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第20回坊ちゃん文学賞に落選した作品

夜の目  真っ暗な森をとんでいった私は、今しがた、狼に片腕をくれてやったのだった。感覚のない腕でドアノブを回し、ヨタヨタと歩きながら、暗い世界に光る、ヤツの二つの目のことを思い、冷静になれば、時間を巻き戻し、叩きのめしてやれるのだ。などと考えていた。あの世界は、私によって造られている。そう思うと、勇気が湧いてきた。  全ては暗闇の中で行われる。コップを取ると、蛇口に触れ、水を注ぐ。ゴクゴクと音を立てて飲み込むと、右腕に血が通ってゆくのを感じた。早くしなければ、朝が来る。今夜

    第20回坊ちゃん文学賞に落選した作品