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空想彼女毒本 #06

#06  万城目鞠

#06 万城目鞠

終電で寝てしまい、乗り過ごした終着駅で、同じく乗り過ごしたことで知り合う。しばらく電車で見かけることはあったが、それ以上の関係にはならなかった。ある日街の小さな画廊の前を通りかかると妙に気になる絵が。導かれるように画廊に入ると彼女がいた。
その気になった絵というのは、抽象画でありながら、明確に描かれているモチーフがボクには解る絵だった。しかしそのモチーフが果たして本当にネコなのかは判断がつかずに、気がつけば画廊の中に、そして彼女もそこに居た。
久しぶりの再会に、何から話し出せば良いのか言葉に詰まる前に、この気になった絵を描いたのが彼女だと直感した。
「この絵、、、、描かれた方ですか?」
「はい、あ!あの時の!」
恥ずかしそうに照れながら返事をして顔を確認した途端、彼女の顔から笑みが溢れた。
「偶然通りかかって、素敵な絵だなぁと思って入ったんですよ」
本当のことなんだが、何だか後をつけてた人が言いそうな言い訳みたいで恥ずかしくなる。
「そうだったんですね、ありがとうございます。そうなんです、私が描いた絵です。」
「ボクもネコ飼ってるから、ネコ好きなんですよ。」
「よくネコって、解りましたね!大体私鞠って名前だから、鞠ですか?って言われるんですけど、丸まってるネコなんですよ!ほら、耳としっぽと、手あるじゃないですか!」
早まった、ネコ飼ってるとか、ネコが好きだとか、そもそも、ボクもってなんだよと思ったが、そこはスルーされて良かった。
「うん、解りましたよ。」
「私美大生なんですけど、ここの絵画教室通ってて、個展開かせてくれたんですよ。」
「そうだっんですね。」
「個展の準備でずっと徹夜続きで、あの日乗り過ごしたんですよ。」
「そうだったんですね。ボクは普通にねすごしたんだけど。
それにしても不思議な絵ですね。ネコらしさを描かずに、それでもネコに見える。」
「ありがとうございます。有るけど無い、無いけど有る。みたいな矛盾とも、表裏一体とも言えない、見える人には見えるみたいなのを表現したくて。」
「何だか解るような気がする。」
ボクは何か運命の赤い糸を見た気がした。彼女も同じように思った事は、顔を見れば明らかだった。お互いなぜか恥ずかしそうに、いつまでもモジモジしたまま、随分と時が流れた。気がついた時には外はもうすっかり暗くなっていた。
「あ、そろそろ閉めなくちゃいけない時間なので、外で少し待ってて頂けますか?」
そう言って奥へ行ってしまった。外へ出て、人通りもまばらな通りで、スマホでネットニュースを見ていると、通り魔事件の続報が出ていた。最近この辺りで無差別に殺傷事件が起きているのだ。被害者は女性とは限らず、大人の男性も被害に遭っている。物取りの犯行ではなく、ただただ斬りつけられるだけなのだが、幸い死者は出ていないが、恐ろしくて暗くなってからは出歩けない。
事件の起きている時間が丁度今ぐらいの時間なので、彼女の事が心配だ。そう思って中の様子を確認してみるが、まだ出てくる様子はない。
いやに長いなと少し不安になった時、裏口のドアが開いた。
「ごめんなさい。待たせちゃいましたね。」
先ほどと何ら変わりのない彼女の態度に安堵しつつ、
「最近の通り魔事件、また起こってるってニュースになってたから、家まで送るよ。」
「ありがとうございます。お言葉に甘えます。」
そう言って、彼女の家の方向へと歩いて行くのだが、だんだんと街灯も少なくなり、暗い道が続く。下心は無いと言えば嘘になるが、こうして送って正解だった。こんな暗い道を彼女だけ歩かせるわけにはいかない。そう思った時、脇腹に熱いものを感じた。
薄れゆく意識の中で、駆けていく足音を最後に、気がついた時には救急車の中だった。
幸い命に別状は無く全治2週間の怪我であったが、救急車で運ばれている時はボク1人だったのだ。彼女の安否が気になっていたが、あの道で、あの時間、ボクを刺すことのできる人は限られている。即座に察したボクは何もいう事はせず、ただ通り魔にやられたとだけ警察に告げ、彼女の存在は言わなかった。
そんな事件後、あの画廊を覗いてみると、テナント募集の張り紙がしてある古い雑居ビルなだけで、画廊の面影も無かった。


あとがき

途中まではスラスラと楽しく書けていたんですが、しばらく放置してしまってる間に、ずいぶん時間が経ってしまい、結果ミステリーになるという、とんでも展開になりましたが、万城目さんというあの画像がそうさせたんでしょう。この頃はまだBRAV4になったばかりのAIなんですが、ちょっと古いCGの感じがいい感じたなぁと。バージョンが上がってどんどんリアルにはなるんだけど、過渡期の中途半端な感じって今しか味わえないし、今後こういうのを作る方が難しくなっちゃったりするから面白いよね。

空想彼女毒本

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