!の話で盛り上がり、今度一緒にシェルターに行こう!と連絡先を交換するが、中々お互いのスケジュールが合わず、LINEの会話だけ盛り上がる日々が。剛を煮やして今日泊まりに来た!
飲み屋で耳に入ってくる会話は、多くの場合は聞き流して、たまにその話題でこちらでも話し出すなんて事はあるが。極々たまにその会話に思わず口を挟みたくなる話題もある。つい口を挟みたくなる会話には、大抵の場合共通の知人の話題であったり、母校やミュージシャンの話題なんてのもある。そんな中、大好きなアニメの話を隣でされてたりしたら、いつ口を挟もうか、スルーしようかと葛藤したことのある人も多いはず。ボクの場合は趣味というか、話題の守備範囲がとにかく広いので、どんな話だろうが、最終的に自分の話にこじつけてしまう節がある。いやむしろ癖があるのだが。
この日は見たばかりのぼっちざろっくの話を、ぜひ見て欲しいと後輩の鈴木に熱弁していた。隣のグループは何か特別に思い入れのある事について話していた感じではなく、それでも耳に飛び込んできたのは、その声の主が美しかったからた。
「ちょっと充電器貸して〜。」
と、スマホのバッテリーが切れかけてても、仲間で飲んでいれば誰かしらモバイルバッテリーは持っているはずなのに、誰も貸さないなぁなんて、全員モバイルバッテリーさえも使い果たしているのか、そもそも充電器を誰か持ってないものかと思っていたが、一向に話題が進まない。とにかくスマホの充電を満たさなければ、心が満たされない模様だ。
ふと目を向けると、MEGUMI似の美しい女性と目が合ってしまった。彼女は繰り返すように、
「ちょっと充電器貸して〜。」
と言ってきた。目があって、しかも充電器貸してと言われてしまったら、貸すしかなくなり、iPhoneですか?と、充電器を貸した。
「ありがとうございます。」
とすぐにスマホを充電しだして、
「帰る時でいいので。」
と、また会話に戻る。
しばらくまた鈴木とぼっちざろっくの話を始める。
「あれの何が良いって、親父が使ってたのがギブソンカスタムのレスポール68年モデル。当然お父さんもギターやったり、バンドマンだった訳で、その叶えられなかった夢を娘が叶えてるってのがたまらんでしょ。」
「アニメでは父への描写は少ないので、バンドマンだったのか、趣味でやってた程度なのかは分かりませんが、漫画では一応売れないバンドマンだったと。であのギターを使ってたと。」
「夢を託された訳ではないと思います。」
思わず口を挟んできたのは彼女だった。充電できるようになり、バッテリーが満たされるように、気持ちも満たされたのか、余裕が出来たのか、会話に飛び込んできた。
「ぼっちちゃんはたまたま家にあったギターで、自発的に練習し出して、ギターヒーローになり、結束バンドを組んでるので、父の夢を託された訳ではないんじゃないですか?」
と、MEGUMI似の彼女が割って入ってきた。
「そうなんだけど、見ている側はそういう捉え方もできるから良いなって話で、行間が膨らんでる話だとは思うけど、それも含めて良いよねって話。」
「確かに、明言していない以上、ぼっちちゃんがどこまで親の影響を受けていたのか、また、父親が影響を与えていたのかは、視聴者の判断によりますからね、その視点は私には無かった解釈です。」
と、彼女の友達も会話にはいる。
「そういう、含みや幅のある作品だからこそ、それぞれのぼっち像があるっていうのが、たまらないですよね。」
「あっ、すいません、つい口を挟んでしまって。」
「いえいえ。楽しく語れて嬉しいです。」
「親子の関係で言えば、ギターヒーローの動画にお父さんが広告付けてて、それで新しいギターを買う資金にするとか、そういう関係がいいですよね。」
「だから、父が娘に夢を託した訳でも、ぼっちちゃんが背負った訳でもなくて、お互いがリスペクトしあってる感じが良いですよね。」
「お父さんはぼっちちゃんが、人見知りで、友達を家に連れてくることもなかったのに、バンドを組んで、そのTシャツのデザインをするために来た時とか、本当はたまらなく嬉しかったと思うし、その友達と仲良くなるなんて最高じゃないですか。」
「挫折しつつも、努力が報われていく過程がいいですよね。」
「本当に。じゃ、けいおん!も観てました?」
「世代じゃないので、リアルタイムじゃないですけど、最近見ましたよ。」
「けいおん!も良かったですよね。」
「あ、充電できました、ありがとうございました。」
「良かったです。こちらこそ、楽しいお話ありがとうございました。」
「せっかくなんで、連絡先教えていただけますか?」
「はい、これ、QRコード。」
この日はそんな話でつい盛り上がり、各々家路についた。
翌朝、恵美ちゃんから、
「昨日はありがとうございました。私だいぶ酔ってて、ウザ絡みしてませんでしたか?話の内容はなんとなく覚えてるんですが。」
と、LINEが来た。
「大丈夫でしたよ。ずっとぼっち・ざ・ろっくの話してました。」
「なら良かったです。また色々聞かせてください。」
と、社交辞令だろうと思いつつも、アニメの話で盛り上がったしと思い、
「下北沢が舞台になってるんで、今度、下北沢で呑みませんか?」
と誘ってみたが、中々お互いのスケジュールが合わず、連日取り止めのないLINEのやり取りが続いていた。
そんなある日、毎日のやり取りでおおよそボクの生活リズムが分かったのか、
「今、阿佐ヶ谷なんだけど、家でしょ?」
とLINEが届く。
「そうだけど、どうした?」
と、半分とぼけて返信すると、
「今から家行くから。」
直後にピンポーンと、チャイルが鳴り、
「もういい加減会いに来たわ。」
と、突然泊まりに来た。
LINEでのもどかしい日々が返って2人を熱くした。
北半球の瞼が開く頃、2人の瞼は閉じられた。

あとがき

Stablediffusionで描き出された画像が、MEGUMIさんに似てるなと思って、名前を恵美(えみ)にしたんだけど、話の内容はほぼ関係なかったね。ただ、出会いのシチュエーションとしてはこういう出会い方あるよなぁという空想ですが、男は虎視眈々とそういうチャンスを伺っている生き物なので、本当に女性の方は気をつけてね。という警告を、毎回込めて書いてるんですが、まぁ理解はされないよね。ってことも理解した上で書いてます。
内容の方は、好きなものってついつい語っちゃうよねって事から、樋口毅宏さんの『さらば雑司ヶ谷』であったように、作中で他の作品語りをするってのが良いなぁと思って、ぼざろの事を語らせていますが、もっと他に語る箇所あるやろと思う反面、そういうあまり重要視されていない事をあえて語る、知ったかぶりな、通ぶってる感じが、恵美さんの反論に繋がったと思ってます。よくいる逆張りの人っているじゃない。そういうかまってちゃん気質な、なんでも否定から入るような人。あれはほっといて良いんですよね、反論したら思う壺なんで。反論したら言いくるめられて、壺買わされちゃいますよ、ほんとに。というご時世も斬りつつ、作家というのはやはり、時代をとらえて込めてるんだと思うんだけど、そこが作家性であって、そういうのがないのは、作家性が薄いと感じてしまうんだよね。どんなエンタメでも作家性がどこかしら出てるから、そういう見方をしてるだけかもしれないけど。

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また、中野ブロードウェイのタコシェでも取り扱っておりますので、ぜひリアルな本を手にして頂ければと思います。
今後執筆予定の彼女らとのさわりも入っておりますのでぜひよろしくお願いします。

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