見出し画像

技術士試験(化学部門‐化学プロセス)⑤_令和3年_選択III-2復元解答例

判定結果は“A”です。つまり60~100点です。
以下、復元解答例を見ていただくにあたっての留意点は、

①正解は一つじゃない、この解答例は、小職の例であって、貴殿の場合は全く別の視点で論じられる可能性が高いです。あくまで参考の位置づけとしてみてください。

②職務上の守秘に係る記載は基本的にありませんが、自分自身でグレーゾーン?と躊躇した部分は、修正させていただいています。

③文字数制限はあまり気にせず復元しています、また実際には下線等使って重要事項をハイライトしたりもしています。実際とは多少異なる可能性がある点は、ご容赦ください。

お題:再生可能エネルギーの普及

設問の詳細は以下アドレスを参照ください。
https://www.engineer.or.jp/c_topics/007/attached/attach_7917_5.pdf

設問(1):
「再生可能エネルギー」を①二酸化炭素の排出が少ない、②エネルギー資源を自給できる、③発電量のコントロールが難しい、の側面から分析し、普及するための課題を抽出せよ。

復元解答:
①二酸化炭素の排出が少ない
IPCCのまとめではそのライフサイクルにおいて、バイオマス>太陽光>風力の順に二酸化炭素が発生するとされている。特に我が国はバイオマス燃料を輸入に頼っており、その輸送課程で使用する燃料消費がCO2発生の主たる原因である。また太陽光発電においても、部材料となるポリシリコンの製造には石炭、電気を多用する為、CO2負荷が発生する。このように、CO2削減効果は電源の性質によるところもあり、その実効性を担保する仕組み作りが再エネを普及させるうえでの課題となる。
②エネルギー資源を自給できる
わが国では、古くは水力発電、現在は太陽光発電が普及しており、今後は洋上風力発電が普及し、エネルギー自給率の向上が期待される。しかし、現在の一次エネルギー消費量を鑑みると、100%の自給率達成は困難であり、海外からの再エネ輸入にも取り組む必要がある。この時、再エネ賦存地域はサンベルト地帯、良好な風況地帯など、従来の化石資源と賦存地域が多少異なってくるため、資源保有国との関係強化はもとより、エネルギーを買い負けない仕組みづくりなど、資源外交を展開する必要がある。また、エネルギーを輸送する方法として、送電網の設置はコスト的にも非現実的であるため、例えば水素をエネルギーキャリアとした再エネ輸入について実証検討が行われている。
③発電量のコントロールが難しい
バイオマス>風力>太陽光の順に安定的に電力が供給される。特に風力や太陽光は日時変動や季節変動を伴うため、系統安定化の為にエネルギーマネジメントシステムが盛んに検討されている。具体的には、二次電池を用いた充放電、水素をキャリアとした、貯蔵・輸送システムの導入検討が進んでいる。
①~③を通じて、ライフサイクルCO2削減を担保できるエネルギーシステムの確立がその普及における課題となる。

設問(2):
抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

復元解答:
CO2削減効果を担保したうえでのエネルギーシステムの構築が最も重要な課題と考える。
以下に2点、その解決策を示す。
①ラベリング手法とインセンティブ策定
各再生エネルギーのLCAを製品個別に評価し、自動車の燃費性能の様に、そのCO2削減効果をラベリングし、効果的なものに対しては税制的なインセンティブを付与する。これにより再エネの普及を促進するとともに、CO2削減効果の実効性を高める。
②水素輸送・貯蔵技術の導入
EMSの一つとして水素技術が期待される。特に海外から大規模に再エネを輸入する技術として、液体水素、有機ケミカルハイドライド(MCH)、アンモニアが主に検討されており、社会実証段階にある。まず現状技術で社会インフラを整備するとともに、将来的な技術改善でCO2削減効果を高めていくことが重要である。具体的には、液体水素について液化効率の改善、MCHについては水とトルエンからのMCH直接電解合成、アンモニアについては低温・低圧合成技術の開発が今後期待される。

設問(3):
解決策を実行した際に新たに生じるリスクを示し、それへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。

復元解答:
①LCA手法の確立
現在水素エネルギーのLCAについて統一された規格が存在せず、各国、各業界が自己主張を繰り広げており、評価手法の合理性、信頼性が疑問視される。この点、水素サプライチェーン技術で世界をリードする我が国は、国際規格化(ISO)をリードし、標準化を通じて評価方法および技術の信頼性を確保すると共に、その過程で我が国の水素技術優位性を確保することが重要である。
②LCAの短期的な改悪
過渡期においてはその実施規模や技術成熟度の問題からライフサイクルでのCO2削減効果が限定的、或いは改悪するリスクが想定される。この点、中長期的な視点で、将来あるべき姿を示し、現状ブリッジテクノロジーの役割を明らかにすることで、新しいインフラ整備に関する社会的コンセンサスを形成する。インフラの導入を止めないことが重要で、継続的な技術改良によってその実効性を担保していく。

以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?