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ワンス・アポン・ア・タイムinダイアリー

 note大賞に小説で挑戦してみようかと思い、SF小説を書いてみたいと思います。
 もっとストーリーをこうした方がいい、とか文書がおかしい、とかあったらアドバイスくださいまし。

1、日記の幽霊

 僕の家には幽霊が住んでいました。
 いや、正確には幽霊は僕の部屋の、僕の机の上の小さな本棚に立てかけてある、僕の日記帳の中に住んでいました。

 僕は毎日、寝る前に必ず日記をつけていて、その日なにがあったとか、先生に叱られたとか、誰それとケンカしたとか、日々のつまらないことを書き綴っていて、その文章の狭間になぜか幽霊が居着いてしまっていました。
 僕が日記にあれやこれやと書いてベッドに入って眠りにつくと、翌朝日記の空白部分に「それはお前が悪いよ。」とか「そんなことすんなアホ!」とか書き込まれていることがあって、最初これはきっと悪戯好きの父親の仕業だろうと思い、人の日記を勝手に読んでイタズラ書きしないでくれと怒ったら、

「俺じゃないよ。ほら、筆跡も全然違うだろうが。」

と日記に書き込まれた文字を指して否定されたのでした。
 たしかに父親の字はミミズがのたくったようなグニャグニャの悪筆で、たいして日記に書き込まれている字はどちらかというとカシっとして丁寧な文字でした。

「これはお前、幽霊だよ。日記の幽霊。言う通りにしとかないと恐いから大事にしろよ。」

 父親はそう言ってウラメシヤーと手を前にお化けのポーズをとって変な顔をしてきたので、僕は小学生ながらアホらしっと思ってそっぽをむいてしまったのでした。

 しかし幽霊の正体は不明のままで、基本的に日記の内容に「イイね!」することはなくて、「アホ」とか「バカ」とか腐してくるようなアンチコメントばかりしてくる奴なのでした。
 一度、腹が立って「アホって言うやつがアホなんだ。」とか「お前誰だよ。」と返答してみたこともあったのですが、それには全く反応がありませんでした。

 姿を現すことなくネチネチと陰湿な嫌がらせコメントばかりしてくる迷惑な日記の幽霊でしたが、そう頻度が高いわけでなく、半年とか1年ぶりに現れることもあれば、 2、3日連続投稿していくこともあるような気まぐれな奴なのでした。
 そんな風に僕の日記にケチをつけてくる幽霊でしたが、時々やけに具体的にあれをしろこれをしろと指示してくる時がありました。

 ある時、近所に住んでいる幼馴染の直樹と大喧嘩してしまった時があって、それまでは毎日のように一緒に遊んでいたのですが、一週間くらい学校で会っても口もきかなくなってしまっていました。
 サッカーをしていた時に僕が至近距離で放った弾丸シュートが直樹の顔面に当たってしまって鼻血がダーとでてしまったのが原因で、完全に僕が悪かったのですが、怒った直樹が殴りかかってきたので僕も逆上して殴り返し、それで喧嘩になってしまったのでした。
 そんな事をむしゃくしゃした気持ちで日記に書き込んでいると、翌朝幽霊から書き込みがあって「お前が悪いよバカ、はよ謝れ。」と書かれていました。
 口の悪い幽霊にはイラッとしましたが、冷静に考えると100%僕が悪く、その日の朝さっそく直樹に「こないだはめんご。」と謝りに行くと、「俺もめんご。」と言ってくれて僕たちは無事に仲直りすることができたのでした。

 毎日のように一緒にいた遊び相手がいないのはやっぱり退屈だったので、仲直りできてよかったと胸をなで、たまには幽霊も役に立つことを言うじゃないかと感心したりしていました。

 それ以降も日記の幽霊はちょこちょこと現れては友達に長らく借りたままの漫画やゲームソフトを返せとか、近所に住む爺ちゃんの家に行って家事を手伝ってこいとかこまごまと指示を出してきたりしました。
 幽霊からの指令をこなしても特に良いことも起こらず、たまにちょっとしたご褒美的な、爺ちゃんにお小遣いもらったり、ジュースやお菓子をもらえたりするくらいでしたが、僕らは面白がってたまにやってくる指令をこなしていたのでした。

 日記の幽霊のことは直樹にも話していて、直樹は幽霊の正体はもしかしたら宇宙人で、地球を侵略する手伝いを僕たちにさせているのかもしれないと突拍子もないことを言っていましたが、それにしては内容はショボいものばかりで、どこをどう結びついて地球侵略につながっていくのかは皆目見当がつきませんでした。

 僕と直樹の家は2、3軒離れただけの超ご近所で、二人の父親も幼馴染で同じく警察官をしていたのもあって家族ぐるみの付き合いだったため、ほんとに学校から何から四六時中一緒にいるような感じでした。
 僕は一人っ子でしたが、直樹には一つ下の妹がいて名前を由紀ちゃんといいました。目がくりくりしたちょっと赤みがかった髪をしていて、僕のことも隆兄ちゃんと呼んで懐いてくれていて、一人っ子の僕からすると妹ができたような感じでなのでした。
 僕と直樹が町中をあちこち飛びまわって遊んでいるのにいつも由紀ちゃんも着いてきていて、直樹は「ついてくんなよ。」と邪険に振り払おうとしている風でしたが、その実とても妹想いなのがバレバレで、なんかあって由紀ちゃんが泣き出してしまった時なんかにはすぐに隣にいって慰めているようなナイス兄貴なのでした。
 なので日記の幽霊からの指令も3人でこなしていました。


 ある時、日記の幽霊からの指令で当時はやっていたポケモンカードや遊戯王カードのキラキラしたレアカードを厳重に梱包して缶の箱に入れて庭に埋めるようにというのがきました。
 僕も直樹もお小遣いのほとんどをそれらのカードかミニ四駆に注いでいたくらいだったので、僕らはけっこうな量のレアカードを持っていました。しかし、それらは僕らの宝物でもあり、日記の幽霊に従って埋めてしまうのはどうにも惜しくて、僕らはウンウン言って悩みましたが、誰かにあげて無くなってしまうわけじゃないからと、大事に包んで庭の隅に埋めて、どこか場所が分かるように看板を建てました。
 考えてみると宇宙人がこんなポケモンカードなんて欲しがるわけはないから、これは日記の幽霊の正体は未来人かもしれないな、と宝物と引き換えに僕らは真相に少し近ずいた気分だったのでした。
(レアカードが一斉に抜けてしまって大幅な戦力ダウンとなった僕たちのデッキは学校内での戦績をガクンと下げることになりましたが。)


つづく

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