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技術士試験(化学部門‐化学プロセス)⑧_令和2年_必須I-2復元解答例

判定結果は“A”です。つまり60~100点です。
以下、復元解答例を見ていただくにあたっての留意点は、

①正解は一つじゃない、この解答例は、小職の例であって、貴殿の場合は全く別の視点で論じられる可能性が高いです。あくまで参考の位置づけとしてみてください。

②職務上の守秘に係る記載は基本的にありませんが、自分自身でグレーゾーン?と躊躇した部分は、修正させていただいています。

③文字数制限はあまり気にせず復元しています、また実際には下線等使って重要事項をハイライトしたりもしています。実際とは多少異なる可能性がある点は、ご容赦ください。

お題:エコマテリアル

設問の詳細は以下アドレスを参照ください。
https://www.engineer.or.jp/c_topics/007/attached/attach_7387_1.pdf

設問(1):
エコマテリアル推進を多面的な観点から分析し、3つの課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。

復元解答:
(1)エコマテリアルの課題
①材料多様化
例えば有機系プラスチックについて、静脈産業において、その全てを回収、分別し、循環利用することは現状不可能である。その為、その多くは熱エネルギー回収や埋め立てによる処理が行われており、マテリアルリサイクルは限定的である。
②コスト~プラスチックを例として~
プラスチックのマテリアルリサイクルでは、回収、前処理、分解等、多工程となり、その過程で多くのエネルギーやプロセスを重ねる為、必ずしも原料からの製品にと比べて安価にリサイクルできるとは限らない。特に分解プロセスでは設備コストが高額となり、実施のハードルが高くなることが想定される。この為、比較的安価に、かつ効率よくゴミを処理できる、熱エネルギー回収(熱リサイクル)や埋め立てといった処理が優先され、その有効利用率は限定される。
③消費者行動
例えばペットボトルのポイ捨て等により、海洋プラスチック問題の様に社会問題となっている。安価で機能的なプラスチックの利点を享受しながら、使った後の事に関心を持たない消費者行動は改めるべき点である。生分解性プラスチック等も開発されているが、だからと言って、ポイ捨てしてよいとはならない。

設問(2):
抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する3つの解決策を示せ。

復元解答:
(2)最も重要な課題と解決策
例えばペプシコ社CEOの発言であるが、“消費者はマテリアルリサイクルのコストが製品価格にオンされる準備ができていない”、といった様に、そのコストが最も重要な課題と考える。いかにその解決策を3点示す。
A)制度設計による補助金
上述のようにリサイクル設備コストが高額となるが、社会的コンセンサスを得て、製品価格にコストをオンすることはもとより、リサイクル設備の建設において、事業者に補助金を透過することにより、消費者の負担を軽減する対策が考えられる。
B)リサイクル技術の開発
分別された原料を効率よく分解、精製する技術の改良は元より、再モノマー化を選定とした機能材料の開発により、より効率的なマテリアルリサイクルを実現し、コストダウンを達成する。
C)既設プラントの転用
既に例があるが、日本環境設計(株)は、既設プラントを転用して衣類のマテリアルリサイクルの具現化に向け進んでいる。この様に、事業開始時の設備コストを抑えることで、実施のハードルを下げることが有効な手段の一つと考えられ、今後増えていくことが期待される。

設問(3):
すべての解決策を実行したうえで生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。

復元解答:
(3)波及効果、“設備計画”における懸念と対応策
マテリアルセキュリティの向上と国内の産業振興が期待される。設備計画におけるLCA*の観点から、ライフサイクルでのCO2排出の実態がマテリアルリサイクルにおいて懸念される点である。特に小規模の実施においては、その過程で使用される用役に関わる原単位や補機動力の効率が低くなる恐れがあり、原料からの製造に比べて、CO2原単位や資源の有効活用率の改善が限定的、あるいは改悪となる事が想定される。現に、マテリアルリサイクルのO2排出係数を公開している事業者はおらず、改悪のケースも十分想定される所である。この点、対策としては、プロセスの改良や、熱エネルギー回収との組み合わせによる最適化、スケールメリットによる改善は元より、将来的な改善の道筋を示して、社会的コンセンサスを得たうえでその広がりを後押ししていく必要があると考える。
*ライフサイクルアセスメント

設問(4):
前問の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

復元解答:
(4)遂行における要件(倫理、持続可能性の観点で)
まず、プロセスの内容を分かりやすくステークホルダーに説明する責任がある。上述のごとく、将来に向けての道筋を示すことも、技術者倫理における説明責任に該当する。また、産業振興のなかでも被害者を出さない仕組みが、持続可能性の観点で重要である。既存事業者をこの流れに巻き込み、単なる保障や賠償に留まらない、持続可能な社会システムの構築が、エコマテリアルの普及に必要な要件であり、社会受容性を高めるための方策と考える。

以上

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